その男、激情!3

「…ぁあ、こんなイヤらしい秘書を持って、私は幸せだよ」

当の秘書は、既に返事が出来る状態ではなかった。 
口いっぱいに社長の一部を頬張り、出来る限りの仕事をしていた。

「…あ、いいよ、…有能な秘書に育って…、社長冥利に尽きるね…ふぅ、前任者以上に、有能だよ」

そんなことはない。
前任者が恐ろしく切れる男で、副社長以上の力を持ち、この淫らな行為に耽(ふけ)る男の片腕だったことは、誰もが知っている。
だが、この淫らな行為をしてやれるのは自分だけだと、この秘書は誇らしげに思っていることも事実。
前任者と並びたい、前任者を抜きたい、と常々思っているこの秘書は、この行為限定でも社長から『前任者以上』と褒められると嬉しかった。

「…あぁ、気持ち良いよ。ふふ、この秘書は、私を早漏にしたいのかな…、」
「早漏でも遅漏でもいいから、とにかくサッさと終わらせてくれない?」

社長と秘書の耽美な時間を遮る第三者の声。
一人の青年が、呆れ顔で、秘書課からの入口になっているドアの前に立っていた。

「勝手に入ってきて、邪魔するとは…殺すよ?」

ギッと社長が睨み付けたが、青年は怯むことがなかった。

「俺を殺す前に、時間厳守で頼むよ。駐車スペースなくて、駐禁の道路に車止めて来たんだから」
「しょうがない猿だ。…秘書さん、イかせておくれ」

了解とばかりに、秘書の動きが速くなる。
普通なら嘔吐く(えずく)であろう、喉の奥まで使ってピストン運動を施し、性器のような口内を作り上げる。
舌がある分、性器以上の快感を与えるその技巧は、その辺の風俗嬢を越えていた。
横に広がった外国人張りの社長のソレを、咳き込まず口淫出来るのは、この秘書の努力の賜物なのだ。

「場所も考えず、年中盛っているあんた達の方が、よっぽどサルじゃん。終わったのか?」

フィニッシュを迎えたと思われる社長室の主とその秘書に、青年が腕時計を見ながら確認をする。

「ダイダイ、口を慎め。社長に失礼だ」

机の下に隠れていた、秘書が姿を見せる。
ダイダイとは、青年の事だ。
本名大森(おおもり)大喜(だいき)。
姓と名に「大」が付くので、親しい間柄ではダイダイと呼ばれている。
この二人、プライベートでは親しい仲だ。

「失礼って、失礼な事しているの潤さん達じゃん。口のまわりテカテカしているから、拭いた方がいい。用意はできているのか? 数珠(じゆず)は?」

潤というのは秘書の事だ。
本名、黒瀬(くろせ)潤(じゅん)。
だが、訳あって仕事上は、市ノ瀬潤を名乗っている。

「全て万端だ。あとはここの戸締まりをして、出るだけだ。社長、行きましょうか?」
「ああ。全く法事を平日に執り行う方が、どうかしている。優秀な秘書が優秀な組長になるとは、限らないってことだね」

コートを羽織りながら社長が嫌味を飛ばす。
組長、というのは、隣組の組長でもなければ、幼稚園の組長でもない。
指定暴力団関東清流会傘下の桐生組トップのことだ。

「時枝のオヤジ、立派な組長だと思うぞ? なんか、前の組長より怖いし。組の中、ピンと張り詰めた空気が漂ってる」

時枝のオヤジとは、潤の前任者で、今は桐生組組長をしている時枝勝貴(ときえだかつき)を指す。
クロセを辞めた後、ヤクザの組長に就任していることは、社内では知られていない。
三人は社長室を出ると、人目に付かぬよう運搬用のエレベーターに乗り込んだ。

その男、激情!2

橋爪(はしづめ) 飛翔(ひしよう)。
自分の顔が刷り込まれた他人名義のパスポート。
本籍は大阪になっている。
実在していた人物で、多分戸籍もあるのだろう。
今日からこれが自分の名前だと東京行きの飛行機の中で 劉(りゅう)は頭に刻み込む。

「日本か…」

そこで、俺は自分の過去と対面するのだろうか?
過去を覚えていないのは、きっとろくでもない生活を送っていたからに違いないと劉(りゅう)、いや、橋爪は思っている。
身体に残る銃創(じゅうそう)、人を殺める事が容易な腕。
そして、いつも橋爪を覆う深く暗い喪失感。
とても大事な何かを、絶対に忘れてはならない何かを、忘れてしまった気がする。

「仕事をするだけさ」

自分探しの旅に出向いているわけじゃない、と自嘲気味に橋爪が笑う。
胸から写真を取り出し、ターゲットの顔と名前を確認する。

『桐生組 組長 時枝勝貴』

「この顔で、組長とはね。神経質そうなジャパニーズビジネスマンにしか見えないが」

こいつの命もあと数日か。
こいつだって、組を張るぐらいだから、俺同様、人を殺めてきてるだろうよ。
同情は無用だな。
同じ穴のムジナって所か。
胸に写真をしまう。
飛行機の高度が下がり始め、眼下に街が見えてきた。
そろそろか。
静かに目を閉じ、着陸を待った。

 

***

 

「社長、そろそろお時間です」

株式会社クロセ、社長室。
秘書が仕事終わりを告げに来た。
今日はこの後、社長と秘書二人揃って、とある場所へ招かれている。

「もう、そんな時間か。では、仕事区切りのいつものアレを頼む」

マフォガニーのデスクで、英字新聞を広げていたこの部屋の主が、新聞を畳み、入って来た秘書へ視線を移す。

「アレですね。畏(かしこ)まりました」

ツカツカツカと、秘書が社長の側に寄る。

「今日は、どちらにいたしましょう? 上ですか、下ですか? どちらでもお好きな方をどうぞ」
「そうだね、下がいいかな? この後直ぐにできないから、溜まったモノを片付けたい」
「お任せを。では、失礼します」

社長が椅子を少し回転させると、秘書が跪き、社長の太腿に両手を置き社長を見上げた。

「苦しそうですね」
「しょうがないだろ。私の秘書はセクシーだからね。一緒に仕事をしていると、この時間には押し倒したくなるほど溜まる。責任を取ってもらわないとね」
「セクシーかどうかは分りませんが、それが私のことなら、光栄です…社長」

秘書の手が、座っている社長のファスナーに掛かる。 
少し降ろした所で、社長の手が秘書の手を止めた。

「手じゃなくて、歯で噛んで降ろして欲しいな」
「はい、社長」

秘書が器用に口でファスナーを降ろす。
その際、上目使いで社長の顔を見上げることを忘れなかった。
その顔が社長を煽ることを、この秘書は心得ていた。

その男、激情!1

「――こ、殺さないでくれ…」

薄汚い倉庫。
薬莢(やっきょう)の匂いと、血の匂いが鼻を付く。

「命乞いとは、情けない。それでもファイアーのナンバ―ツーか?」

崩れた段ボール箱の下敷きになった男の額に、黒いサングラスの男が拳銃を突き付けた。

「金なら幾らでも出す。ドル建でもユーロでも円でも、何でも言ってくれ」
「それは、俺じゃなくボスに言ってくれ。俺はただ、たのまれ仕事をしているだけだ」
「ボスが…俺を? ――俺は嵌められたのか…」
「さあな。俺は倉庫にいる人間全員殺(や)れと、命じられただけだ」
「この犬ヤロウッ! ボスに尻尾振っても、結局、俺みたいに使い捨てだぞっ! なあ、逃がしてくれよ」
「で、ボスを裏切らせて、俺まであの世送りにするつもりか? は? 台湾マフィアは、根性がねえヤツばかりだ。心配するな、一発であの世に送ってやる」
「女はどうだ? 男でもいいぞ? お前は男が好きなんだろ?」
「人をホモみたいに言うな。男が好きなのはお前だろ。地獄で、男のケツでも追っかけまわしな」

パンと音がし、サングラスの男は立ち上がった。
目の前で、目を剥き口を開けたまま死んだ男の胸ポケットを漁る。

「やっぱり、お前だったのか。これは俺が預かっておく」

男は手にした物を自分のポケットに忍ばせると、その場を立ち去った。

「ボス、全て片付けました」
「梁(りやん)も逝ったか」
「はい」
「力を持ちすぎたのが、ヤツの命取りだ。お前は気を付けろよ。劉(りゅう)」

眼光鋭い初老の男。
台湾マフィア、ファイアーのトップ李強だ。

「俺は一匹狼ですから。力の持ちようがありません。あるのはこの腕だけですよ」

劉(りゅう)と呼ばれたサングラスの男が、右腕を叩いてみせた。
この劉(りゅう)、李をボスとは呼んでいるが、ファイアーの一員ではない。
依頼主と殺し屋の関係だ。

「そうだったな。入金は既に済ませている。次の仕事頼めるか」
「はい」
「日本に行ってくれ」
「日本?」
「消したい男が一人。本当は二人だが、まずは一人」

李が劉(りゅう)にターゲットの写真を渡す。

「普通のビジネスマンに見えますが?」
「だが、違う。詳しく知らない方がやりやすいだろう。名前と住所は、写真の裏に書いてある。他に何か必要か?」
「いえ、十分です」

李が用意した日本国籍の偽造パスポートと航空券を受けとると、劉(りゅう)は消えた。

 

 

「劉(りゅう)、戻って来るよね」

日本への出発の日。
仕事の依頼で数日間アパートを留守にするのは、決して珍しいことではない。
その日に限り、李強の息子が劉(りゅう)の部屋の前で待ち伏せをしていた。
仕事の依頼が入ってない時、暇潰しに日本語を教えたり、キャッチボールをして遊んでやっている。

「戻って来なかったこと、今までにあったか?」
「…ないけど。今度は戻ってこない気がする」
「どうして?」
「梁(りやん)、戻って来なかった。戻って来るって言ったのに。パパに訊いたら、もう戻って来ないって言った」
突然いなくなった、自分を相手にしてくれていた大人。

その始末を命じたのが自分の父親で、手を下したのが目の前の劉(りゅう)であることを、まだこの少年は知らない。

「日本に行くんだよね? パパが言ってた。劉(りゅう)、本当は、日本人なんだろ?」
「さあな。日本語が流暢だから、そうかもしれないな。自分が本当に日本人かどうかは分らない」
「ごめんなさい。昔の事、何も覚えてないんだよね…」
「ああ。心配するな。仕事が終われば戻ってくる」
「必ず?」
「ああ。小指立ててみろ。教えただろ、日本式の約束」

少年の指に自分の小指を絡め、指切りをした。

「帰ってこなかったら、僕、日本に行って、劉(りゅう)に針じゃなくて、釘を千本飲ませるから」
「それは怖いな。ちゃんと、日本の土産買って来てやるから、良い子にしていろ。じゃあな」

さよならの代わりに、頭をグシャグシャと掻き回すように撫でてやる。
そして、大きなスーツケースと共に、少年の前から劉(りゅう)は遠ざかって行った。

「…嘘付きっ…。劉(りゅう)戻って来ないくせに…。パパの仕事で日本に行って、戻って来た人…いない…わあぁああっ、」

少年は、自分から離れていく劉(りゅう)の後ろ姿を見ながら、大粒の涙を溢れさせていた。

「その男、激情!」について。by時枝

皆さま、「秘書の嫁入り」をお楽しみ頂けましたでしょうか?
ゴホン、ご挨拶が遅れましたが、時枝勝貴です。

秘書の嫁入り~夢~のラストがあんな感じで、モヤッとしたものがきっと心の中に残っていると思います。
特に今回初めて読まれた皆さまは、バッドエンドに胸を痛めているのはないかと。

この後、私は勇一のいない桐生の組長に就任することになります。
そこまでの話が同人誌「秘書の転職」です。
こちらは、以前の会員ページでの更新だったため、その当時の会員さまがパスをゲットするまでの試練(?)を思いますと見本公開はすべきではないと判断させて頂きました。この話は同人誌のみ(完売後は現会員ページ内での掲載)とさせて頂きます。

そして、三年後、私が桐生の組長としての日常に、大きな変化が。
それが「その男、激情!」です。
こちらも同人誌を既にお持ちの方いらっしゃると思いますが、同人誌版をお持ちの方は全巻大切に保管されて下さい。奥付に黒桐Co.と発行日が入った四角があると思います。それが後々サークル企画で使えるようになるとのことです。(全ての同人誌に四角あります。あとあと応募や企画参加に切って使えるように入れてあるそうです)

激情では、佐々木さんやダイダイの活躍(?)部分が多いです。
ヤクザ者Sシリーズのファンの方には秘書嫁以上に二人に関するシーンが多いので、楽しんで頂けるのではと思います。

そして、私の組長っぷりも。

社長や潤さまは、相変わらずですが。

と私サイドの流れで話は進みますが、別サイドの秘書嫁の続きを文庫の帯企画の第二弾として予定しているようです。
別サイドの意味するところを既に同人誌版をお持ちの方はわかると思います。

では、よろしくお願い致します。何を、て、色々です。
最近色々ありすぎて、私も息つく暇がありません。中の人も落ち込んでいるようですが、皆さまの応援だけが支えのようです。
この一連のシリーズ、関係している大人の数も増えてきましたが、その分色々とあるようでして、純粋に好きだと思って下さるファンの方が多いことが本当に嬉しいようです。
個人としては、私、時枝(トッキーと呼んで下さい)のファンが勇一より多いと嬉しく思います。

秘書の嫁入り 夢(33)/終

「お前が俺を愛しているその百倍だ」
「だったら、俺はその一万倍」
「ふん、俺は更にその一億倍だ」

漏れ聞こえる会話に、黒瀬も苦笑を隠せない。

「オッサン、寒いよ~。木村さん、遅い!」
「そのうち来るだろ。良いじゃないか、お二人が寒さも感じないぐらい、幸せなら」
「ハ~クション、でも、俺は寒い!」
「帰ったら、温めてやるから、我慢しろ」
「…分った…アレ、何だ?」

大喜が指をさした先に、黒い塊が見えた。

「木村か? 違う、バイクだ」
「こんな場所走って何が面白いんだ?」

黒い塊に見えた物は、黒の大型バイクだった。
段々佐々木達に近づいて来る。

「オッサン、アレ、変じゃないか?」

スピードを落とさず、こっちに向ってやってくる。
よく見ると二人組だ。
黒いライダースーツに黒のヘルメット。
後ろのシートに乗っている男が手にしていた物は…

「ライフルを持ってる! オッサン、奴ら、ヤバイぞっ!」

猛スピードでバイクが佐々木と大喜の方へ向ってくる。
後部シートの男がライフルを構える。
海鳥を狙っているのではないことは、大喜にも分った。
自分達にその銃口は向けられいた。
パンと、渇いた音が響く。

「大喜っ!」

佐々木が大喜を突き飛ばした。
地面に顔からたたきつけられた大喜の上に、佐々木が倒れ込んできた。

「…オッサン?」

自分の上の佐々木を大喜が振り返る。
眉間にギュッと深い皺を刻んだ佐々木の顔が見えた。
それと…

「…ソレ、まさかっ、」

佐々木の黒いスーツの袖から、何かが染み出ていた。
大喜は慌てて、佐々木の下から出ようとした。

「…駄目だっ! 俺の下から出るなっ。俺は大丈夫だ。上腕に玉が掠っただけだ…」

また、パンと音がした。

「ぐふっ」
「オッサンッ!」
「――足、やられた…」

大喜の上に覆い被さる佐々木の脚を狙ったのだ。
留めを刺されるかと思えば、バイクは佐々木達の横を素通りして行った。
向った方向は、時枝達がいる崖だ。

「くそっ、狙いは…組長達だっ!」

佐々木が立ち上がろうとして、大喜の上に崩れた。

「オッサンッ、無理だっ!」

それでも立ち上がろうとした佐々木の耳に、パンパンと二発の銃声が届いた。

「兄さん、今の音…」
「ああ、」

佐々木が銃撃された音を黒瀬も勇一も捉えていた。
四人に緊張が走る。

「黒瀬っ、バイクがっ!」

音が聞こえ数秒も経たないうちに、バイクの爆音が近づいてきた。
黒瀬が咄嗟に石を数個拾う。
黒尽くめの二人組が、バイクで近づいてくる。

「勝貴っ!」

狙われたのは時枝だった。
黒瀬が走るバイクのタイヤを狙い投石したのと、後部シートの男が時枝の心臓に向けライフルを二発、発射したのが同時だった。
勇一が時枝の前に飛び出る。
バイクが転倒し、横滑りで崖下に落下した。
投げ出された二人も、見事に崖の下。

―――そして、

「うぐっ、…勝貴」

胸を押さえ、後ろへよろけた勇一が…

「…スマン…今夜の約束は……アッ」

切れ切れの声を残し、背中から数十メートル下の荒れる海の中へと消えていった。

「…そ、んな…、これは夢か……、はは…」

時枝から渇いた笑いが漏れる。
潤は今目で起ったことが呑込めず、唖然としていた。

「…夢じゃない…時枝。これは現実だ」

感情のない声で黒瀬が呟く。

「嘘だっ、そんなわけないっ、勇一ィイイイ―――――ッ!」

荒れる海に、時枝の悲痛な叫び声が轟き渡った。

 

秘書の嫁入り 了

 

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秘書の嫁入り 夢(32)

「…オッサン、今、インポって…俺の耳は聞こえたんだけど……」
「…ああ…、俺にもそう聞こえた……」

大喜と佐々木が黒瀬の発した言葉を確認しあう。
静寂を破ったのは、潤の拍手だった。

「黒瀬っ、さすがだっ! 俺の旦那様は凄い!」

パチパチパチと、拍手を響かせ絶賛する。

「組長さん、誓えないの? 誓うよね?」

潤が勇一を急かす。
時枝は、抗議の声を上げる訳でもなく、どうなんだ?
誓えるのか、と勇一に鋭い視線を向けた。
時枝が黒瀬に抗議をしなかったのは、黒瀬の「インポテンツ」がふざけて出た言葉ではないと理解したからだ。
勇一の精神的弱さを指摘しつつ、自分に何があっても逃げるなと言ってくれているのだと、黒瀬の真意が伝わっていた。
だから、潤も感動し、拍手を響かせたのだ。

「ったく…この神父さんは。誓う。誓いますっ! ああ、何があろうとココだけは、鍛えに鍛え、毎晩でも突っ込んでやるから、安心しろ」

勇一が袴の上から、自分の中心に手を置く。
その手を時枝が払い、勇一の中心を袴の上から握った。

「ふん、毎晩、出来るのか? その根性がお前にもココにもあるのか? ユウイチに負けるようじゃ、お払い箱だからな。早速今夜から励めよ」
「出来るに決ってるだろ。俺様の愛情は、肉体疲労なんかに負けやしないんだよ。一生、お前の上で腰を振ってやる」
「そうか、楽しみにしてるぞ。一生だからな。せいぜい鍛えてくれ」

時枝の手にギュッと力が入る。

「ん、ッタァアアーッ、握り潰す気かっ!」
「ハイハイ、二人とも、まだ式の途中ですよ。では、お互いの愛情を確認し合ったところで、誓いのキスをお願いします」

式の段取りはメチャクチャだが、この二人には関係なかった。
セットのチャペルに、偽物の神父。
だが、誓い合ったのは一生の絆。
羽織袴の勇一が、白いスーツの時枝を見つめる。
合図も無しに二人の腕が同時に互いの腕に掛かる。
そして、近づく顔と顔。
触れ合う唇。
短いキスではなかった。
ディープキスでもないのに、触れ合った唇は離れなかった。
二人の間で、中学の頃から今までの歴史が走馬燈となって巡っていた。
両親の死を乗り越えられたのも、勇一がいたからだと時枝は知っている。(同人誌:「秘書、その名は時枝&Chapter0」参照)

―――あの時から既に自分は捕まっていたのだろう、この男に。

終わりではなく、始まりのキス。
ツーッと時枝の目から一筋の涙が流れた。

 

 

「良い式だったね、黒瀬」
「ふふ、そうだね。キスのあとの兄さんのだらしない顔っていったら…うふふ」
「もう、ぼ~くのモノだ、って声が聞こえてきそうだった。写メも撮ったし、あとで福岡の尾川のお父さんにも送ってあげるんだ」
「気が利くね。さすが潤」

セットのチャペルを出た一向は、崖の上を散策していた。
黒瀬は神父服を脱ぎ、薄いグレーのスーツにコートを羽織っている。
潤はダウンジャケットをスーツの上から着込み、主役の二人はデレデレと腕を組んだまま上着も着ずに潤と黒瀬の前を歩いていた。
一方、佐々木と大喜は、木村がマイクロバスで迎えにくるはずだと、崖から少し離れた空き地にいた。
ここに来るときは駅からタクシーだったが、帰りは主役の二人が興奮を抑えきれないかもしれないと、組の迎えを頼んであった。
人気がないこの岸壁、実はここ、自殺の裏名所として地元では知られており、滅多に人が寄りつかない。
セットを組で撮影したりするのにはもってこいの場所で、映画だけではなくドラマの撮影にも度々使われる場所だ。
よって、勇一と時枝が、緩みっぱなしの顔で腕を組み、散策しようと誰の目も気にする必要はなかった。
荒涼とした景色が広がっているだけの場所での三十を過ぎた男二人のイチャツキぶりに、正直潤も目のやり場に困っていた。
上司として自分を叱る時の凛々しい時枝の面影はなく、頬を染めて勇一と馬鹿を言い合ったり、頬を抓ったり、抱きついたり……

「…黒瀬…、時枝さんって、組長さんより男らしいって思ってたけど…根っこの深い部分は実は乙女?」
「色々あったから、今日ぐらいは目を瞑ってやろうね、潤」
「そりゃ、もちろんだけど…」

家族を失って以来、家族代りの存在だった男が、本当の身内になるのだ。
自ら身を引こうとしたこともあったが、出来なかった。
時枝の箍が外れても、今日ぐらいは良いだろう。
時枝よりも更に外れてしまった男がその隣にいるのだから。

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秘書の嫁入り 夢(31)

「ヤクザが祝言をチャペルって、変だ。な、オッサン」
「こらっ、ダイダイ、口を噤め。ロマンティックで良いじゃないか」
「だってさぁ、時枝のオヤジはいいとして、組長って、ザ・日本っていう顔立ちじゃん。それにあのセンス」

光る素材のグレーのスーツの大森大喜が、いつもの黒のスーツの佐々木に囁きながら、前方を指さした。
今二人は、荒れ狂う冬の日本海に面した岸壁に建つ、小さなチャペルの中にいた。
大喜の指の先には、白いスーツの時枝に、羽織袴の勇一が並んでいた。
時枝の横には、介添え役の潤がいる。

「しかも、これ、なんちゃってチャペルだろ。よくまあ、映画のセットなんて借りられたよな~。やっぱり、芸能界とヤクザって繋がってるんだ」

そう、このチャペルはセットなのだ。
ヤクザのコネではなく、株式会社クロセの繋がりで、撮影を終了し壊す前のセットを借りたのだ。
あの快楽の宴から、実はまだ三日しか経っていない。
同じ週の週末なのだ。
そんな急にチャペルなど借りられるわけがない。
もちろん、神社も無理だ。
所謂、結婚式場も無理だった。
急じゃなくても、勇一の職業柄、断られるのは目に見えているし、なんといっても、男同士の結婚式をすんなりOKしてくれる所など、三日で探せるわけがない。
時枝は籍だけで、式などなくていいと言ったのだが、勇一と佐々木が、これを許さなかった。
記念にもなるし、生涯の愛の契約をきちんとした形でした方がいいと、勇一と佐々木に迫られた。
佐々木に至っては、涙ながらに、時枝の桐生への嫁入り姿を見たいと言いだした。
花嫁ドレスまで用意すると言い出したので、それだけはのめないと断ったのだ。
組への披露は後日することにして、式だけを急いだのは、勇一がもうこれ以上待てないと言いだしたからだ。
また、何かあるかも知れない。
時枝を拉致した奴らを捕えたわけでもない。
潤と黒瀬じゃないが、いつ何があってもおかしくない世界に二人ともいる。
だったら、一秒でも長く一緒にいたいという勇一の想いに、時枝も賛同した。
そこで、黒瀬がクロセが出資している映画会社のセットを利用することを提案し、今日の運びとなったのだ。

「建物なんか、関係ないだろ。大切なのは、あの二人の気持ちと祝福する俺達の気持ちだ。ダイダイは、あの二人を祝う気はないのか?」
「あるに決ってるだろ。じゃなかったら、こんな所まで来るかよ… さすが、セットだけあって、寒いな…クッ、ション」

セット内、暖房器具がなかった。

「シッ、!」

後ろを振り向いた潤に、そこの二人、静かにしろと口元で指を立てられた。

「静粛に~、ふふ、今から桐生組、組長桐生勇一と、株式会社クロセの口うるさい名物秘書で、可愛い私の妻の上司でもある、時枝勝貴の結婚式を執り行います」
「真面目にやれ、真面目に」
「やだな、兄さん、いたって真面目ですよ。ね、潤」
「黒瀬…凄くカッコイイ」

神妙な顔付き、イヤ、緊張のためか、眼鏡の奥でいつもより鋭い眼光を光らせる時枝と、時枝とは対照的に、嬉しくて溜まらないとにやけた勇一の前に、黒い神父服にロザリオを掛けた黒瀬が立っていた。
手には、聖書らしき物も持っている。
大喜が「アレ、どうみてもコスプレだろ、」と今度は注意されないよう、佐々木に耳打ちをした。

「あんなフワフワウェーブのロン毛神父なんて、見たことないぞ…いいのか? 式なんだろ? ちゃんとしたの、呼んで来た方がいいと俺は思うけど…」

囁いたつもりだったが、潤が振り返り、大喜を睨んだ。

「ダイダイ、言いたいことは分るが……大人しくしてろ」
「…わかった…」

それこそ、俳優の一人でも借りてくれば良かったのに、と大喜は思ったが、それ以上何も言わなかった。

「病めるときも、健やかなときも、なんてことは今更なので、省略します。大事な確認だけ、しときますよ。兄さん、ちょっとしたことで、インポテンツにならないと、誓って下さい」
「・・・」

一瞬、そこにいた全員が固まった。

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秘書の嫁入り 夢(30)

「…凄い…、ユウイチ、ぁあっ、あ、イイッ、」
「ジェラシーを感じてしまいそうだよ。そんなにイイの?」
「…うん、時枝さん…、こんなこと、毎晩してたんだ…あ、ザラザラした舌が…」

動物なだけに、次の行動が予測が付かない。
出ないミルクを吸い出そうと、強く吸引したり舌でピアスを揺らしたり、かと思えば乳首を甘噛みしたり。

「ユウイチ、こっちは、ミルク出てるよ。少し苦いかもしれないけど」

潤の乳首を貪っていたユウイチを黒瀬が引き剥がし、自分の爪で弄っていた潤の先端へ連れて行く。
黒瀬が蜜口が開くように割ってやると、そこから滲み出る蜜を興味深そうにユウイチが見つめた。

「時枝とは匂いも味も違うから、舐めてごらん」

ユウイチが舌を出し、チョロッと舐めた。

「ぁああっ、」

ブルッと潤の身体が震え、後ろから伸びている黒瀬の腕に潤が捕まる。
味も匂いもミルクとはほど遠いが、舐めればピクッと反応を示す潤の陰茎と、舐める度に湧き上がる泉のような潤の蜜に、子犬のユウイチは時枝のモノと同様、興味津々といった感じで舌を小さな孔に這わせた。

「…く、ろせっ…、ヤバイって…、良いけど、ヤダッ!」
「何が、イヤなの、潤?」
「…ユウイチで、イきたくない、よぅ…、後ろっ、…早くっ、…」
「後ろって、背中? 痒いの?」

黒瀬が意地悪して、潤の背中を掻くフリをする。

「…わかってる、だろっ! …欲しい…、頂戴っ!」
「ちゃんと、言葉にして。出し惜しみは良くないよ、潤」
「ぁあっ、もう、間に合わないっ、――ひぃ、」

爆発寸前の潤の根元を黒瀬の指が握りしめた。

「これで、大丈夫。さあ、して欲しいことをハッキリ言ってごらん」
「俺の…アナルに…、黒瀬の太いの…挿入して…」

潤が自らの手を後ろの孔に持って行く。

「挿れるだけでいいの?」
「…奥までがいい…アレ、してっ…落とすヤツ…」

待てない、と潤は自ら指で解し始めていた。

「ユウイチは、どうする? もう、いいの?」
「…ユウイチも欲しい…」
「一緒は無理だよ。潤。潤の好きなヤツすると、ユウイチは潤を舐められないから。時枝に返してあげよう」

半分白目を剥いて、嬌声をあげている時枝。
その上には勇一が被さっているので、返そうにもユウイチを置く場所がなかった。
それならば、と黒瀬が含みのある笑みを浮かべ、ユウイチを一旦、繋がっている二人の横に置き、勇一の尻の後ろに行くように命じた。

「あふっ、何するんだっ! クソ犬ッ」

上下に動く勇一の窄みをユウイチの舌が捉えた。
時枝に掘られた勇一の孔は、まだ赤く腫れていて、時枝の放出したモノの匂いが残っていた。
時枝の香に誘われるように、ユウイチが勇一の入口を執拗に舐め始めた。

「―勇一ッ、…休むなっ!」
「そんなこと、言ってもよぅ…あっ、てめぇ、人のケツ舐めるなっ!」
「勇一ッ、ユウイチと遊んでないで、仕事しろッ…もっと奥まで…来い…」
「ンなこと言ってもよ、…あぁ、もう、このクソ犬っ、舐めるなら、勝手に舐めてろ…後で覚えてろ…ヤべぇ…コイツ」

尻にユウイチの舌を感じながら、勇一が時枝を悦ばせようと腰を振る。
ぶらぶら揺れる珠が面白いのか、ユウイチは孔だけでなく双珠までも舌で突いたり、前足を伸ばし触ったりと遊ぶ範囲を広げた。
時枝に突っ込む勇一。
その勇一の尻を弄ぶユウイチ。
二人と一匹の営みが、そう仕向けた黒瀬と潤を更に興奮させた。
黒瀬は自分の猛った雄に潤を座ったまま突き刺すと、潤を持ち上げギリギリまで抜き、上から潤をストンと落とす。 
最近の潤のお気に入りがこれだ。
重力に任せての深い結合は、普通だと届かないような場所まで黒瀬を感じる。
内臓を目一杯広げられ、杭に突き刺さる強い刺激に、潤は頭の中が白くなるぐらい感じるのだ。

「あう…、黒瀬っ、黒瀬ッ…」
「今日は、特に感じているね…ふふ…やはり、小型犬、飼う?」
「…ユウイチだけじゃなくて…、なんか…あぁああ、あっ、…深い」

奥まで入ったところで、一旦黒瀬が潤を持ち上げる。

「あん、…嬉しい…、時枝さんと、…組長さんと…あぁああっ、」

黒瀬が手を弛め、潤を落とす。

「潤、言わなくても分るよ…心配していたんだろ。…もう、この二人のことはいいから、思いっきり乱れてごらん」

淫靡というよりは、幸せな空気に満たされた二組の交わり。
その二組の間を行ったり来たりするユウイチ。
快楽の宴は、時枝と潤が意識を数回飛ばしても終わることはなく、結局、明け方まで続いた。

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秘書の嫁入り 夢(29)

「黒瀬ぇ、あの…ここじゃなくても……ユウイチだけ、借りるってことも…」
「潤、さっきも言っただろ? ふふ、折角だから、余興に参加して楽しまないと。もちろん潤の身体を兄さん達に見せるのは、勿体ないからイヤなんだけど。大丈夫、兄さんには、潤を触らせないから」

まだ、あの時のことを黒瀬は根に持っていた。
潤の身体を残酷に痛め付けた勇一の行為を、理解はしても許しているわけではなかった。
シャツを脱がし終わると、ベルトを外した。
あっという間に衣類は全て脱がされ、靴下は潤自ら脱いだ。
潤が裸になると、黒瀬も素早く服を脱ぎ捨て、時枝の頭の横に潤を抱いて座った。

「オイオイ、兄弟で4pでもするつもりか?」
「まさか。時枝と兄さんの交わりに参加するつもりはありませんよ。ただ、ユウイチを共有させてはもらいますが。それに、可愛い潤の喘ぎ声を聞けば、もっとお二人も興奮するでしょうから。この装飾を施した可愛い身体見て下さい」

官能の海に溺れてしまっている時枝には無理だったが、勇一は黒瀬に胸を開かれるよう抱かれた潤に視線を移した。
左右の尖りにぶら下がるアメジストが、黒瀬の指で弾かれ、キラリ、妖しい光を放った。

「ふふ、いいでしょう。次の誕生日には、ここに、新婚旅行先で買ってきたオパールも飾る予定です。ね、潤」

黒瀬の指が、潤の半勃ちの先を擦る。

「うん、黒瀬…楽しみ」
「痛いかもしれないよ?」
「…バカ…、それが、嬉しいんだろ…黒瀬が俺に与える痛みは、俺には最高に快感なんだから…」
「オイ、何、勝手に盛り上がってるんだ、この変態バカップル」

邪魔な上に、二人の世界に突入している黒瀬と潤に、勇一が時枝を責めながらも口を挟む。

「ユウイチを嗾(けしか)けて楽しんでいる兄さんに、変態扱いされるとは。ふふ、兄さん、羨ましいんでしょ。素直じゃないな」
「ほざけ。俺はいつでも、素直だ。変態を変態と言ったまでだ。ユウイチだって、嗾けたわけじゃない。ユウイチが、時枝を気にいっているだけじゃないか」
「じゃあ、ユウイチ、借りますよ。潤、ユウイチを呼んでごらん」

潤が時枝の乳首を吸っているユウイチを呼ぶ。
顔を上げたユウイチに見えるように、黒瀬が潤の胸にぶら下がるアメジストを揺らすと、ユウイチの興味が時枝から潤に移った。
潤の前に来て座り、揺れるアメジストを目で追っている。

「ユウイチ、潤の胸、素敵だろ? ユウイチ、ほら、ミルクでるかもしれないよ?」

黒瀬が、潤の胸の尖りが前に突き出るよう、指で挟んだ。 
赤く熟れた潤の乳首とアメジストが淫猥に強調される。
飛び付いていいのか、駄目なのか…ユウイチは黒瀬と潤の顔を交互に見比べている。
一方、急にユウイチからの刺激を失った時枝が、物足りなさを勇一に訴えた。

「…勇一っ、噛んでっ!」
「こっちは、どうするんだ? 休憩か?」

こっちとは、もちろん時枝を攻めている腰の動きのことである。

「…ぁあっ、止めるなっ、両方っ、しろっ!」
「…ったく、我が儘な、姫だ…ユウイチの涎でベトベトじゃないかよ…」

時枝の乳首は、ユウイチの唾液で光っていた。
その上から噛めとは辛いものがあるが、勇一は時枝の求めに従うことにした。

「上、覆うぞ。痛くても文句言うなよ」

上とは、時枝の陰茎のことである。
時枝を穿ちながら、胸の位置まで口を持って行こうとすると、勇一の腹が時枝の腹に合わさる形になる。
つまり、猛った時枝のモノを押し潰すことになる。

「…早くっ…、勇一ッ、」
「ったく、人使いが荒いヤツだ」
「と言いつつ、兄さん、嬉しそうな顔しちゃって」
「なんか、言ったか、武史」
「いいえ、別に。潤、自分で乳首弄りながら、ユウイチを呼んでごらん。きっと、飛び付いてくるから」

黒瀬の手が潤の乳首から、蜜が溢れる先端へと移動する。 
片手で竿を握りながら、先端を割るようにして蜜口を開くとそこに爪を立てた。

「…ぁん、ソコ、弱いのにッ…」
「好きなのに、だろ。ほら、ユウイチが行って良いのかどうか迷っているよ? 呼んであげて」

潤が自分の両手で左右の尖りを挟む。
先程、黒瀬がしていたように乳首を突き出すと、ユウイチが潤の乳首に釘付けになった。

「ユウイチ、おいで。俺の、舐めてみる?」

素早かった。
潤の左側の太腿に飛び乗ると、前足を潤の胸の下に沿わせ、潤の左側の乳首にユウイチが吸い付いてきた。

「ふふ、左から攻めるとは、順序を心得てるね」

所有の証として、潤の胸に、最初のピアスが飾られたのが左だった。
右にピアスを装着するまで、三ヶ月間が開いたせいもあるのか左の乳首の方が感度が良い。

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秘書の嫁入り 夢(28)

凄い…と、潤が小さく溜息を漏らす。

「何が凄いの?」

先に食べ終わった黒瀬が、ブランディ入りのコーヒー片手に、潤に問う。

「だって、時枝さん、ユウイチまで使って組長さんを飼い慣らしているっていうか、懐柔しているっていうか」
「きっと風俗の子を相手にしたことが許せなかったんだよ…ふふ、結構時枝は執念深いから。兄さん完全復活だね」
「うん。ユウイチとも仲良くしてくれると良いけど」
「大丈夫じゃない? すでに仲良くやってる」

スピーカーからの声を聞くと、確かに勇一とユウイチはタッグを組んだ感がある。

「あ~あ~、やっぱり、教育上よくないと思うんだけど。ユウイチ、どんな成犬になるのか、凄く心配になってきた。…あのさ、」

言いにくそうに、上目使いで潤が黒瀬を見る。

「なに?」
「…う~ん、やっぱり、いい。何でもない」
「潤、嘘は駄目。何でもないこと、ないだろ。あるんだろ? ふふ、だいたい予想は付くけど」
「予想が付くなら、言わなくても良いじゃん」
「駄目。潤の可愛いお口から聞きたい」
「言っても、俺のこと、軽蔑しない? 変態って思わない?」
「私が潤のことを? 変態さんの潤なんて、可愛いに決まっている。もっと好きになるかも」

本心だった。
潤が自分に見せる痴態は、どんな姿でも可愛いのだ。
むしろ、もっと激しく色々としてみたい黒瀬だが、潤を気遣い黒瀬なりに抑えていた。

「…じゃあ、言うけど…、ユウイチの舌、気持ちいいのかな。ザラザラしているのは分るけど…その…胸とか…舐められたら…」
「興味がある?」

黒瀬の目の奥が、妖しく光った。

「…興味っていうか…、時枝さん、凄く感じているみたいだから……あ、もちろん、黒瀬が一番だよ」
「ふふ、そんなこと、疑ってないよ。アイテムとしてだろ? 兄さんとは違うから、アイテムにジェラシーは感じないよ。大型犬は危ないから小型犬なら飼ってもいいけど」

黒瀬の言う危ないとは、潤が犬に犯されるという意味である。
通常、そんなことはあり得ないが、寝室に入れ睦み事に参加させるなら、その危険はある。
現にそういう風に仕込まれた犬たちに、時枝は酷い犯され方をした。

「…でも、世話をちゃんとできるかな。仕事も半人前なのに…。それに、興味だけで、気持ちいいかどうかも、分らないし……」
「試せばいい。行こう」

黒瀬がコーヒーカップを置き、潤の腕を掴み、立たせるとそのまま歩き出した。

「…黒瀬っ、ちょっと待ってよっ! 試すって、一体…」
「ふふ、言葉通りだよ。気持ちいいかどうなのか、実体験してみないとね」
「実体験って…、ユウイチは、取り込み中だよっ!」
「ちょっと、兄さんが邪魔だけど、時枝とユウイチとはこの間、一緒に楽しんだじゃない? 割り込んでも問題ないよ」
「駄目だよっ! 折角、あの二人、元の鞘に収まったのに…邪魔したくないよ」
「潤は、あの二人が今宵限りだと思っているの? 違うよね?」

黒瀬が立ち止まった。
少し険ののある言い方に、潤が自分の過ちに気付く。

「…思っていない。ずっと続くはず…」

今度はニコリと、満面の笑みを黒瀬は潤に向けた。

「そういうこと。ちょっとぐらい、余興があった方が、あの二人には丁度いいんじゃない?」
「…でも、俺……、まだ、シャワーも浴びてないのに…」
「ユウイチは、きっと潤の汗の匂い大好きだと思うけど? 潤の匂いはそそられるから」
「…バカ……、恥ずかしいこと言うなよ。…俺も黒瀬の匂い大好き」

ポッと潤が頬を染めた所で、黒瀬が客間に向ってまた歩き始めた。

「お邪魔しますね」

アンアン喘ぐ時枝と、ハアハア息づかいの荒い勇一と、ク~~ンと可愛い声を洩らしているユウイチ。
三位一体の営みに黒瀬の声が割り込んだ。
時枝と合体中の勇一が、チラッと黒瀬の方を見たが、それどころじゃないと視線を戻した。
ユウイチも黒瀬と潤の姿を確認したが、今は時枝の身体で遊ぶ方が楽しいらしく、興味がないといった感じだ。
時枝に至っては、黒瀬の声にも気付いていなかった。

「あの人達、ちょっと、失礼じゃない? ふふ、ユウイチ、きっと時枝より潤に興奮するよ。潤、おいで」

弾むベッドの端に黒瀬が腰掛け、潤のシャツのボタンを外しにかかる。

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