秘書の嫁入り 夢(24)

「その涙はイヤだからじゃないよな?」
「…勇一、俺は……」
「その震えは、期待からだよな? 初めての時より、初々しいなんて、お前、卑怯だぞ」
「……本当に、するのか…」
「ったく、人のケツ掘った人間がナニ言ってんだ? 覚悟いいな」
「……っ!」

勇一が時枝の唇を噛みつくように襲った。
ずっと欲しかったのだ。
自分に欲情し、求めてくれる勇一が。
そういう劣情込みの愛情が欲しかったのだ。
優しい同情心は時枝を更に傷付けただけだった。
時枝が襲ったことを根に持っているように、倍返しのような激しい口付けだった。

「…あぅ…」

一旦、勇一が離れる。
離れても、二人の唇を光る糸が結んでいた。

「これ、強姦か?」

意趣返しの質問が時枝に投げつけられた。

「……ああ…そうだな…。強姦魔に襲われるのも……悪くない……それが勇一ならばな」
「すげえこと、言うよな、勝貴は。ははは、じゃあ、その震えは期待じゃなく怯えか?」

嬉しくて、嬉しくて……だが、久しぶりの雄の荒々しさを見せる勇一に、時枝の身体は羞恥と期待で震えていた。

「当たり前だろ……俺は非力な子羊だからな……」
「嘘つきめ。非力な子羊は、普通、オオカミを襲ったりしないものだ」
「ぁぁあう…」

オオカミ勇一が、子羊時枝の乳首をガリッと噛んだ。
そして、また時枝の唇を貪り始める。
ジンジンと噛まれた乳首が痛かった。
疼痛を感じながらの激しい口付けは、時枝の身体に変化をもたらせた。
口付けの最中、上に乗っていた勇一から、先程時枝が放出したものが垂れてきて、それが時枝の下腹部、特に形を変えつつある中心を濡らしていた。
わざとだった。
そこに垂れるよう、勇一が狙ったのだ。

「…勇一っ、…垂れてる」
「気持ちイイだろ? 温かくてヌルヌルしている」

勇一の体内にあったので、掌で温めたローションより、温度が高かった。

「体内で、時枝のジュースを飲めて結構ぐっと来たぜ」
「…バカ」

濡れた時枝の竿に勇一が自分の猛ったモノを絡めると、そのまま数回擦り合せた。
直に感じる勇一の硬度が時枝は嬉しかった。
勇一が、自分に欲情している事実を自分の雄で感じるのだ。
早く、受け入れたかった。

「俺の硬いだろ? 浮気者をお仕置きするには、いい硬さだと思わないか?」
「…お仕置きって、浮気者は、勇一だっ!」
「はいはい、俺は浮気者です。だから、ケツ掘らしてやっただろ。俺はお仕置きされたぜ? はい、泣かない……もちろん、嬉し泣きだよな、勝貴ちゃん?」
「…ぐっ、…ウルセ~…、バカ勇一ッ…、散々人を、悩ませやがって……ヤルなら、さっさとやれ……んぐっ、この、根性無しッ」

どこかで聞いたようなフレーズを、ぐずぐずの時枝が吐く。

「では、ご期待に応えましょう」

勇一がズズッと下がり、時枝の太腿を割ってその間に座を取る。
時枝の膝を曲げ、更に割り開く為に、時枝の曲げた脚をグッと押し上げた。

「…痛い…バカっ、…優しく扱えっ」

火傷した皮膚が、突っ張って痛いのだ。

「神経が残っていることか、それとも周辺の皮膚が攣るのか……武史の背中より、色が凄いな…これ、どうだ」

曲げた膝を上に伸ばしV字に開脚させると、勇一が紫に変色した腿を抱え込み舌を這わせた。

「…ぁ、……そんな所、舐めるな…」

他の皮膚より、そこは低温だった。
そこに勇一の高温の舌が蛇のように動く。

「…擽ったいっ」
「感じちゃう、だろ」

肉が凹凸を刻んでいるが、皮膚自体は毛穴もなくツルっとしている。
焼け爛れた皮膚は移植をしない限り、醜い形状が治ることはないだろう。

「…イヤじゃないのか、勇一…、ソコは…」

何があったか一番分る場所なんだ、それを見てお前は萎えないのか…と、胸の裡で時枝は続けた。

「これからは、ココを愛撫するのは、俺だけだからな。あの変なワン公に舐めさせるんじゃねえぞ」

写真ことを勇一は根に持っていた。
そのことについて、あの犬を躾直さなければとまで考えている。

「…分ったから…、勇一っ、早く、」

時枝は、早く雄の勇一と繋がりたいのだ。
時間が経てば、勇一が萎えるのではないか、欲情が冷めるのではないかと、不安が頭を擡げるのだ。

「挿れてだろ。急かしたこと、後悔させてやる」
「ぁ、―――っ、ったぁああっ…」

突然、脳天に突き抜けるような激しい一撃を喰らった。

「あ、わりぃ、解すの忘れた」
「…わざと、…だろっ! …この…ばかっ」

怒っている素振りを見せる時枝だったが、涙に濡れる双眸は幸福の色に染まっていた。