秘書の嫁入り 夢(33)/終

「お前が俺を愛しているその百倍だ」
「だったら、俺はその一万倍」
「ふん、俺は更にその一億倍だ」

漏れ聞こえる会話に、黒瀬も苦笑を隠せない。

「オッサン、寒いよ~。木村さん、遅い!」
「そのうち来るだろ。良いじゃないか、お二人が寒さも感じないぐらい、幸せなら」
「ハ~クション、でも、俺は寒い!」
「帰ったら、温めてやるから、我慢しろ」
「…分った…アレ、何だ?」

大喜が指をさした先に、黒い塊が見えた。

「木村か? 違う、バイクだ」
「こんな場所走って何が面白いんだ?」

黒い塊に見えた物は、黒の大型バイクだった。
段々佐々木達に近づいて来る。

「オッサン、アレ、変じゃないか?」

スピードを落とさず、こっちに向ってやってくる。
よく見ると二人組だ。
黒いライダースーツに黒のヘルメット。
後ろのシートに乗っている男が手にしていた物は…

「ライフルを持ってる! オッサン、奴ら、ヤバイぞっ!」

猛スピードでバイクが佐々木と大喜の方へ向ってくる。
後部シートの男がライフルを構える。
海鳥を狙っているのではないことは、大喜にも分った。
自分達にその銃口は向けられいた。
パンと、渇いた音が響く。

「大喜っ!」

佐々木が大喜を突き飛ばした。
地面に顔からたたきつけられた大喜の上に、佐々木が倒れ込んできた。

「…オッサン?」

自分の上の佐々木を大喜が振り返る。
眉間にギュッと深い皺を刻んだ佐々木の顔が見えた。
それと…

「…ソレ、まさかっ、」

佐々木の黒いスーツの袖から、何かが染み出ていた。
大喜は慌てて、佐々木の下から出ようとした。

「…駄目だっ! 俺の下から出るなっ。俺は大丈夫だ。上腕に玉が掠っただけだ…」

また、パンと音がした。

「ぐふっ」
「オッサンッ!」
「――足、やられた…」

大喜の上に覆い被さる佐々木の脚を狙ったのだ。
留めを刺されるかと思えば、バイクは佐々木達の横を素通りして行った。
向った方向は、時枝達がいる崖だ。

「くそっ、狙いは…組長達だっ!」

佐々木が立ち上がろうとして、大喜の上に崩れた。

「オッサンッ、無理だっ!」

それでも立ち上がろうとした佐々木の耳に、パンパンと二発の銃声が届いた。

「兄さん、今の音…」
「ああ、」

佐々木が銃撃された音を黒瀬も勇一も捉えていた。
四人に緊張が走る。

「黒瀬っ、バイクがっ!」

音が聞こえ数秒も経たないうちに、バイクの爆音が近づいてきた。
黒瀬が咄嗟に石を数個拾う。
黒尽くめの二人組が、バイクで近づいてくる。

「勝貴っ!」

狙われたのは時枝だった。
黒瀬が走るバイクのタイヤを狙い投石したのと、後部シートの男が時枝の心臓に向けライフルを二発、発射したのが同時だった。
勇一が時枝の前に飛び出る。
バイクが転倒し、横滑りで崖下に落下した。
投げ出された二人も、見事に崖の下。

―――そして、

「うぐっ、…勝貴」

胸を押さえ、後ろへよろけた勇一が…

「…スマン…今夜の約束は……アッ」

切れ切れの声を残し、背中から数十メートル下の荒れる海の中へと消えていった。

「…そ、んな…、これは夢か……、はは…」

時枝から渇いた笑いが漏れる。
潤は今目で起ったことが呑込めず、唖然としていた。

「…夢じゃない…時枝。これは現実だ」

感情のない声で黒瀬が呟く。

「嘘だっ、そんなわけないっ、勇一ィイイイ―――――ッ!」

荒れる海に、時枝の悲痛な叫び声が轟き渡った。

 

秘書の嫁入り 了

 

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秘書の嫁入り 夢(32)

「…オッサン、今、インポって…俺の耳は聞こえたんだけど……」
「…ああ…、俺にもそう聞こえた……」

大喜と佐々木が黒瀬の発した言葉を確認しあう。
静寂を破ったのは、潤の拍手だった。

「黒瀬っ、さすがだっ! 俺の旦那様は凄い!」

パチパチパチと、拍手を響かせ絶賛する。

「組長さん、誓えないの? 誓うよね?」

潤が勇一を急かす。
時枝は、抗議の声を上げる訳でもなく、どうなんだ?
誓えるのか、と勇一に鋭い視線を向けた。
時枝が黒瀬に抗議をしなかったのは、黒瀬の「インポテンツ」がふざけて出た言葉ではないと理解したからだ。
勇一の精神的弱さを指摘しつつ、自分に何があっても逃げるなと言ってくれているのだと、黒瀬の真意が伝わっていた。
だから、潤も感動し、拍手を響かせたのだ。

「ったく…この神父さんは。誓う。誓いますっ! ああ、何があろうとココだけは、鍛えに鍛え、毎晩でも突っ込んでやるから、安心しろ」

勇一が袴の上から、自分の中心に手を置く。
その手を時枝が払い、勇一の中心を袴の上から握った。

「ふん、毎晩、出来るのか? その根性がお前にもココにもあるのか? ユウイチに負けるようじゃ、お払い箱だからな。早速今夜から励めよ」
「出来るに決ってるだろ。俺様の愛情は、肉体疲労なんかに負けやしないんだよ。一生、お前の上で腰を振ってやる」
「そうか、楽しみにしてるぞ。一生だからな。せいぜい鍛えてくれ」

時枝の手にギュッと力が入る。

「ん、ッタァアアーッ、握り潰す気かっ!」
「ハイハイ、二人とも、まだ式の途中ですよ。では、お互いの愛情を確認し合ったところで、誓いのキスをお願いします」

式の段取りはメチャクチャだが、この二人には関係なかった。
セットのチャペルに、偽物の神父。
だが、誓い合ったのは一生の絆。
羽織袴の勇一が、白いスーツの時枝を見つめる。
合図も無しに二人の腕が同時に互いの腕に掛かる。
そして、近づく顔と顔。
触れ合う唇。
短いキスではなかった。
ディープキスでもないのに、触れ合った唇は離れなかった。
二人の間で、中学の頃から今までの歴史が走馬燈となって巡っていた。
両親の死を乗り越えられたのも、勇一がいたからだと時枝は知っている。(同人誌:「秘書、その名は時枝&Chapter0」参照)

―――あの時から既に自分は捕まっていたのだろう、この男に。

終わりではなく、始まりのキス。
ツーッと時枝の目から一筋の涙が流れた。

 

 

「良い式だったね、黒瀬」
「ふふ、そうだね。キスのあとの兄さんのだらしない顔っていったら…うふふ」
「もう、ぼ~くのモノだ、って声が聞こえてきそうだった。写メも撮ったし、あとで福岡の尾川のお父さんにも送ってあげるんだ」
「気が利くね。さすが潤」

セットのチャペルを出た一向は、崖の上を散策していた。
黒瀬は神父服を脱ぎ、薄いグレーのスーツにコートを羽織っている。
潤はダウンジャケットをスーツの上から着込み、主役の二人はデレデレと腕を組んだまま上着も着ずに潤と黒瀬の前を歩いていた。
一方、佐々木と大喜は、木村がマイクロバスで迎えにくるはずだと、崖から少し離れた空き地にいた。
ここに来るときは駅からタクシーだったが、帰りは主役の二人が興奮を抑えきれないかもしれないと、組の迎えを頼んであった。
人気がないこの岸壁、実はここ、自殺の裏名所として地元では知られており、滅多に人が寄りつかない。
セットを組で撮影したりするのにはもってこいの場所で、映画だけではなくドラマの撮影にも度々使われる場所だ。
よって、勇一と時枝が、緩みっぱなしの顔で腕を組み、散策しようと誰の目も気にする必要はなかった。
荒涼とした景色が広がっているだけの場所での三十を過ぎた男二人のイチャツキぶりに、正直潤も目のやり場に困っていた。
上司として自分を叱る時の凛々しい時枝の面影はなく、頬を染めて勇一と馬鹿を言い合ったり、頬を抓ったり、抱きついたり……

「…黒瀬…、時枝さんって、組長さんより男らしいって思ってたけど…根っこの深い部分は実は乙女?」
「色々あったから、今日ぐらいは目を瞑ってやろうね、潤」
「そりゃ、もちろんだけど…」

家族を失って以来、家族代りの存在だった男が、本当の身内になるのだ。
自ら身を引こうとしたこともあったが、出来なかった。
時枝の箍が外れても、今日ぐらいは良いだろう。
時枝よりも更に外れてしまった男がその隣にいるのだから。

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秘書の嫁入り 夢(31)

「ヤクザが祝言をチャペルって、変だ。な、オッサン」
「こらっ、ダイダイ、口を噤め。ロマンティックで良いじゃないか」
「だってさぁ、時枝のオヤジはいいとして、組長って、ザ・日本っていう顔立ちじゃん。それにあのセンス」

光る素材のグレーのスーツの大森大喜が、いつもの黒のスーツの佐々木に囁きながら、前方を指さした。
今二人は、荒れ狂う冬の日本海に面した岸壁に建つ、小さなチャペルの中にいた。
大喜の指の先には、白いスーツの時枝に、羽織袴の勇一が並んでいた。
時枝の横には、介添え役の潤がいる。

「しかも、これ、なんちゃってチャペルだろ。よくまあ、映画のセットなんて借りられたよな~。やっぱり、芸能界とヤクザって繋がってるんだ」

そう、このチャペルはセットなのだ。
ヤクザのコネではなく、株式会社クロセの繋がりで、撮影を終了し壊す前のセットを借りたのだ。
あの快楽の宴から、実はまだ三日しか経っていない。
同じ週の週末なのだ。
そんな急にチャペルなど借りられるわけがない。
もちろん、神社も無理だ。
所謂、結婚式場も無理だった。
急じゃなくても、勇一の職業柄、断られるのは目に見えているし、なんといっても、男同士の結婚式をすんなりOKしてくれる所など、三日で探せるわけがない。
時枝は籍だけで、式などなくていいと言ったのだが、勇一と佐々木が、これを許さなかった。
記念にもなるし、生涯の愛の契約をきちんとした形でした方がいいと、勇一と佐々木に迫られた。
佐々木に至っては、涙ながらに、時枝の桐生への嫁入り姿を見たいと言いだした。
花嫁ドレスまで用意すると言い出したので、それだけはのめないと断ったのだ。
組への披露は後日することにして、式だけを急いだのは、勇一がもうこれ以上待てないと言いだしたからだ。
また、何かあるかも知れない。
時枝を拉致した奴らを捕えたわけでもない。
潤と黒瀬じゃないが、いつ何があってもおかしくない世界に二人ともいる。
だったら、一秒でも長く一緒にいたいという勇一の想いに、時枝も賛同した。
そこで、黒瀬がクロセが出資している映画会社のセットを利用することを提案し、今日の運びとなったのだ。

「建物なんか、関係ないだろ。大切なのは、あの二人の気持ちと祝福する俺達の気持ちだ。ダイダイは、あの二人を祝う気はないのか?」
「あるに決ってるだろ。じゃなかったら、こんな所まで来るかよ… さすが、セットだけあって、寒いな…クッ、ション」

セット内、暖房器具がなかった。

「シッ、!」

後ろを振り向いた潤に、そこの二人、静かにしろと口元で指を立てられた。

「静粛に~、ふふ、今から桐生組、組長桐生勇一と、株式会社クロセの口うるさい名物秘書で、可愛い私の妻の上司でもある、時枝勝貴の結婚式を執り行います」
「真面目にやれ、真面目に」
「やだな、兄さん、いたって真面目ですよ。ね、潤」
「黒瀬…凄くカッコイイ」

神妙な顔付き、イヤ、緊張のためか、眼鏡の奥でいつもより鋭い眼光を光らせる時枝と、時枝とは対照的に、嬉しくて溜まらないとにやけた勇一の前に、黒い神父服にロザリオを掛けた黒瀬が立っていた。
手には、聖書らしき物も持っている。
大喜が「アレ、どうみてもコスプレだろ、」と今度は注意されないよう、佐々木に耳打ちをした。

「あんなフワフワウェーブのロン毛神父なんて、見たことないぞ…いいのか? 式なんだろ? ちゃんとしたの、呼んで来た方がいいと俺は思うけど…」

囁いたつもりだったが、潤が振り返り、大喜を睨んだ。

「ダイダイ、言いたいことは分るが……大人しくしてろ」
「…わかった…」

それこそ、俳優の一人でも借りてくれば良かったのに、と大喜は思ったが、それ以上何も言わなかった。

「病めるときも、健やかなときも、なんてことは今更なので、省略します。大事な確認だけ、しときますよ。兄さん、ちょっとしたことで、インポテンツにならないと、誓って下さい」
「・・・」

一瞬、そこにいた全員が固まった。

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秘書の嫁入り 夢(30)

「…凄い…、ユウイチ、ぁあっ、あ、イイッ、」
「ジェラシーを感じてしまいそうだよ。そんなにイイの?」
「…うん、時枝さん…、こんなこと、毎晩してたんだ…あ、ザラザラした舌が…」

動物なだけに、次の行動が予測が付かない。
出ないミルクを吸い出そうと、強く吸引したり舌でピアスを揺らしたり、かと思えば乳首を甘噛みしたり。

「ユウイチ、こっちは、ミルク出てるよ。少し苦いかもしれないけど」

潤の乳首を貪っていたユウイチを黒瀬が引き剥がし、自分の爪で弄っていた潤の先端へ連れて行く。
黒瀬が蜜口が開くように割ってやると、そこから滲み出る蜜を興味深そうにユウイチが見つめた。

「時枝とは匂いも味も違うから、舐めてごらん」

ユウイチが舌を出し、チョロッと舐めた。

「ぁああっ、」

ブルッと潤の身体が震え、後ろから伸びている黒瀬の腕に潤が捕まる。
味も匂いもミルクとはほど遠いが、舐めればピクッと反応を示す潤の陰茎と、舐める度に湧き上がる泉のような潤の蜜に、子犬のユウイチは時枝のモノと同様、興味津々といった感じで舌を小さな孔に這わせた。

「…く、ろせっ…、ヤバイって…、良いけど、ヤダッ!」
「何が、イヤなの、潤?」
「…ユウイチで、イきたくない、よぅ…、後ろっ、…早くっ、…」
「後ろって、背中? 痒いの?」

黒瀬が意地悪して、潤の背中を掻くフリをする。

「…わかってる、だろっ! …欲しい…、頂戴っ!」
「ちゃんと、言葉にして。出し惜しみは良くないよ、潤」
「ぁあっ、もう、間に合わないっ、――ひぃ、」

爆発寸前の潤の根元を黒瀬の指が握りしめた。

「これで、大丈夫。さあ、して欲しいことをハッキリ言ってごらん」
「俺の…アナルに…、黒瀬の太いの…挿入して…」

潤が自らの手を後ろの孔に持って行く。

「挿れるだけでいいの?」
「…奥までがいい…アレ、してっ…落とすヤツ…」

待てない、と潤は自ら指で解し始めていた。

「ユウイチは、どうする? もう、いいの?」
「…ユウイチも欲しい…」
「一緒は無理だよ。潤。潤の好きなヤツすると、ユウイチは潤を舐められないから。時枝に返してあげよう」

半分白目を剥いて、嬌声をあげている時枝。
その上には勇一が被さっているので、返そうにもユウイチを置く場所がなかった。
それならば、と黒瀬が含みのある笑みを浮かべ、ユウイチを一旦、繋がっている二人の横に置き、勇一の尻の後ろに行くように命じた。

「あふっ、何するんだっ! クソ犬ッ」

上下に動く勇一の窄みをユウイチの舌が捉えた。
時枝に掘られた勇一の孔は、まだ赤く腫れていて、時枝の放出したモノの匂いが残っていた。
時枝の香に誘われるように、ユウイチが勇一の入口を執拗に舐め始めた。

「―勇一ッ、…休むなっ!」
「そんなこと、言ってもよぅ…あっ、てめぇ、人のケツ舐めるなっ!」
「勇一ッ、ユウイチと遊んでないで、仕事しろッ…もっと奥まで…来い…」
「ンなこと言ってもよ、…あぁ、もう、このクソ犬っ、舐めるなら、勝手に舐めてろ…後で覚えてろ…ヤべぇ…コイツ」

尻にユウイチの舌を感じながら、勇一が時枝を悦ばせようと腰を振る。
ぶらぶら揺れる珠が面白いのか、ユウイチは孔だけでなく双珠までも舌で突いたり、前足を伸ばし触ったりと遊ぶ範囲を広げた。
時枝に突っ込む勇一。
その勇一の尻を弄ぶユウイチ。
二人と一匹の営みが、そう仕向けた黒瀬と潤を更に興奮させた。
黒瀬は自分の猛った雄に潤を座ったまま突き刺すと、潤を持ち上げギリギリまで抜き、上から潤をストンと落とす。 
最近の潤のお気に入りがこれだ。
重力に任せての深い結合は、普通だと届かないような場所まで黒瀬を感じる。
内臓を目一杯広げられ、杭に突き刺さる強い刺激に、潤は頭の中が白くなるぐらい感じるのだ。

「あう…、黒瀬っ、黒瀬ッ…」
「今日は、特に感じているね…ふふ…やはり、小型犬、飼う?」
「…ユウイチだけじゃなくて…、なんか…あぁああ、あっ、…深い」

奥まで入ったところで、一旦黒瀬が潤を持ち上げる。

「あん、…嬉しい…、時枝さんと、…組長さんと…あぁああっ、」

黒瀬が手を弛め、潤を落とす。

「潤、言わなくても分るよ…心配していたんだろ。…もう、この二人のことはいいから、思いっきり乱れてごらん」

淫靡というよりは、幸せな空気に満たされた二組の交わり。
その二組の間を行ったり来たりするユウイチ。
快楽の宴は、時枝と潤が意識を数回飛ばしても終わることはなく、結局、明け方まで続いた。

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秘書の嫁入り 夢(29)

「黒瀬ぇ、あの…ここじゃなくても……ユウイチだけ、借りるってことも…」
「潤、さっきも言っただろ? ふふ、折角だから、余興に参加して楽しまないと。もちろん潤の身体を兄さん達に見せるのは、勿体ないからイヤなんだけど。大丈夫、兄さんには、潤を触らせないから」

まだ、あの時のことを黒瀬は根に持っていた。
潤の身体を残酷に痛め付けた勇一の行為を、理解はしても許しているわけではなかった。
シャツを脱がし終わると、ベルトを外した。
あっという間に衣類は全て脱がされ、靴下は潤自ら脱いだ。
潤が裸になると、黒瀬も素早く服を脱ぎ捨て、時枝の頭の横に潤を抱いて座った。

「オイオイ、兄弟で4pでもするつもりか?」
「まさか。時枝と兄さんの交わりに参加するつもりはありませんよ。ただ、ユウイチを共有させてはもらいますが。それに、可愛い潤の喘ぎ声を聞けば、もっとお二人も興奮するでしょうから。この装飾を施した可愛い身体見て下さい」

官能の海に溺れてしまっている時枝には無理だったが、勇一は黒瀬に胸を開かれるよう抱かれた潤に視線を移した。
左右の尖りにぶら下がるアメジストが、黒瀬の指で弾かれ、キラリ、妖しい光を放った。

「ふふ、いいでしょう。次の誕生日には、ここに、新婚旅行先で買ってきたオパールも飾る予定です。ね、潤」

黒瀬の指が、潤の半勃ちの先を擦る。

「うん、黒瀬…楽しみ」
「痛いかもしれないよ?」
「…バカ…、それが、嬉しいんだろ…黒瀬が俺に与える痛みは、俺には最高に快感なんだから…」
「オイ、何、勝手に盛り上がってるんだ、この変態バカップル」

邪魔な上に、二人の世界に突入している黒瀬と潤に、勇一が時枝を責めながらも口を挟む。

「ユウイチを嗾(けしか)けて楽しんでいる兄さんに、変態扱いされるとは。ふふ、兄さん、羨ましいんでしょ。素直じゃないな」
「ほざけ。俺はいつでも、素直だ。変態を変態と言ったまでだ。ユウイチだって、嗾けたわけじゃない。ユウイチが、時枝を気にいっているだけじゃないか」
「じゃあ、ユウイチ、借りますよ。潤、ユウイチを呼んでごらん」

潤が時枝の乳首を吸っているユウイチを呼ぶ。
顔を上げたユウイチに見えるように、黒瀬が潤の胸にぶら下がるアメジストを揺らすと、ユウイチの興味が時枝から潤に移った。
潤の前に来て座り、揺れるアメジストを目で追っている。

「ユウイチ、潤の胸、素敵だろ? ユウイチ、ほら、ミルクでるかもしれないよ?」

黒瀬が、潤の胸の尖りが前に突き出るよう、指で挟んだ。 
赤く熟れた潤の乳首とアメジストが淫猥に強調される。
飛び付いていいのか、駄目なのか…ユウイチは黒瀬と潤の顔を交互に見比べている。
一方、急にユウイチからの刺激を失った時枝が、物足りなさを勇一に訴えた。

「…勇一っ、噛んでっ!」
「こっちは、どうするんだ? 休憩か?」

こっちとは、もちろん時枝を攻めている腰の動きのことである。

「…ぁあっ、止めるなっ、両方っ、しろっ!」
「…ったく、我が儘な、姫だ…ユウイチの涎でベトベトじゃないかよ…」

時枝の乳首は、ユウイチの唾液で光っていた。
その上から噛めとは辛いものがあるが、勇一は時枝の求めに従うことにした。

「上、覆うぞ。痛くても文句言うなよ」

上とは、時枝の陰茎のことである。
時枝を穿ちながら、胸の位置まで口を持って行こうとすると、勇一の腹が時枝の腹に合わさる形になる。
つまり、猛った時枝のモノを押し潰すことになる。

「…早くっ…、勇一ッ、」
「ったく、人使いが荒いヤツだ」
「と言いつつ、兄さん、嬉しそうな顔しちゃって」
「なんか、言ったか、武史」
「いいえ、別に。潤、自分で乳首弄りながら、ユウイチを呼んでごらん。きっと、飛び付いてくるから」

黒瀬の手が潤の乳首から、蜜が溢れる先端へと移動する。 
片手で竿を握りながら、先端を割るようにして蜜口を開くとそこに爪を立てた。

「…ぁん、ソコ、弱いのにッ…」
「好きなのに、だろ。ほら、ユウイチが行って良いのかどうか迷っているよ? 呼んであげて」

潤が自分の両手で左右の尖りを挟む。
先程、黒瀬がしていたように乳首を突き出すと、ユウイチが潤の乳首に釘付けになった。

「ユウイチ、おいで。俺の、舐めてみる?」

素早かった。
潤の左側の太腿に飛び乗ると、前足を潤の胸の下に沿わせ、潤の左側の乳首にユウイチが吸い付いてきた。

「ふふ、左から攻めるとは、順序を心得てるね」

所有の証として、潤の胸に、最初のピアスが飾られたのが左だった。
右にピアスを装着するまで、三ヶ月間が開いたせいもあるのか左の乳首の方が感度が良い。

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秘書の嫁入り 夢(28)

凄い…と、潤が小さく溜息を漏らす。

「何が凄いの?」

先に食べ終わった黒瀬が、ブランディ入りのコーヒー片手に、潤に問う。

「だって、時枝さん、ユウイチまで使って組長さんを飼い慣らしているっていうか、懐柔しているっていうか」
「きっと風俗の子を相手にしたことが許せなかったんだよ…ふふ、結構時枝は執念深いから。兄さん完全復活だね」
「うん。ユウイチとも仲良くしてくれると良いけど」
「大丈夫じゃない? すでに仲良くやってる」

スピーカーからの声を聞くと、確かに勇一とユウイチはタッグを組んだ感がある。

「あ~あ~、やっぱり、教育上よくないと思うんだけど。ユウイチ、どんな成犬になるのか、凄く心配になってきた。…あのさ、」

言いにくそうに、上目使いで潤が黒瀬を見る。

「なに?」
「…う~ん、やっぱり、いい。何でもない」
「潤、嘘は駄目。何でもないこと、ないだろ。あるんだろ? ふふ、だいたい予想は付くけど」
「予想が付くなら、言わなくても良いじゃん」
「駄目。潤の可愛いお口から聞きたい」
「言っても、俺のこと、軽蔑しない? 変態って思わない?」
「私が潤のことを? 変態さんの潤なんて、可愛いに決まっている。もっと好きになるかも」

本心だった。
潤が自分に見せる痴態は、どんな姿でも可愛いのだ。
むしろ、もっと激しく色々としてみたい黒瀬だが、潤を気遣い黒瀬なりに抑えていた。

「…じゃあ、言うけど…、ユウイチの舌、気持ちいいのかな。ザラザラしているのは分るけど…その…胸とか…舐められたら…」
「興味がある?」

黒瀬の目の奥が、妖しく光った。

「…興味っていうか…、時枝さん、凄く感じているみたいだから……あ、もちろん、黒瀬が一番だよ」
「ふふ、そんなこと、疑ってないよ。アイテムとしてだろ? 兄さんとは違うから、アイテムにジェラシーは感じないよ。大型犬は危ないから小型犬なら飼ってもいいけど」

黒瀬の言う危ないとは、潤が犬に犯されるという意味である。
通常、そんなことはあり得ないが、寝室に入れ睦み事に参加させるなら、その危険はある。
現にそういう風に仕込まれた犬たちに、時枝は酷い犯され方をした。

「…でも、世話をちゃんとできるかな。仕事も半人前なのに…。それに、興味だけで、気持ちいいかどうかも、分らないし……」
「試せばいい。行こう」

黒瀬がコーヒーカップを置き、潤の腕を掴み、立たせるとそのまま歩き出した。

「…黒瀬っ、ちょっと待ってよっ! 試すって、一体…」
「ふふ、言葉通りだよ。気持ちいいかどうなのか、実体験してみないとね」
「実体験って…、ユウイチは、取り込み中だよっ!」
「ちょっと、兄さんが邪魔だけど、時枝とユウイチとはこの間、一緒に楽しんだじゃない? 割り込んでも問題ないよ」
「駄目だよっ! 折角、あの二人、元の鞘に収まったのに…邪魔したくないよ」
「潤は、あの二人が今宵限りだと思っているの? 違うよね?」

黒瀬が立ち止まった。
少し険ののある言い方に、潤が自分の過ちに気付く。

「…思っていない。ずっと続くはず…」

今度はニコリと、満面の笑みを黒瀬は潤に向けた。

「そういうこと。ちょっとぐらい、余興があった方が、あの二人には丁度いいんじゃない?」
「…でも、俺……、まだ、シャワーも浴びてないのに…」
「ユウイチは、きっと潤の汗の匂い大好きだと思うけど? 潤の匂いはそそられるから」
「…バカ……、恥ずかしいこと言うなよ。…俺も黒瀬の匂い大好き」

ポッと潤が頬を染めた所で、黒瀬が客間に向ってまた歩き始めた。

「お邪魔しますね」

アンアン喘ぐ時枝と、ハアハア息づかいの荒い勇一と、ク~~ンと可愛い声を洩らしているユウイチ。
三位一体の営みに黒瀬の声が割り込んだ。
時枝と合体中の勇一が、チラッと黒瀬の方を見たが、それどころじゃないと視線を戻した。
ユウイチも黒瀬と潤の姿を確認したが、今は時枝の身体で遊ぶ方が楽しいらしく、興味がないといった感じだ。
時枝に至っては、黒瀬の声にも気付いていなかった。

「あの人達、ちょっと、失礼じゃない? ふふ、ユウイチ、きっと時枝より潤に興奮するよ。潤、おいで」

弾むベッドの端に黒瀬が腰掛け、潤のシャツのボタンを外しにかかる。

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秘書の嫁入り 夢(27)

勇一の目に飛び込んできたのは、時枝の顔を尻尾を振りながら舐めるユウイチの姿だった。
泣いた痕跡を舐め取っているようだ。
顔ぐらいならまだ許せる範囲だと思っていた勇一は、次のユウイチの行動で『絶対、剥製してやる』と考えを改めた。
ユウイチが時枝の上を移動し、今度は胸部一体を舐めだした。

「こら、くすぐったい…ユウイチ、慌てない…そうそう、良い子だ……あぁっ、駄目だって…そこは…」

最初、時枝の肌に粒になって浮かぶ汗を舐めていたユウイチが、時枝の乳首にしゃぶりだした。

「…ミルクは出ないぞ…、まだまだ、赤ちゃんだな…あぅ、引っ張るなって…」
「我慢ならねーッ。退けろそのクソ犬ッ! 犬が人間さまの乳首吸うなんて、聞いたことねえっ、分っててやってるんだろ、エロ犬めっ!」

あのDVDに映っていた時枝を犯した犬でも、愛撫するようなことはなかった。
興奮して、時枝を犯すことだけに没頭していた。

「勇一、この子はまだ子どもなんだ。発情している訳じゃないっ。母親が恋しいだけなんだろ。邪な目で見るな」
「そうかよ。悪かったよ。俺が、母親が恋しいって言えば、お預けは無しか? あ? 勝貴ママ、俺にもオッパイ吸わせろっ!」

勇一が蹴落とされた床の上からベッドへ戻ると、ユウイチが口にしてないもう片方の乳首を口に含んだ。

「なっ、駄目だっ、…あぁあぁ…敏感になってるのに…」

ザラザラしたユウイチの舌と、肉厚で滑らかな勇一の舌が尖りを弄る。
双方が別々のリズムで時枝の乳首を吸引する。
二つの舌から与えられる甘痛い快感に、時枝が溜まらず悶えだした。

「ぁあっ、こらっ、二人のゆう…いちぃ…、引っ張るな…ぁ、あ…いいっ、すごい…」

緩急の快感で時枝の雄に熱が籠り、先程まで勇一が収まっていた場所も疼く。
ユウイチが、ふん、と鼻を鳴らし、勇一の視界から消えた。
どこに行きやがったと時枝の乳首を咥えたまま、視線だけを移動すると、

「あっ、…ユウ…イチッ、だから…そこは…今日は、カスタードクリーム…ないのに…」

カスタードクリーム? 
時枝の意味不明な言葉と共に、時枝の大事な部分をペロペロと横から舐めるユウイチの姿が、勇一の視線の先に飛び込んだ。

「あの写真は、日常だったというのかっ! 勝貴、どういうことだっ!」
「怒鳴るなっ、…バカッ、…おしゃぶり代りに決まってる…だろ。子犬用…のガムと…一緒だ……但し…俺は…感じてしまうけど…」

バター犬じゃないかっ!

「クソ犬がどういうつもりか知らないが、勝貴の方が…」

ユウイチの愛撫に嵌っているんじゃないか…と、勇一はガックリと来た。
対極に身を落としてしまったのかと、勇一はショックさえ感じる。
恐怖心が和らいだことは嬉しいが、この先、俺だけじゃ満足できないんじゃないか、と変な不安が勇一の中に沸く。

「…勇一、お前…そろそろ、仕事しろっ!」
「は?」
「…見て見ろ、ユウイチが…俺の尻…舐めだしたじゃないか…あっ、…ユウイチ…ソコは、駄目だって…教えただろ?…ああ、血を、舐め取ってくれたのか……良い子だぁ」

勇一がショックを受けている間、ユウイチの興味の先は時枝の雄芯から尻の周りのこびり付いた血に移っていた。

「…勇一っ、早くっ! …ユウイチが、懸命にやってくれてるのに、何を遊んでいる。このまま、ユウイチに俺の中まで渡す気じゃないだろうな?」

そうか、と勇一は時枝の真意に気付いた。
ユウイチはダシだった。

「お前、ホント、俺のこと惚れてるよなぁ」
「バカ、今更なこと言うなっ、ユウイチにヤキモチ妬く暇があったら、やることやれ。ユウイチ相手に負けるようなテクじゃ、俺はユウイチを取るぞ! この、浮気者ッ!」

わざと見せつけたかったのだ。
こんなにも仲がいいんだと。
あの写真は日常になりつつあるぞ、と。
今度また逃げるなら、自分は動物にだって慰めてもらうことができるんだ、と。
逃げることは許さないと言っているのだ。
例え時枝自身が逃げようとも、追いかけてこい、と言っているのだ。

「そこまで言われちゃあ、頑張らない訳にはいかないな。退け。そこは俺様専用の場所だ。お前はせいぜいオッパイでも吸ってろ」

乳首ぐらい、吸わせてやるさ。
それで興奮が増すなら、バイブレーターと同じだ。
ユウイチを時枝の腹の上に置き、ユウイチが舐めていた場所を今度は人間の勇一が舐める。

「あ~あ、このクソ犬と間接キスかよ。あとで、口直しさせろよ」
「ぐずぐず言ってないで、さっさと挿れやがれっ、」
「口、パクパク開けて、や~らしい眺めだな。食付けよ」

ユウイチに愛撫される時枝の姿だけで、勇一の雄は成長している。
猛ったモノを宛がい、時枝の脚をV字に肩に担ぐと、体重を掛け押し込んだ。

「…イイッ! 勇一ッ、…最高…」
「クソ犬、ママのオッパイ、吸ってやれよ」

勇一が合図だというように、口でチュッ、チュッと音をたててやる。
さっきまで、ライバル視していた一匹と一人は、この瞬間から共犯者になった。
任せとけという目で勇一を一瞥し、ユウイチは時枝の乳首を甘噛みしながら、吸い始めた。

「ぁあう、同時に…って… ――あ、やっ」
「ん? イヤなのか? 止めるか」
「――違うっ、…分ってて…いう、…なっ。あぁあ、だめっ、…悪い子に…悪い男だ……良すぎてっ―――ぁああっ」

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秘書の嫁入り 夢(26)

「ふふ、凄く盛り上がっているし。時枝、サードバージン喪失って所じゃない?」
「なにそれ? 三回目ってこと?」
「そう。一回目は、文字通り、初めての時で、二回目は、福岡へ逃げた時、そして、今」
「それを言うなら、組長さんもじゃない?」

組長勇一が、時枝に掘られる様が、潤の脳裏に焼き付いていた。

「そうだね。兄さんは二回目だけど。一回目の方が面白かった。意外と兄さんビビリだし」
「それは、今日でもわかった。『優しくしろっ』て悲壮な声だったし。…でも良かった」

やっと元の鞘に収まったと、潤は素直に嬉しかった。
潤にとって、黒瀬はもちろんだが、上司でもある時枝も、義理の兄弟の関係の勇一も家族だった。
時枝が欠けても嫌だし、勇一が欠けるのも嫌だった。
今、潤と黒瀬がこうして二人でいられるのも、二人を結びつけた時枝と、黒瀬と潤の心が壊れそうになったとき非情な方法ではあったが助けてくれた勇一のおかげなのだ。

「潤…」

目の縁を赤くする潤の手に、黒瀬が自分の手を重ねた。

「はは、ごめん…何泣いてるんだろ…俺」
「やはり、潤を泣かせたあの二人には、お仕置きしないといけないね」
「ええっ、駄目だよ…俺、哀しい訳じゃないし…嬉しいんだよ?」
「じゃあ、嬉しさのお裾分けを、ユウイチにも、ね」
「黒瀬には、敵わないや」

ちょっと、失礼するよ。と黒瀬が潤の手の甲に口付けをし、席を立つ。
ユウイチが出ないようにと閉めていたダイニングのドアを開けてやる。
キャンキャンと、吠えながらユウイチが主を助けねば跳んでいく。
その後ろを黒瀬が付いていき、客間のドアも静かに開けた。
タイミングがいいのか悪いのか…
まさに時枝と勇一は絶頂を迎えた時だった。
お互いの名前を口にし、時枝と勇一が同時に爆ぜたその時、ユウイチが吠えながら客間に入ってきた。
黒瀬はというと、その後の状況を潤と楽しもうと、ユウイチが客間に入ったのを見届けるとドアを閉め、ダイニングに足早に戻った。

「何だっ、このクソ犬っ!」

突然の闖入者に、勇一が敵意剥き出しだ。

「ユウイチだ。クソ犬じゃない」

時枝の血の匂いと精液の匂いのかぎ取ったのか、ユウイチが凄い剣幕で勇一に対して吠える
勇一が時枝を酷い目に遭わせているとしか、ユウイチには思えないようだ。

「ウ~~~~~~ッ」

ピョンとベッドの上に飛び乗ると、勇一を威嚇し始めた。 
今にも飛びかかりそうな勢いだ。

「勇一、分っていると思うが…ユウイチを苛めると許さないからな」
「今、愛を確かめあった俺様より、このクソ犬の方が大事だとか言うなよ、勝貴」
「どっちが大事だとか言う問題じゃないだろ? 小動物を苛めるようなヤツが俺の伴侶とは、あまりに情けない」

どけ、と時枝が自分の中に収まったままの勇一を突き飛ばした。

「ユウイチ、吠えてないで、こっちへ来なさい」

子犬のユウイチが、勝ち誇ったような目を勇一に向けると、時枝の方へ跳んで行く。

「大丈夫だから。ユウイチ、お前の名前は、あいつから取ったんだ。仲良くしろよ。人間の勇一もだ」
「勝貴~、そりゃないだろ?」
「出来ないっていうのか? そんな度量の狭い男だったのか、お前ってヤツは」

そう時枝に言われてしまえば、腹の中で考えていることは別にして、可愛がるフリぐらいはしないとまずかろうと、勇一がユウイチの頭に手を伸ばす。

「噛みつきやがったっ! コノヤローッ、人が下手に出れば、ふざけやがって。ぶっ殺して、剥製にするぞっ!」

時枝がユウイチを自分の汗ばんだ胸に載せ、勇一から守るように抱き締めた。

「勇一、降りろ。ベッドから降りて、『待て』でもしてろ。お前みたいな心の狭いヤツと一緒に寝るのはゴメンだ。反省するまで床からユウイチの健気で可愛い姿でも、眺めてろ」

皮膚の攣る足を振り上げ、時枝は勇一を蹴飛ばしベッドから落とした。

「なんだよ、さっさきまで嬉しい…って泣いてたくせによ…ご主人さまを蔑ろにするって…どういう了見だよ…」

ブツブツブツと、勇一が客間のカーペットを毟りながら文句を垂れた。

「なんか、言ったか?」

時枝が、感極まり涙を流しながら勇一と睦み合ったのはつい先程のことだ。
以前のように自分の前で君臨する時枝を、勇一は好ましく思いながら、そのキッカケが子犬のユウイチだということが気に入らない。
どうも、自分の地位の方が、ユウイチより低い気がする。

「ユウイチ、舐めていいぞ」

時枝のその言葉に勇一が、まさか、と顔を上げた。

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秘書の嫁入り 夢(25)

「だから、泣くなって」
「…泣いてないっ、」
「ふ~ん、泣いてないねぇ、じゃあ、啼かせてやるか」

最初の一撃で裂けた箇所から出血しているのか、滑りはよくなった。

「やっぱり、ココが一番だって、俺の息子が言ってるぞ」
「―――ぅうッ」

しかし、比例して痛みは酷くなる一方だ。
時枝の顔が歪むが、お構いなしに勇一が責め立てる。

「気持ちイイ。勝貴、最高だ。お前の血、ローションより、機能するな。今度から、毎回、解すの止めようか?」
「――ぁあっ、バカ…たれっ、…変、態ッ、…クソッ…男なら、…相手も悦ばせろッ!」
「だって、痛い方が、感じるだろ? 酷くされたがってるの、お前だろ? 普通、これだけ裂ければ、痛みで萎えるっつうの。それなのに、何だコレ?」

勇一が時枝の勃起した中心を指で弾いた。

「福岡に迎えに行ったときも、酷くしたら悦んだよな? 任せとけ。可愛い勝貴ちゃんの為に、俺様ちゃんとSMのお勉強してやるから。武史にでもご教授願おう」
「…しなくてっ、…いいっ。この…、どアホがッ…はあ、はあ…勇一ィ……」
「どうした?」
「―――ちょっと、…止めてくれっ、頼む」

息切れしながら、時枝が真剣な眼差しを向けるので、勇一が腰の動きを止めた。
静止した勇一の雄を時枝がギュッと出せる力全てを出しきって締め付けた。

「オイ、勝貴」
「勇一が、俺の中にいる」
「ああ、勝貴の中で、今、締め付け喰らってる」
「……勇一…、」

時枝が腕を伸ばし、勇一の背に手を掛けると、グイッと自分の胸に勇一を引き寄せた。
肌と肌が密着し、お互いの鼓動が聞こえる。

「嬉しい……んだっ、」
「勝貴」

勇一が、顔を上げ、優しく時枝を見つめる。

「……どんな目に遭っても…、お前だけ……勇一だけなんだ……好きだ」
「当たり前だ。俺がこんなに勝貴を愛しているんだ。嫌われてなるものか」
「……もう、この感触は、ないのかと…思っていた」

時枝が一旦緩め、また締め付けた。

「そんなわけないだろ。俺達はもう、セフレでもセックス込みの親友でもなく、夫婦なんだから……って、籍とかはまだだけど」
「…あの話は…」

時枝の顔が陰る。

「オイオイ、忘れてないよな? 俺の伴侶となるって、皆にも紹介しただろ」
「…勇一、…いいのか? 俺はお前の弱点でもあるんだぞ」
「ば~か、勝貴がいない俺の方が、ぐずぐずで駄目人間なんだよ。また、何かに巻き込むかも知れない。それでも、俺はお前を離さないからな。最悪な人間に捕まったと、諦めろ」
「…もう、最悪だな…。痛みでも萎えないぐらい、嬉しいんだから…武史達のことは言えなくなった。きっと、シーツ血だらけだ……」

すでにグチャグチャの時枝の顔に更に涙が追加される。
声も鼻声で、掠れていた。

「流しすぎて血が足りなくなったら、輸血でも何でもしてやるから、安心しろ」
「…大袈裟なヤツ…」

勇一が重なった時枝の背中に手を入れ、座位になるよう自分の上半身と一緒に時枝の上半身を起した。

「最高に感じさせてやる」
「…深い」
「動くぞ」

返事の代わりに時枝がコクリと頷いた。

 

キャンキャンと、ユウイチが食事中の潤の足元で吠えている。

「ユウイチ、時枝さんは苛められているんじゃないよ」

内線のスピーカーから聞こえる時枝の苦しげな喘ぎ声に、ご主人の一大事とユウイチが潤に訴えているのだ。

「これでも食べて落ち着きなさい」

黒瀬がユウイチの皿に、海老の天ぷらを入れてやるが、見向きもしない。

「黒瀬、どうする? ユウイチ、ゲージに入れようか?」
「時枝の所に行かせれば?」
「ええ~、だって、今あの二人……」

耳に届く時枝の嬌声と勇一の荒い息づかいを考えると、一番邪魔されたくない所だろう。

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秘書の嫁入り 夢(24)

「その涙はイヤだからじゃないよな?」
「…勇一、俺は……」
「その震えは、期待からだよな? 初めての時より、初々しいなんて、お前、卑怯だぞ」
「……本当に、するのか…」
「ったく、人のケツ掘った人間がナニ言ってんだ? 覚悟いいな」
「……っ!」

勇一が時枝の唇を噛みつくように襲った。
ずっと欲しかったのだ。
自分に欲情し、求めてくれる勇一が。
そういう劣情込みの愛情が欲しかったのだ。
優しい同情心は時枝を更に傷付けただけだった。
時枝が襲ったことを根に持っているように、倍返しのような激しい口付けだった。

「…あぅ…」

一旦、勇一が離れる。
離れても、二人の唇を光る糸が結んでいた。

「これ、強姦か?」

意趣返しの質問が時枝に投げつけられた。

「……ああ…そうだな…。強姦魔に襲われるのも……悪くない……それが勇一ならばな」
「すげえこと、言うよな、勝貴は。ははは、じゃあ、その震えは期待じゃなく怯えか?」

嬉しくて、嬉しくて……だが、久しぶりの雄の荒々しさを見せる勇一に、時枝の身体は羞恥と期待で震えていた。

「当たり前だろ……俺は非力な子羊だからな……」
「嘘つきめ。非力な子羊は、普通、オオカミを襲ったりしないものだ」
「ぁぁあう…」

オオカミ勇一が、子羊時枝の乳首をガリッと噛んだ。
そして、また時枝の唇を貪り始める。
ジンジンと噛まれた乳首が痛かった。
疼痛を感じながらの激しい口付けは、時枝の身体に変化をもたらせた。
口付けの最中、上に乗っていた勇一から、先程時枝が放出したものが垂れてきて、それが時枝の下腹部、特に形を変えつつある中心を濡らしていた。
わざとだった。
そこに垂れるよう、勇一が狙ったのだ。

「…勇一っ、…垂れてる」
「気持ちイイだろ? 温かくてヌルヌルしている」

勇一の体内にあったので、掌で温めたローションより、温度が高かった。

「体内で、時枝のジュースを飲めて結構ぐっと来たぜ」
「…バカ」

濡れた時枝の竿に勇一が自分の猛ったモノを絡めると、そのまま数回擦り合せた。
直に感じる勇一の硬度が時枝は嬉しかった。
勇一が、自分に欲情している事実を自分の雄で感じるのだ。
早く、受け入れたかった。

「俺の硬いだろ? 浮気者をお仕置きするには、いい硬さだと思わないか?」
「…お仕置きって、浮気者は、勇一だっ!」
「はいはい、俺は浮気者です。だから、ケツ掘らしてやっただろ。俺はお仕置きされたぜ? はい、泣かない……もちろん、嬉し泣きだよな、勝貴ちゃん?」
「…ぐっ、…ウルセ~…、バカ勇一ッ…、散々人を、悩ませやがって……ヤルなら、さっさとやれ……んぐっ、この、根性無しッ」

どこかで聞いたようなフレーズを、ぐずぐずの時枝が吐く。

「では、ご期待に応えましょう」

勇一がズズッと下がり、時枝の太腿を割ってその間に座を取る。
時枝の膝を曲げ、更に割り開く為に、時枝の曲げた脚をグッと押し上げた。

「…痛い…バカっ、…優しく扱えっ」

火傷した皮膚が、突っ張って痛いのだ。

「神経が残っていることか、それとも周辺の皮膚が攣るのか……武史の背中より、色が凄いな…これ、どうだ」

曲げた膝を上に伸ばしV字に開脚させると、勇一が紫に変色した腿を抱え込み舌を這わせた。

「…ぁ、……そんな所、舐めるな…」

他の皮膚より、そこは低温だった。
そこに勇一の高温の舌が蛇のように動く。

「…擽ったいっ」
「感じちゃう、だろ」

肉が凹凸を刻んでいるが、皮膚自体は毛穴もなくツルっとしている。
焼け爛れた皮膚は移植をしない限り、醜い形状が治ることはないだろう。

「…イヤじゃないのか、勇一…、ソコは…」

何があったか一番分る場所なんだ、それを見てお前は萎えないのか…と、胸の裡で時枝は続けた。

「これからは、ココを愛撫するのは、俺だけだからな。あの変なワン公に舐めさせるんじゃねえぞ」

写真ことを勇一は根に持っていた。
そのことについて、あの犬を躾直さなければとまで考えている。

「…分ったから…、勇一っ、早く、」

時枝は、早く雄の勇一と繋がりたいのだ。
時間が経てば、勇一が萎えるのではないか、欲情が冷めるのではないかと、不安が頭を擡げるのだ。

「挿れてだろ。急かしたこと、後悔させてやる」
「ぁ、―――っ、ったぁああっ…」

突然、脳天に突き抜けるような激しい一撃を喰らった。

「あ、わりぃ、解すの忘れた」
「…わざと、…だろっ! …この…ばかっ」

怒っている素振りを見せる時枝だったが、涙に濡れる双眸は幸福の色に染まっていた。

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