秘書の嫁入り 夢(22)

「やあ、兄さん。今晩は。ご招待した時間にはまだなってないようですが」

ソファの上では裸体の男二人が絡んでいる。

「時枝、食事の用意が済んでいないようだか、ふふふ、兄さんの身体を料理するのに、忙しそうですね」

黒瀬がコートを脱ぐと、潤に手渡した。
潤は、顔を上げられず下を向いたままだ。

「…武史か…はぁ、てめぇ…、後で…、覚えてろッ…勝貴、こらっ、ぁあうっ、ソコは」
「男の時枝も、悪くないでしょ? 実際、兄さんより時枝の方が男らしいんですよ」

黒瀬が、ツカツカと勇一と時枝の側に近づいた。
ソファの上の二人を観察するように見下ろした。

「時枝、兄さんの中はどう? 使ってないから、狭くてキュッと締め付けてくるんじゃない?」
「うるさい、武史、邪魔するなっ」

秘書モードゼロの時枝だった。
黒瀬のことを面と向って武史と呼ぶのは珍しい。

「おお、コワッ。時枝、酒臭い。な~るほどね。理性の箍が外れちゃったかな? ふふふ、潤おいで」

黒瀬が目を伏せ、赤い顔をした潤を呼び寄せる。

「こっちにおいで」

ソファのアームに黒瀬が腰を降ろすと、潤を膝の上に招いた。
勇一の頭の先に、二人は陣取った。

「兄さんのアソコ、見てごらん」

潤がゆっくり勇一の身体に視線を這わす。

「…勃ってる」

時枝のモノが前立腺を刺激しているのか、勇一の雄芯は見事に勃ち上がっていた。

「…はぁ、二人して、…見てるんじゃ…ねえ…あぅ、あ アッチ…行けっ!」
「いいじゃないですか。お二人の愛の交わりを鑑賞させて下さいよ」

しれっと黒瀬がかわす。

「…こらっ、勝貴も、…あぁああ、だから、手加減しろって…、 …何とか、言えよ」
「邪魔しないなら、別に構わん。見られて、やましい事をしている訳じゃない。ほら、イけよ、勇一」

潤は知らないが、時枝も散々女を喰ってきた人間だ。
童貞こそ勇一の謀らいで捨てたが、その後はどれだけ女と寝てきたか。
雄としてのテクニックだって、勇一以上に持った男だ。
受ける立場としての経験もある。
そんな時枝に責められれば、後ろの経験が乏しい勇一は、一溜まりもないだろう。

「時枝さん、凄い…別人みたい」
「でも、時枝、本当は兄さんに抱かれたいんだと思うよ。兄さんを身体で受け止めたいんだと思うけど。そうしてくれなかった兄さんへの恨み辛みが反動になっているんじゃない?」

勇一の経験が少ないと分っているくせに、激しく打ち込む時枝は、鬼気迫るものがある。
ズブッズブッという音が、潤と黒瀬の耳に届くくらい、激しく責められていた。

「…勝貴、…もう、いいだろっ、ぁあっ、こんなに乱暴にしなくても…お前が男だって、知ってるぞ……あっ、くそっ、」
「素直に、イケッ!」

どこにその体力があったのか、というぐらい時枝が腰を使っていた。
差込んだまま、円を描くように回す腰つきは卑猥そのものだ。
勇一が手を伸ばした。

「…抱かせろ」
「俺は、こっちの方がいい」

時枝が勇一の伸びた手を握った。
勇一としっかり両手を握りあったまま、時枝が最後の留めを刺した。
一刺し、勇一の身体を貫くように引いた腰を激しく突き入れた。

「っぐ、ふぅ…勝貴ッ!」

勇一の身体が大きくバウンドし、勇一の上向いた先から、白濁の物が数回に分けて放出された。

「ぁあっ、イイッ…良かった……」

バタンと時枝が勇一の上に沈む。

「――勝貴、気が済んだか?」
「……気が済むとかすまないとかの、問題じゃない……イテェ…足が攣る」
「ばぁか、無理するからだ。―――勝貴、お前だけ、俺を好き勝手にして、狡いと思わないか? …良い経験をさせてもらったよ。桐生の組長を掘るなんて、お前ぐらいだろうよ。さすが、勝貴だ。お前以外には絶対、尻など預けないが、お前にならいくら預けてもいい。が、それじゃあ、お前の気は済まないだろ?」
「…だから、言っただろ。気が済むとか…済まないの…話じゃ……」

時枝の様子がおかしい。
さっきまでの強気の時枝ではない。
発散したおかげで、酔いが醒め始めていた。
潤と黒瀬もそれを感じていた。
この先どうなるんだ、とコトが終わった二人から目が離せない。

「お陰様で、ご期待にお応えできそうだ。イヤ、犯り殺せそうなぐらいキている…」
「え? あっ、」

腹の下で蠢く物の存在を、時枝は感じた。