「だから、泣くなって」
「…泣いてないっ、」
「ふ~ん、泣いてないねぇ、じゃあ、啼かせてやるか」
最初の一撃で裂けた箇所から出血しているのか、滑りはよくなった。
「やっぱり、ココが一番だって、俺の息子が言ってるぞ」
「―――ぅうッ」
しかし、比例して痛みは酷くなる一方だ。
時枝の顔が歪むが、お構いなしに勇一が責め立てる。
「気持ちイイ。勝貴、最高だ。お前の血、ローションより、機能するな。今度から、毎回、解すの止めようか?」
「――ぁあっ、バカ…たれっ、…変、態ッ、…クソッ…男なら、…相手も悦ばせろッ!」
「だって、痛い方が、感じるだろ? 酷くされたがってるの、お前だろ? 普通、これだけ裂ければ、痛みで萎えるっつうの。それなのに、何だコレ?」
勇一が時枝の勃起した中心を指で弾いた。
「福岡に迎えに行ったときも、酷くしたら悦んだよな? 任せとけ。可愛い勝貴ちゃんの為に、俺様ちゃんとSMのお勉強してやるから。武史にでもご教授願おう」
「…しなくてっ、…いいっ。この…、どアホがッ…はあ、はあ…勇一ィ……」
「どうした?」
「―――ちょっと、…止めてくれっ、頼む」
息切れしながら、時枝が真剣な眼差しを向けるので、勇一が腰の動きを止めた。
静止した勇一の雄を時枝がギュッと出せる力全てを出しきって締め付けた。
「オイ、勝貴」
「勇一が、俺の中にいる」
「ああ、勝貴の中で、今、締め付け喰らってる」
「……勇一…、」
時枝が腕を伸ばし、勇一の背に手を掛けると、グイッと自分の胸に勇一を引き寄せた。
肌と肌が密着し、お互いの鼓動が聞こえる。
「嬉しい……んだっ、」
「勝貴」
勇一が、顔を上げ、優しく時枝を見つめる。
「……どんな目に遭っても…、お前だけ……勇一だけなんだ……好きだ」
「当たり前だ。俺がこんなに勝貴を愛しているんだ。嫌われてなるものか」
「……もう、この感触は、ないのかと…思っていた」
時枝が一旦緩め、また締め付けた。
「そんなわけないだろ。俺達はもう、セフレでもセックス込みの親友でもなく、夫婦なんだから……って、籍とかはまだだけど」
「…あの話は…」
時枝の顔が陰る。
「オイオイ、忘れてないよな? 俺の伴侶となるって、皆にも紹介しただろ」
「…勇一、…いいのか? 俺はお前の弱点でもあるんだぞ」
「ば~か、勝貴がいない俺の方が、ぐずぐずで駄目人間なんだよ。また、何かに巻き込むかも知れない。それでも、俺はお前を離さないからな。最悪な人間に捕まったと、諦めろ」
「…もう、最悪だな…。痛みでも萎えないぐらい、嬉しいんだから…武史達のことは言えなくなった。きっと、シーツ血だらけだ……」
すでにグチャグチャの時枝の顔に更に涙が追加される。
声も鼻声で、掠れていた。
「流しすぎて血が足りなくなったら、輸血でも何でもしてやるから、安心しろ」
「…大袈裟なヤツ…」
勇一が重なった時枝の背中に手を入れ、座位になるよう自分の上半身と一緒に時枝の上半身を起した。
「最高に感じさせてやる」
「…深い」
「動くぞ」
返事の代わりに時枝がコクリと頷いた。
キャンキャンと、ユウイチが食事中の潤の足元で吠えている。
「ユウイチ、時枝さんは苛められているんじゃないよ」
内線のスピーカーから聞こえる時枝の苦しげな喘ぎ声に、ご主人の一大事とユウイチが潤に訴えているのだ。
「これでも食べて落ち着きなさい」
黒瀬がユウイチの皿に、海老の天ぷらを入れてやるが、見向きもしない。
「黒瀬、どうする? ユウイチ、ゲージに入れようか?」
「時枝の所に行かせれば?」
「ええ~、だって、今あの二人……」
耳に届く時枝の嬌声と勇一の荒い息づかいを考えると、一番邪魔されたくない所だろう。