秘書の嫁入り 夢(27)

勇一の目に飛び込んできたのは、時枝の顔を尻尾を振りながら舐めるユウイチの姿だった。
泣いた痕跡を舐め取っているようだ。
顔ぐらいならまだ許せる範囲だと思っていた勇一は、次のユウイチの行動で『絶対、剥製してやる』と考えを改めた。
ユウイチが時枝の上を移動し、今度は胸部一体を舐めだした。

「こら、くすぐったい…ユウイチ、慌てない…そうそう、良い子だ……あぁっ、駄目だって…そこは…」

最初、時枝の肌に粒になって浮かぶ汗を舐めていたユウイチが、時枝の乳首にしゃぶりだした。

「…ミルクは出ないぞ…、まだまだ、赤ちゃんだな…あぅ、引っ張るなって…」
「我慢ならねーッ。退けろそのクソ犬ッ! 犬が人間さまの乳首吸うなんて、聞いたことねえっ、分っててやってるんだろ、エロ犬めっ!」

あのDVDに映っていた時枝を犯した犬でも、愛撫するようなことはなかった。
興奮して、時枝を犯すことだけに没頭していた。

「勇一、この子はまだ子どもなんだ。発情している訳じゃないっ。母親が恋しいだけなんだろ。邪な目で見るな」
「そうかよ。悪かったよ。俺が、母親が恋しいって言えば、お預けは無しか? あ? 勝貴ママ、俺にもオッパイ吸わせろっ!」

勇一が蹴落とされた床の上からベッドへ戻ると、ユウイチが口にしてないもう片方の乳首を口に含んだ。

「なっ、駄目だっ、…あぁあぁ…敏感になってるのに…」

ザラザラしたユウイチの舌と、肉厚で滑らかな勇一の舌が尖りを弄る。
双方が別々のリズムで時枝の乳首を吸引する。
二つの舌から与えられる甘痛い快感に、時枝が溜まらず悶えだした。

「ぁあっ、こらっ、二人のゆう…いちぃ…、引っ張るな…ぁ、あ…いいっ、すごい…」

緩急の快感で時枝の雄に熱が籠り、先程まで勇一が収まっていた場所も疼く。
ユウイチが、ふん、と鼻を鳴らし、勇一の視界から消えた。
どこに行きやがったと時枝の乳首を咥えたまま、視線だけを移動すると、

「あっ、…ユウ…イチッ、だから…そこは…今日は、カスタードクリーム…ないのに…」

カスタードクリーム? 
時枝の意味不明な言葉と共に、時枝の大事な部分をペロペロと横から舐めるユウイチの姿が、勇一の視線の先に飛び込んだ。

「あの写真は、日常だったというのかっ! 勝貴、どういうことだっ!」
「怒鳴るなっ、…バカッ、…おしゃぶり代りに決まってる…だろ。子犬用…のガムと…一緒だ……但し…俺は…感じてしまうけど…」

バター犬じゃないかっ!

「クソ犬がどういうつもりか知らないが、勝貴の方が…」

ユウイチの愛撫に嵌っているんじゃないか…と、勇一はガックリと来た。
対極に身を落としてしまったのかと、勇一はショックさえ感じる。
恐怖心が和らいだことは嬉しいが、この先、俺だけじゃ満足できないんじゃないか、と変な不安が勇一の中に沸く。

「…勇一、お前…そろそろ、仕事しろっ!」
「は?」
「…見て見ろ、ユウイチが…俺の尻…舐めだしたじゃないか…あっ、…ユウイチ…ソコは、駄目だって…教えただろ?…ああ、血を、舐め取ってくれたのか……良い子だぁ」

勇一がショックを受けている間、ユウイチの興味の先は時枝の雄芯から尻の周りのこびり付いた血に移っていた。

「…勇一っ、早くっ! …ユウイチが、懸命にやってくれてるのに、何を遊んでいる。このまま、ユウイチに俺の中まで渡す気じゃないだろうな?」

そうか、と勇一は時枝の真意に気付いた。
ユウイチはダシだった。

「お前、ホント、俺のこと惚れてるよなぁ」
「バカ、今更なこと言うなっ、ユウイチにヤキモチ妬く暇があったら、やることやれ。ユウイチ相手に負けるようなテクじゃ、俺はユウイチを取るぞ! この、浮気者ッ!」

わざと見せつけたかったのだ。
こんなにも仲がいいんだと。
あの写真は日常になりつつあるぞ、と。
今度また逃げるなら、自分は動物にだって慰めてもらうことができるんだ、と。
逃げることは許さないと言っているのだ。
例え時枝自身が逃げようとも、追いかけてこい、と言っているのだ。

「そこまで言われちゃあ、頑張らない訳にはいかないな。退け。そこは俺様専用の場所だ。お前はせいぜいオッパイでも吸ってろ」

乳首ぐらい、吸わせてやるさ。
それで興奮が増すなら、バイブレーターと同じだ。
ユウイチを時枝の腹の上に置き、ユウイチが舐めていた場所を今度は人間の勇一が舐める。

「あ~あ、このクソ犬と間接キスかよ。あとで、口直しさせろよ」
「ぐずぐず言ってないで、さっさと挿れやがれっ、」
「口、パクパク開けて、や~らしい眺めだな。食付けよ」

ユウイチに愛撫される時枝の姿だけで、勇一の雄は成長している。
猛ったモノを宛がい、時枝の脚をV字に肩に担ぐと、体重を掛け押し込んだ。

「…イイッ! 勇一ッ、…最高…」
「クソ犬、ママのオッパイ、吸ってやれよ」

勇一が合図だというように、口でチュッ、チュッと音をたててやる。
さっきまで、ライバル視していた一匹と一人は、この瞬間から共犯者になった。
任せとけという目で勇一を一瞥し、ユウイチは時枝の乳首を甘噛みしながら、吸い始めた。

「ぁあう、同時に…って… ――あ、やっ」
「ん? イヤなのか? 止めるか」
「――違うっ、…分ってて…いう、…なっ。あぁあ、だめっ、…悪い子に…悪い男だ……良すぎてっ―――ぁああっ」

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秘書の嫁入り 夢(26)

「ふふ、凄く盛り上がっているし。時枝、サードバージン喪失って所じゃない?」
「なにそれ? 三回目ってこと?」
「そう。一回目は、文字通り、初めての時で、二回目は、福岡へ逃げた時、そして、今」
「それを言うなら、組長さんもじゃない?」

組長勇一が、時枝に掘られる様が、潤の脳裏に焼き付いていた。

「そうだね。兄さんは二回目だけど。一回目の方が面白かった。意外と兄さんビビリだし」
「それは、今日でもわかった。『優しくしろっ』て悲壮な声だったし。…でも良かった」

やっと元の鞘に収まったと、潤は素直に嬉しかった。
潤にとって、黒瀬はもちろんだが、上司でもある時枝も、義理の兄弟の関係の勇一も家族だった。
時枝が欠けても嫌だし、勇一が欠けるのも嫌だった。
今、潤と黒瀬がこうして二人でいられるのも、二人を結びつけた時枝と、黒瀬と潤の心が壊れそうになったとき非情な方法ではあったが助けてくれた勇一のおかげなのだ。

「潤…」

目の縁を赤くする潤の手に、黒瀬が自分の手を重ねた。

「はは、ごめん…何泣いてるんだろ…俺」
「やはり、潤を泣かせたあの二人には、お仕置きしないといけないね」
「ええっ、駄目だよ…俺、哀しい訳じゃないし…嬉しいんだよ?」
「じゃあ、嬉しさのお裾分けを、ユウイチにも、ね」
「黒瀬には、敵わないや」

ちょっと、失礼するよ。と黒瀬が潤の手の甲に口付けをし、席を立つ。
ユウイチが出ないようにと閉めていたダイニングのドアを開けてやる。
キャンキャンと、吠えながらユウイチが主を助けねば跳んでいく。
その後ろを黒瀬が付いていき、客間のドアも静かに開けた。
タイミングがいいのか悪いのか…
まさに時枝と勇一は絶頂を迎えた時だった。
お互いの名前を口にし、時枝と勇一が同時に爆ぜたその時、ユウイチが吠えながら客間に入ってきた。
黒瀬はというと、その後の状況を潤と楽しもうと、ユウイチが客間に入ったのを見届けるとドアを閉め、ダイニングに足早に戻った。

「何だっ、このクソ犬っ!」

突然の闖入者に、勇一が敵意剥き出しだ。

「ユウイチだ。クソ犬じゃない」

時枝の血の匂いと精液の匂いのかぎ取ったのか、ユウイチが凄い剣幕で勇一に対して吠える
勇一が時枝を酷い目に遭わせているとしか、ユウイチには思えないようだ。

「ウ~~~~~~ッ」

ピョンとベッドの上に飛び乗ると、勇一を威嚇し始めた。 
今にも飛びかかりそうな勢いだ。

「勇一、分っていると思うが…ユウイチを苛めると許さないからな」
「今、愛を確かめあった俺様より、このクソ犬の方が大事だとか言うなよ、勝貴」
「どっちが大事だとか言う問題じゃないだろ? 小動物を苛めるようなヤツが俺の伴侶とは、あまりに情けない」

どけ、と時枝が自分の中に収まったままの勇一を突き飛ばした。

「ユウイチ、吠えてないで、こっちへ来なさい」

子犬のユウイチが、勝ち誇ったような目を勇一に向けると、時枝の方へ跳んで行く。

「大丈夫だから。ユウイチ、お前の名前は、あいつから取ったんだ。仲良くしろよ。人間の勇一もだ」
「勝貴~、そりゃないだろ?」
「出来ないっていうのか? そんな度量の狭い男だったのか、お前ってヤツは」

そう時枝に言われてしまえば、腹の中で考えていることは別にして、可愛がるフリぐらいはしないとまずかろうと、勇一がユウイチの頭に手を伸ばす。

「噛みつきやがったっ! コノヤローッ、人が下手に出れば、ふざけやがって。ぶっ殺して、剥製にするぞっ!」

時枝がユウイチを自分の汗ばんだ胸に載せ、勇一から守るように抱き締めた。

「勇一、降りろ。ベッドから降りて、『待て』でもしてろ。お前みたいな心の狭いヤツと一緒に寝るのはゴメンだ。反省するまで床からユウイチの健気で可愛い姿でも、眺めてろ」

皮膚の攣る足を振り上げ、時枝は勇一を蹴飛ばしベッドから落とした。

「なんだよ、さっさきまで嬉しい…って泣いてたくせによ…ご主人さまを蔑ろにするって…どういう了見だよ…」

ブツブツブツと、勇一が客間のカーペットを毟りながら文句を垂れた。

「なんか、言ったか?」

時枝が、感極まり涙を流しながら勇一と睦み合ったのはつい先程のことだ。
以前のように自分の前で君臨する時枝を、勇一は好ましく思いながら、そのキッカケが子犬のユウイチだということが気に入らない。
どうも、自分の地位の方が、ユウイチより低い気がする。

「ユウイチ、舐めていいぞ」

時枝のその言葉に勇一が、まさか、と顔を上げた。

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秘書の嫁入り 夢(25)

「だから、泣くなって」
「…泣いてないっ、」
「ふ~ん、泣いてないねぇ、じゃあ、啼かせてやるか」

最初の一撃で裂けた箇所から出血しているのか、滑りはよくなった。

「やっぱり、ココが一番だって、俺の息子が言ってるぞ」
「―――ぅうッ」

しかし、比例して痛みは酷くなる一方だ。
時枝の顔が歪むが、お構いなしに勇一が責め立てる。

「気持ちイイ。勝貴、最高だ。お前の血、ローションより、機能するな。今度から、毎回、解すの止めようか?」
「――ぁあっ、バカ…たれっ、…変、態ッ、…クソッ…男なら、…相手も悦ばせろッ!」
「だって、痛い方が、感じるだろ? 酷くされたがってるの、お前だろ? 普通、これだけ裂ければ、痛みで萎えるっつうの。それなのに、何だコレ?」

勇一が時枝の勃起した中心を指で弾いた。

「福岡に迎えに行ったときも、酷くしたら悦んだよな? 任せとけ。可愛い勝貴ちゃんの為に、俺様ちゃんとSMのお勉強してやるから。武史にでもご教授願おう」
「…しなくてっ、…いいっ。この…、どアホがッ…はあ、はあ…勇一ィ……」
「どうした?」
「―――ちょっと、…止めてくれっ、頼む」

息切れしながら、時枝が真剣な眼差しを向けるので、勇一が腰の動きを止めた。
静止した勇一の雄を時枝がギュッと出せる力全てを出しきって締め付けた。

「オイ、勝貴」
「勇一が、俺の中にいる」
「ああ、勝貴の中で、今、締め付け喰らってる」
「……勇一…、」

時枝が腕を伸ばし、勇一の背に手を掛けると、グイッと自分の胸に勇一を引き寄せた。
肌と肌が密着し、お互いの鼓動が聞こえる。

「嬉しい……んだっ、」
「勝貴」

勇一が、顔を上げ、優しく時枝を見つめる。

「……どんな目に遭っても…、お前だけ……勇一だけなんだ……好きだ」
「当たり前だ。俺がこんなに勝貴を愛しているんだ。嫌われてなるものか」
「……もう、この感触は、ないのかと…思っていた」

時枝が一旦緩め、また締め付けた。

「そんなわけないだろ。俺達はもう、セフレでもセックス込みの親友でもなく、夫婦なんだから……って、籍とかはまだだけど」
「…あの話は…」

時枝の顔が陰る。

「オイオイ、忘れてないよな? 俺の伴侶となるって、皆にも紹介しただろ」
「…勇一、…いいのか? 俺はお前の弱点でもあるんだぞ」
「ば~か、勝貴がいない俺の方が、ぐずぐずで駄目人間なんだよ。また、何かに巻き込むかも知れない。それでも、俺はお前を離さないからな。最悪な人間に捕まったと、諦めろ」
「…もう、最悪だな…。痛みでも萎えないぐらい、嬉しいんだから…武史達のことは言えなくなった。きっと、シーツ血だらけだ……」

すでにグチャグチャの時枝の顔に更に涙が追加される。
声も鼻声で、掠れていた。

「流しすぎて血が足りなくなったら、輸血でも何でもしてやるから、安心しろ」
「…大袈裟なヤツ…」

勇一が重なった時枝の背中に手を入れ、座位になるよう自分の上半身と一緒に時枝の上半身を起した。

「最高に感じさせてやる」
「…深い」
「動くぞ」

返事の代わりに時枝がコクリと頷いた。

 

キャンキャンと、ユウイチが食事中の潤の足元で吠えている。

「ユウイチ、時枝さんは苛められているんじゃないよ」

内線のスピーカーから聞こえる時枝の苦しげな喘ぎ声に、ご主人の一大事とユウイチが潤に訴えているのだ。

「これでも食べて落ち着きなさい」

黒瀬がユウイチの皿に、海老の天ぷらを入れてやるが、見向きもしない。

「黒瀬、どうする? ユウイチ、ゲージに入れようか?」
「時枝の所に行かせれば?」
「ええ~、だって、今あの二人……」

耳に届く時枝の嬌声と勇一の荒い息づかいを考えると、一番邪魔されたくない所だろう。

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秘書の嫁入り 夢(24)

「その涙はイヤだからじゃないよな?」
「…勇一、俺は……」
「その震えは、期待からだよな? 初めての時より、初々しいなんて、お前、卑怯だぞ」
「……本当に、するのか…」
「ったく、人のケツ掘った人間がナニ言ってんだ? 覚悟いいな」
「……っ!」

勇一が時枝の唇を噛みつくように襲った。
ずっと欲しかったのだ。
自分に欲情し、求めてくれる勇一が。
そういう劣情込みの愛情が欲しかったのだ。
優しい同情心は時枝を更に傷付けただけだった。
時枝が襲ったことを根に持っているように、倍返しのような激しい口付けだった。

「…あぅ…」

一旦、勇一が離れる。
離れても、二人の唇を光る糸が結んでいた。

「これ、強姦か?」

意趣返しの質問が時枝に投げつけられた。

「……ああ…そうだな…。強姦魔に襲われるのも……悪くない……それが勇一ならばな」
「すげえこと、言うよな、勝貴は。ははは、じゃあ、その震えは期待じゃなく怯えか?」

嬉しくて、嬉しくて……だが、久しぶりの雄の荒々しさを見せる勇一に、時枝の身体は羞恥と期待で震えていた。

「当たり前だろ……俺は非力な子羊だからな……」
「嘘つきめ。非力な子羊は、普通、オオカミを襲ったりしないものだ」
「ぁぁあう…」

オオカミ勇一が、子羊時枝の乳首をガリッと噛んだ。
そして、また時枝の唇を貪り始める。
ジンジンと噛まれた乳首が痛かった。
疼痛を感じながらの激しい口付けは、時枝の身体に変化をもたらせた。
口付けの最中、上に乗っていた勇一から、先程時枝が放出したものが垂れてきて、それが時枝の下腹部、特に形を変えつつある中心を濡らしていた。
わざとだった。
そこに垂れるよう、勇一が狙ったのだ。

「…勇一っ、…垂れてる」
「気持ちイイだろ? 温かくてヌルヌルしている」

勇一の体内にあったので、掌で温めたローションより、温度が高かった。

「体内で、時枝のジュースを飲めて結構ぐっと来たぜ」
「…バカ」

濡れた時枝の竿に勇一が自分の猛ったモノを絡めると、そのまま数回擦り合せた。
直に感じる勇一の硬度が時枝は嬉しかった。
勇一が、自分に欲情している事実を自分の雄で感じるのだ。
早く、受け入れたかった。

「俺の硬いだろ? 浮気者をお仕置きするには、いい硬さだと思わないか?」
「…お仕置きって、浮気者は、勇一だっ!」
「はいはい、俺は浮気者です。だから、ケツ掘らしてやっただろ。俺はお仕置きされたぜ? はい、泣かない……もちろん、嬉し泣きだよな、勝貴ちゃん?」
「…ぐっ、…ウルセ~…、バカ勇一ッ…、散々人を、悩ませやがって……ヤルなら、さっさとやれ……んぐっ、この、根性無しッ」

どこかで聞いたようなフレーズを、ぐずぐずの時枝が吐く。

「では、ご期待に応えましょう」

勇一がズズッと下がり、時枝の太腿を割ってその間に座を取る。
時枝の膝を曲げ、更に割り開く為に、時枝の曲げた脚をグッと押し上げた。

「…痛い…バカっ、…優しく扱えっ」

火傷した皮膚が、突っ張って痛いのだ。

「神経が残っていることか、それとも周辺の皮膚が攣るのか……武史の背中より、色が凄いな…これ、どうだ」

曲げた膝を上に伸ばしV字に開脚させると、勇一が紫に変色した腿を抱え込み舌を這わせた。

「…ぁ、……そんな所、舐めるな…」

他の皮膚より、そこは低温だった。
そこに勇一の高温の舌が蛇のように動く。

「…擽ったいっ」
「感じちゃう、だろ」

肉が凹凸を刻んでいるが、皮膚自体は毛穴もなくツルっとしている。
焼け爛れた皮膚は移植をしない限り、醜い形状が治ることはないだろう。

「…イヤじゃないのか、勇一…、ソコは…」

何があったか一番分る場所なんだ、それを見てお前は萎えないのか…と、胸の裡で時枝は続けた。

「これからは、ココを愛撫するのは、俺だけだからな。あの変なワン公に舐めさせるんじゃねえぞ」

写真ことを勇一は根に持っていた。
そのことについて、あの犬を躾直さなければとまで考えている。

「…分ったから…、勇一っ、早く、」

時枝は、早く雄の勇一と繋がりたいのだ。
時間が経てば、勇一が萎えるのではないか、欲情が冷めるのではないかと、不安が頭を擡げるのだ。

「挿れてだろ。急かしたこと、後悔させてやる」
「ぁ、―――っ、ったぁああっ…」

突然、脳天に突き抜けるような激しい一撃を喰らった。

「あ、わりぃ、解すの忘れた」
「…わざと、…だろっ! …この…ばかっ」

怒っている素振りを見せる時枝だったが、涙に濡れる双眸は幸福の色に染まっていた。

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秘書の嫁入り 夢(23)

「勝貴、感じるだろ? イッたばかりの俺のがムクムクと育っているのを。この子は、一番好きな場所をどこか知っているからなあ」

悪いな、と言うなり勇一が時枝を突き飛ばした。
時枝の身体が勇一から離れ、ソファからも落ち、ラグの上に転がった。
眼鏡はとっくの昔にラグの上だったが、幸い、眼鏡の上には落ちなかった。

「…痛いだろっ、」
「痛いぐらい、俺から酷くされるの好きなんだろ」

時枝の顔が、誰が見ても分るぐらい赤くなる。
勇一は腹に付いた白濁のモノを拭うこともなく、転がった時枝を肩に担ぐ。

「武史、客間借りるぞ。もちろん、文句ないよな?」
「ええ、ありませんよ。後片付けはして下さいよ。その様子じゃ、凄く汚れそうですからね。あと、内線のスイッチ、オンで」
「ああ、イイ声聞かせてやる」

雄々しい勇一の太腿には、時枝が勇一の中で出したモノが伝って降りていた。

「…組長さん、それ…先に流した方が」

潤が、後処理を勧めたが、勇一はニヤッと笑い、

「そんな勿体ないこと、できるか」

と、時枝を担いで出て行った。

「私達は先に食事にしよう。お腹空いてるよね?」
「ペコペコ……大丈夫かな…時枝さん」
「心配いらないよ。時枝、嬉しくて溜まらないんじゃない。多分、処女より乙女らしい反応しそう…ふふふ、素敵なBGM付きの晩餐といこう」

潤と黒瀬はダイニングへ、時枝を担いだ勇一は客間へと移動した。

「ここは、俺とお前の記念の部屋だったな」
「記念って…」
「覚えているだろう。ここで俺と勝貴は、初セックスだった」
「……恥ずかしいこと、言うな」
「お前、さっきまで散々、人を乱暴に掘っておいて、恥ずかしいも何もないだろうが。ほら、降りろ」

ドガッと、ベッドの上に勇一が担いでいた時枝を乱暴に放り投げた。

「俺は物じゃないぞ。丁寧に優しく扱え」

マットレスが時枝の体重を受けて沈むぐらい、激しく投げ付けられた時枝が抗議した。

「ウルセ―。優しくなんぞ、扱うはずねえだろ。優しくすれば『同情だ、愛してないんだ』て、俺のこの粘っこい愛を疑うくせによ。あげくの果てに、人のケツ掘りやがって」
「疑い? 勃起しなかったくせに…」
「ああ、悪かったよ。お前じゃなければ、傷付こうがどうしようが、俺の一物が反応しなくなるなんてことなかっただろうよ。しょうがないだろ。勝貴は、俺の一部なんだ。勝貴が傷付いていると、連鎖反応するんだよ」
「…なんだよ、その言い分…じゃあ、何か、もう俺が傷付いてないと思っているのか? だから、そんな状態なのか」

時枝が、天を仰ぐ勇一の雄芯を指さした。

「違うね。そんな浅い傷じゃないことぐらい、分ってるさ」

今度は勇一自身が、ベッドの上にダイブしてきた。
避けようとした時枝を組み敷いた。

「あれ以上、傷付けたくなかった。勝手に本能がストップかけてた。だが、違うって気付いただけだ。俺だけはお前を傷付けても良かったんだ」
「なんだ、その言い草は」
「お前が嫌がろうが、泣き喚こうが、お前は俺のモノだ。他の誰かに付けられた傷なんか、関係あるか。お前だって、さっき言ったじゃねえか。他の誰かと何しようが、意味がなかったって。俺がお前に遠慮する理由がないってことに、気付いただけだ。更に痛みを感じるなら、共有すればいいだけのことだろ?」
「人を、モノ扱いしやがってっ! 勝手なこと言うな」

時枝が、勇一を睨み付ける。
しかし、迫力に欠けた睨みだった。
水分タップリの池の中に沈んだ眼球で睨み付けられた勇一が、堪えきれず笑みを洩らした。
バカにしたのではなく、愛おしいのだ。

「可愛いヤツ。勝手なこと? 言うに決まってる。俺は勝手にしていいぐらいには、勝貴に愛されている。違うか?」
「違……わない」

時枝の目は既に洪水状態だった。

「ワン公に変なことさせたり、武史達と何やらしていたらしいな? そんな浮気行為するぐらいだから、覚悟は出来てるよな、勝貴ちゃん?」

勇一が時枝の腕を一本ずつ頭上に上げさせる。
片手で時枝の手首を二本一緒に縫止めた。

「分っていると思うが、俺のココが勃っているのは前立腺弄られたからじゃあないぜ。その分はもう一回出したからな」

目の縁を赤くし、頬を濡らす時枝の顔を勇一が獣の目で見下ろした。

「……本気…なのか?」

時枝の身体が小刻みに震えだした。
黒瀬には一度挿入されたが、勇一とはもう長い間身体を繋いでない。
イヤ、つい先程、繋いだことは繋いだが、受け入れてはいない。

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秘書の嫁入り 夢(22)

「やあ、兄さん。今晩は。ご招待した時間にはまだなってないようですが」

ソファの上では裸体の男二人が絡んでいる。

「時枝、食事の用意が済んでいないようだか、ふふふ、兄さんの身体を料理するのに、忙しそうですね」

黒瀬がコートを脱ぐと、潤に手渡した。
潤は、顔を上げられず下を向いたままだ。

「…武史か…はぁ、てめぇ…、後で…、覚えてろッ…勝貴、こらっ、ぁあうっ、ソコは」
「男の時枝も、悪くないでしょ? 実際、兄さんより時枝の方が男らしいんですよ」

黒瀬が、ツカツカと勇一と時枝の側に近づいた。
ソファの上の二人を観察するように見下ろした。

「時枝、兄さんの中はどう? 使ってないから、狭くてキュッと締め付けてくるんじゃない?」
「うるさい、武史、邪魔するなっ」

秘書モードゼロの時枝だった。
黒瀬のことを面と向って武史と呼ぶのは珍しい。

「おお、コワッ。時枝、酒臭い。な~るほどね。理性の箍が外れちゃったかな? ふふふ、潤おいで」

黒瀬が目を伏せ、赤い顔をした潤を呼び寄せる。

「こっちにおいで」

ソファのアームに黒瀬が腰を降ろすと、潤を膝の上に招いた。
勇一の頭の先に、二人は陣取った。

「兄さんのアソコ、見てごらん」

潤がゆっくり勇一の身体に視線を這わす。

「…勃ってる」

時枝のモノが前立腺を刺激しているのか、勇一の雄芯は見事に勃ち上がっていた。

「…はぁ、二人して、…見てるんじゃ…ねえ…あぅ、あ アッチ…行けっ!」
「いいじゃないですか。お二人の愛の交わりを鑑賞させて下さいよ」

しれっと黒瀬がかわす。

「…こらっ、勝貴も、…あぁああ、だから、手加減しろって…、 …何とか、言えよ」
「邪魔しないなら、別に構わん。見られて、やましい事をしている訳じゃない。ほら、イけよ、勇一」

潤は知らないが、時枝も散々女を喰ってきた人間だ。
童貞こそ勇一の謀らいで捨てたが、その後はどれだけ女と寝てきたか。
雄としてのテクニックだって、勇一以上に持った男だ。
受ける立場としての経験もある。
そんな時枝に責められれば、後ろの経験が乏しい勇一は、一溜まりもないだろう。

「時枝さん、凄い…別人みたい」
「でも、時枝、本当は兄さんに抱かれたいんだと思うよ。兄さんを身体で受け止めたいんだと思うけど。そうしてくれなかった兄さんへの恨み辛みが反動になっているんじゃない?」

勇一の経験が少ないと分っているくせに、激しく打ち込む時枝は、鬼気迫るものがある。
ズブッズブッという音が、潤と黒瀬の耳に届くくらい、激しく責められていた。

「…勝貴、…もう、いいだろっ、ぁあっ、こんなに乱暴にしなくても…お前が男だって、知ってるぞ……あっ、くそっ、」
「素直に、イケッ!」

どこにその体力があったのか、というぐらい時枝が腰を使っていた。
差込んだまま、円を描くように回す腰つきは卑猥そのものだ。
勇一が手を伸ばした。

「…抱かせろ」
「俺は、こっちの方がいい」

時枝が勇一の伸びた手を握った。
勇一としっかり両手を握りあったまま、時枝が最後の留めを刺した。
一刺し、勇一の身体を貫くように引いた腰を激しく突き入れた。

「っぐ、ふぅ…勝貴ッ!」

勇一の身体が大きくバウンドし、勇一の上向いた先から、白濁の物が数回に分けて放出された。

「ぁあっ、イイッ…良かった……」

バタンと時枝が勇一の上に沈む。

「――勝貴、気が済んだか?」
「……気が済むとかすまないとかの、問題じゃない……イテェ…足が攣る」
「ばぁか、無理するからだ。―――勝貴、お前だけ、俺を好き勝手にして、狡いと思わないか? …良い経験をさせてもらったよ。桐生の組長を掘るなんて、お前ぐらいだろうよ。さすが、勝貴だ。お前以外には絶対、尻など預けないが、お前にならいくら預けてもいい。が、それじゃあ、お前の気は済まないだろ?」
「…だから、言っただろ。気が済むとか…済まないの…話じゃ……」

時枝の様子がおかしい。
さっきまでの強気の時枝ではない。
発散したおかげで、酔いが醒め始めていた。
潤と黒瀬もそれを感じていた。
この先どうなるんだ、とコトが終わった二人から目が離せない。

「お陰様で、ご期待にお応えできそうだ。イヤ、犯り殺せそうなぐらいキている…」
「え? あっ、」

腹の下で蠢く物の存在を、時枝は感じた。

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秘書の嫁入り 夢(21)

「抱かせろ」
「…はい?」
「だ・か・せ・ろ」
「……えっと、勝貴、今なんて」

気のせいかなと、わざとらしく勇一が頭をポリポリと掻く。

「俺が、勇一を抱く。俺を抱けないなら、俺が抱く。文句あるか?」
「…いや、その…文句あるとかないとかじゃ、なくて…」
「俺のこと、同情じゃなく好きだよな」
「それは、もちろん…えっ」

そこは黒瀬宅のリビングだった。
確か、時枝は食事の準備をしていた。
そして、憤怒し逆上し、乗り込んできたのは勇一の方だった。
だが、今、切れモードなのは、むしろ時枝のほうだ。
勇一に対する不満と、抑圧された勇一への欲望が酒の力で噴きだしていた
時枝の頭にあるのは、食事の準備でもなければ、招待状の言い訳でもなければ、そこがどこだということでもなく、勇一を抱きたいという一念だけだった。
時枝が勇一を押し倒し、唇を塞いだ。
勇一が目を白黒泳がせている。
こんな展開を想像していたはずがない。

「一つだけ確認しておく」

荒々しく口内を犯された勇一が、はあ、はあと息を切らしている。

「これは強姦じゃないよな? 合意だよな、勇一?」

これが、あの勝貴なのか?
弱々しく、一人でいることを不安がって、子犬相手でも震えていた勝貴なのか?
本質は、男気溢れる芯の通った男だということはもちろん知っている。
しかし、拉致され戻ってきた以降の時枝と同じ人間とは勇一には思えなかった。
キツネに抓まれたような気がする。
悪夢とまでは言わないが、異様な夢の中にいるような気がする。

「…強姦じゃないが…」

本気で俺を掘るって言うのか?

「心配するな。優しくしてやる」

黒瀬と潤が帰宅する前に、時枝と勇一の一戦が始まった。

「ユウイチ、時枝さんは?」

帰宅した黒瀬と潤を出迎えたのは、ユウイチだけだった。

「組長さんも…これ、組長さんの雪駄(せった)だよね?」

エレベータを下りた場所に脱ぎ捨てられていたのは、本トカゲの雪駄だった。

「この趣味の悪さは兄さんの物に間違いないけど」
「組長さんが来ているにしては、静かだね」
「どうする? もしかしたら相討ちしてたりして…」
「・・・」

黒瀬は冗談のつもりで言ったのだが、潤の顔が一気に青くなる。
黒瀬とユウイチを残したまま、急に「どこだっ!」と叫びなら駆けだした。

「時枝さんっ! 組長さんっ!」

二人ともどこかにいるはずなのに、潤の呼びかけに答えないので、潤の不安が募る。
キッチンを真っ先に覗いたが、時枝の姿もユウイチの姿もなかった。
香ばしい匂いの天ぷらが皿の上に大量に盛られていたが、まだ途中なのか、中途半端に調理器具が出しっぱなしだ。
キッチンを出ると、ユウイチが尻尾を振って待っていた。 
付いて来いというように尻尾を振り、潤をチラ見しながら潤の前をスタスタと歩いて行く。
ユウイチの後を追うと、ユウイチがリビングのドアの前で止った。
そのあと、急に機嫌が悪くなり「ウーッ」と唸る。
潤を振り返り、ココだと教えるように吠えだした。

「リビングにいるんだね。二人とも?」

どうもそうらしい。
またユウイチがドアに向って唸りだした。
潤の耳にユウイチの唸り声でない何かが聞こえた。

「ユウイチ、少しだけ、シッ」

潤が自分の口に人差し指を当てると、ユウイチが唸るのを止めた。
すると――……

『…うっ、…はぁっ、……勝貴、優しく…しろっ…』
『――ココ、気持ちいいだろ』
『…慣れて…ないんだっ……』

これって、…まさか、あの二人…

「潤、兄さん達いた? どうした、赤い顔して」

黒瀬がやって来た。

「声がするんだけど」

ナニナニと、黒瀬がドアに耳を欹(そばだ)てる。

「しょうがない二人だ。私の演出無しで始めてしまって。ふ~ん、時枝、頑張っているみたいだね。鑑賞させてもらおう」
「黒瀬ッ!」

潤が慌てて黒瀬を止めようとしたが、遅かった。
黒瀬はリビングのドアを開け中に入って行った。
止めようとした潤はバランスを崩し、前につんのめりながらリビングの中に入ってしまった。

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秘書の嫁入り 夢(20)

「ユウイチ、止めなさい」

時枝が勇一の手を振り払い、ユウイチの側に行く。

「ユウイチ、この人、俺の友達だから。不審者じゃないから、大丈夫です」

時枝の顔と勇一の顔を見比べ、ユウイチが吠えるのを止めた。
しかし、気を許したわけではないらしく、時枝の脚の後ろに身体を隠し、顔だけ出して勇一を睨み付けていた。

「…確認したくないが、こいつの名前は…俺と一緒か?」
「ああ、そうだ。おいで、ユウイチ」

手を前に広げてやると、床からユウイチがジャンプして時枝に飛びかかった。
そのまま、時枝はユウイチを抱いて身体を撫でてやる。
動物の本能で時枝と勇一のただならぬ関係が分るのか、優越感に浸ったような視線をユウイチが勇一に向けた。
時枝は自分のモノだという表情を見せる子犬が、勇一には憎々しい。

「…お前…子犬だって怯えていたのに」
「そうだな。こいつは俺の身体が好きらしいぞ……どこかの誰かさんと違って、いい仕事する。招待状にあった通りだ」
「話、聞かせろ。事と次第によっては、これで武史を刺す」

懐から勇一が取りだしたのは、佐々木から奪った短刀だった。

「…物騒なモノ持ち出すな。貸せ。俺が預かる。武史は、可愛い弟だろ。頭冷やせ」

時枝が勇一から短刀を取り上げると、ユウイチを抱いたままリビングから出て行った。
短刀をキッチンの流しの下に隠しユウイチに餌を与え、ここで大人しく待つように命じると、日本酒の入った湯飲みを持って勇一の元に戻った。

「これでも、呑め。少しは頭、冷えたか」

湯飲みを勇一に渡したが、呑む気配はない。

「冷えるはずないだろ。脳裏に画像が焼き付いているんだ。武史に無理矢理撮らされたんじゃないのか? あいつならしそうなことだ」
「言い出しっぺは武史だ。だが、無理矢理じゃない。俺が撮影をOKしたんだ。俺の痴態なら、勇一が飛んで来ると思ったからな……まさか、短刀持ち出すとは思わなかったけど、武史の策略通り、勇一は飛んで来た」
「普通に呼び出せば、いつでも来た。あそこまでする必要がどこにある。勝貴、自分で傷の上塗りのようなことするな」

日本酒に口を付けない勇一から時枝が湯飲みを奪い、自分が一気に呑んだ。

「あの画像を見て分っただろ。こっちに来て、ユウイチ限定でも俺は触れるし、発作に見舞われることもなくなった。傷の上塗りでどうして悪い? お前が相手してくれなくても、ユウイチはお前の代わりに俺を慰めてくれる……見せつけたかったんだ……悪いか?」

酒の力を借り、時枝が勇一に本音を漏らす。

「――勝貴」
「俺はな、勇一だけに勃っていたんだ…それなのに…今じゃ……勇一以外でも反応する身体だ……無理矢理開かれれば、外国人でも犬でも武史にも潤にも……強姦されても勃起したんだよ。お前見たんだろ。だけど、勃起することに何の意味がある? 射精することに意味があるか? 子作りでもないんだ。意味など無かった……恥じる必要もなかったんだっ。違うか!?」

時枝の話した内容に、聞き捨てならない単語があった。

「…武史や潤って・・・」
「うるさいッ! 問題はそこじゃないっ!」

久しぶりの酒が、時枝を解放していく。
怒っていたはずの勇一は、時枝の勢いに押され、疑惑をそれ以上確かめられなかった。

「お前と…勇一と寝るのとは、意味が違うんだよ。お前以外は…何されてもただの暴力や自慰と変わらないんだ」

分ってるのかと、時枝が勇一の胸ぐらを掴む。

「…はい」

逆らえない勇一が、小さく返事する。

「だがな、だからといって、お前がルミと浮気をしたことを許すかどうかは、別の問題だ。人が一生懸命トラウマを克服しようと頑張っている間、お前はっ!」
「…えっと…、それは…俺も…その」
「女の柔肌で快楽三昧だったらしいな」
「…だから、俺も…勝貴の為に…」
「俺の為に何だ? 嫉妬させようとしたのか? 俺には勃たないくせに、ルミには勃つって、見せつけたかったのか?」

完全に時枝の目は据わっていた。
ヤバイ、と勇一の本能が警鐘を鳴らした。

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秘書の嫁入り 夢(19)

「社長、携帯が鳴ってます」

まだ、黒瀬と潤は社内にいた。
会議が終わった直後で、社長室に戻る途中だった。

「ありがとう」

潤が預かっていた黒瀬の携帯を手渡す。

「佐々木からか」

黒瀬が一瞬ニヤッと笑みを浮かべ、携帯に出る。

「…あ、そう。じゃあ、先に着いてるかもしれないね。…まだ会社だけど。その様子じゃ、時間見てないよね…八時、て書いてたのに。ふふふ、兄さん、多分週末本宅には戻れないから…佐々木、あとを頼むよ…」

黒瀬が携帯を閉じると、潤が、組長さんのことかと、興味津々の目を向けた。

「招待状見て、事務所を飛び出したみたい。今頃もう、マンションに着いていると思うよ。私達も急ごう」

黒瀬がコートを羽織り、帰り支度を始めた。

「時枝さん、まだ夕飯の準備終わってないんじゃない?」

潤が終わったばかりの会議の資料を重要度別に仕分けし、キャビネットと黒瀬の鞄に入れていく。

「食事も兼ねての招待のつもりだったけど、兄さんそれどころではないみたいだよ」
「きっと、驚いたよね。犬を克服している時枝さんの姿を見て、感動してたりして」
「それがね、怒っているみたい。佐々木の短刀奪って出て行ったみたいだから」

動いていた潤の手が止る。

「黒瀬ッ! 早く帰ろうっ! 時枝さんとユウイチが心配だ」
「大丈夫。多分兄さんが怒っているの、私にだから。今頃、時枝に出迎えられて、拍子抜けしているんじゃない?」
「…どうして、黒瀬に怒るんだよ。短刀って、黒瀬を刺すつもりかよ……もしもの時は、俺が黒瀬守るからな」
「ふふ、ありがとう。でも、大丈夫だよ。それより、今夜は楽しい事が起りそうな予感がするよ。潤も早く帰り支度をしておいで」

楽観的な黒瀬とは裏腹に、潤は本当に大丈夫かなと、不安で一杯だった。
時枝は黒瀬宅のキッチンで天ぷらを揚げていた。
勇一が来るかもしれないと、勇一の好物の天ぷらを大皿に盛っていく。
来ない場合を考えて個別には盛らず、人数の調整がきくように、一つの皿に揚げた天ぷらを盛る。
海老にナスにサツマイモにシシトウに椎茸にイカにササミに…とかなりの種類だ。
八時と聞いていた。
まだまだ時間はあるが、落ち着かない時枝は料理に没頭していた。
時枝宅から付いて来たユウイチは、リビングの床に敷かれたラグの上で寝ている。
子犬だけあって、一旦寝るとなかなか起きない。
インターフォンが鳴ったので、火を止め、出た。
モニターに映っていたのは、勇一の逆上した顔だった。

『武史、コノヤロ―ッ、開けろっ!』
「勇一、大声を出すな。社長はまだ戻っていない」
『…え……、勝貴か……お前…武史の所で何をやってるんだ』

少しだけ、トーンが下がる。

「何って、夕飯の準備だ。勇一の分も用意してあるから、怒るな」
『空腹で、怒っている訳じゃないっ』
「じゃあ、なんでだ? 招待状か?」

他に怒る理由がないだろう。
さすがに喜ぶとは思わなかったが、ここまで逆上するとも時枝は思っていなかった。

『……お前…アレ…どういう事だっ!』

思い出したように、また勇一の声が大きくなる。

「どういうって、インターフォン越しに話すことじゃない。解錠したから、さっさと上がって来い」

どんな顔をして会えばいいのかと緊張していた時枝だったが、当の勇一が憤怒している為、変な緊張は溶けた。
それよりも怒り心頭の勇一を、どう宥めようかとそちらに気が向う。

「…勇一、久しぶり」

一週間と少ししかまだ経ってないというのに、半年振りぐらいに感じた。
すぐに触れたい衝動に駆られたが、勇一の怒りのオーラが強くて近寄れなかった。

「……勝貴、脚の具合はどうだ?」
「…皮膚は攣ってるが、歩くのに支障はない」
「…来い」

手首を掴まれ、引き摺られていく。

「勇一、痛い。…駄目だ、そっちは」

ユウイチが寝ているリビングの方へ行こうとするので、勝貴が慌てて止めた。

「武史達はいなんだろ。聞きたいことがある」
「だから、そこには……」

犬の優れた嗅覚と聴覚で、ユウイチは自分が知らない人間がいることを悟ったらしい。
眠っていたはずのユウイチが、突然吠えだした。

「…犬? あの犬か? お前、平気なのか……愚問だった」

写真に写っていた時枝の姿を見れば、平気に決まっていた。

「あの子だけだ」
「あの子? ふん、何だその仲睦まじそうな呼び方は」

勇一がリビングに近づくとユウイチの鳴き声が、一層激しくなった。
リビングのドアを開けると、入口でユウイチが小さな身体を震わせ、牙を剥き、勇一を威嚇し始めた。

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秘書の嫁入り 夢(18)

「…黒瀬…、…あの…俺……考えたんだけど」

撮影会が終わり、時枝の部屋から戻るエレベータ―の中、潤が黒瀬に話しかけた。
黒瀬と潤の部屋と、時枝の部屋はエレベーターで繋がっている。
もちろん室内の専用エレベーターなので、靴を履く必要はない。シルクのパジャマに室内履きを履いている。

「何を考えたの?」

一つ上の階に戻るだけなので、エレベーターは直ぐに止った。

「ユウイチ、時枝さんから離した方が良くない? 教育上良くないと思う。ユウイチ、まだ子犬だよ?」

歩きながら、潤が黒瀬を見上げている。

「潤、PTAみたい」
「…あそこまで…ユウイチやるとは…思わなかった… ユウイチ、時枝さん、人間だってわかってるのかな? それに、あんなに仲良くなりすぎたら…組長さんと時枝さんが元に戻った時、ユウイチ、寂しいと思うんだ。犬って、ヤキモチ焼くだろ?」

潤の目の縁が赤い。
頬もほんのり桃色だ。

「ふふふ、そうだね…」
「ユウイチ、すっかり、時枝さんの…好きになってるみたい。きっとこれから夜な夜な時枝さんの……うわっ、急にビックリするだろ」

リビングのドアに潤が手を掛けたとき、黒瀬の手が潤の股間に伸びた。

「潤、勃ってる」

パジャマの上から、やんわりと握られた。

「…あんな痴態みせられたら…しょうがないだろ。…時枝さん、凄かった」

潤の欲情を黒瀬が見逃すはずがない。

「悪い子だ。旦那様がいるのに、他人の痴態で興奮するとは。ふふ、お仕置きだね、潤」
「あっ、バカ」

ギュッと、黒瀬の手に力が入る。
堪らず、潤が黒瀬の腕を掴むと、黒瀬が潤を抱き上げた。

「お茶より、することあるよね、潤?」

潤を抱きかかえた黒瀬は、リビングには入らず寝室へと向う。

「カメラが当たって痛いよ。黒瀬、これ、カードに加工するんだろ? しなくていいの?」

黒瀬の胸のポケットには小型のデジタルカメラが収納されていた。

「今、して欲しいの?」
「……えっと…違う…して欲しいのは…俺の方かも」
「だろ? 私はユウイチのざらざらした舌より、潤の滑らかな舌の方が好きだから。ふふ、背中の痕も潤の舌だと、感じるから」

黒瀬の背中には、少年期に父親から受けた虐待の痕が、ケロイド状で残っている。

「嬉しい、黒瀬。ユウイチなんかに負けない仕事するから…早く、しよ」

黒瀬が潤をベッドに降ろす。
胸のポケットから時枝のあられもない姿と声が収まったデジタルカメラを取りだし、サイドテーブルに置いた。
時枝と潤は気づいてなかったが、写真を撮るだけでなく動画も声も黒瀬はカメラに収めていた。

 

「組長、バイク便でこれが」

金曜日の夕方。
今日も歓楽街へ繰り出そうと事務所で帰り支度をしていた勇一に、佐々木が白い封筒を差し出した。

「…武史からか。何事だ…」

差出人は「黒瀬武史」となっている。
用事なら携帯からの電話かメールで済むだろうに、と不審に思いながら開封した。
中に入っていたのは二つ折りのカード。
表に英語でインビテーションと書かれている。
ゆっくりカードを開いた。

「…」

カードを持ったまま、勇一が震えだした。

「組長? 何か大変な事態でも?」

様子のおかしい勇一に、佐々木が声を掛けた。

「……あのやろうっ、ふざけやがってっ!」

勇一が厚みのあるカードを粉々に割いていく。
事務所に残っていた佐々木以外の組員は、勇一の激怒に、どこかの組と抗争が始まるのか? と緊張が走った。

「落ち着いて下さい。ボンが、どうかしたんですか? アッシが話、つけてきましょうか?」
「あのガキ、勝貴をオモチャにしやがったっ! ドス持って来いっ!」
「組長! 駄目です。兄弟ゲンカは止めて下さい。あんなにボンのこと溺愛してたじゃないですかっ!」
「うるせ―っ。過去の話だ。邪魔するなら、お前も沈めるぞ」

勇一が、佐々木を殴り飛ばした。
倒れた佐々木の上に勇一が乗ると、佐々木のスーツの袷に手を入れ、佐々木が胸に隠し持っていた短刀を奪った。

「ボヤッと見てないで、組長をお止めしろっ!」

と佐々木が叫んだ時には、勇一の姿はもう事務所になかった。
立ち上がった佐々木が慌てて勇一を追ったが、勇一の姿もなければ、勇一専用車も消えていた。

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