秘書の嫁入り 夢(23)

「勝貴、感じるだろ? イッたばかりの俺のがムクムクと育っているのを。この子は、一番好きな場所をどこか知っているからなあ」

悪いな、と言うなり勇一が時枝を突き飛ばした。
時枝の身体が勇一から離れ、ソファからも落ち、ラグの上に転がった。
眼鏡はとっくの昔にラグの上だったが、幸い、眼鏡の上には落ちなかった。

「…痛いだろっ、」
「痛いぐらい、俺から酷くされるの好きなんだろ」

時枝の顔が、誰が見ても分るぐらい赤くなる。
勇一は腹に付いた白濁のモノを拭うこともなく、転がった時枝を肩に担ぐ。

「武史、客間借りるぞ。もちろん、文句ないよな?」
「ええ、ありませんよ。後片付けはして下さいよ。その様子じゃ、凄く汚れそうですからね。あと、内線のスイッチ、オンで」
「ああ、イイ声聞かせてやる」

雄々しい勇一の太腿には、時枝が勇一の中で出したモノが伝って降りていた。

「…組長さん、それ…先に流した方が」

潤が、後処理を勧めたが、勇一はニヤッと笑い、

「そんな勿体ないこと、できるか」

と、時枝を担いで出て行った。

「私達は先に食事にしよう。お腹空いてるよね?」
「ペコペコ……大丈夫かな…時枝さん」
「心配いらないよ。時枝、嬉しくて溜まらないんじゃない。多分、処女より乙女らしい反応しそう…ふふふ、素敵なBGM付きの晩餐といこう」

潤と黒瀬はダイニングへ、時枝を担いだ勇一は客間へと移動した。

「ここは、俺とお前の記念の部屋だったな」
「記念って…」
「覚えているだろう。ここで俺と勝貴は、初セックスだった」
「……恥ずかしいこと、言うな」
「お前、さっきまで散々、人を乱暴に掘っておいて、恥ずかしいも何もないだろうが。ほら、降りろ」

ドガッと、ベッドの上に勇一が担いでいた時枝を乱暴に放り投げた。

「俺は物じゃないぞ。丁寧に優しく扱え」

マットレスが時枝の体重を受けて沈むぐらい、激しく投げ付けられた時枝が抗議した。

「ウルセ―。優しくなんぞ、扱うはずねえだろ。優しくすれば『同情だ、愛してないんだ』て、俺のこの粘っこい愛を疑うくせによ。あげくの果てに、人のケツ掘りやがって」
「疑い? 勃起しなかったくせに…」
「ああ、悪かったよ。お前じゃなければ、傷付こうがどうしようが、俺の一物が反応しなくなるなんてことなかっただろうよ。しょうがないだろ。勝貴は、俺の一部なんだ。勝貴が傷付いていると、連鎖反応するんだよ」
「…なんだよ、その言い分…じゃあ、何か、もう俺が傷付いてないと思っているのか? だから、そんな状態なのか」

時枝が、天を仰ぐ勇一の雄芯を指さした。

「違うね。そんな浅い傷じゃないことぐらい、分ってるさ」

今度は勇一自身が、ベッドの上にダイブしてきた。
避けようとした時枝を組み敷いた。

「あれ以上、傷付けたくなかった。勝手に本能がストップかけてた。だが、違うって気付いただけだ。俺だけはお前を傷付けても良かったんだ」
「なんだ、その言い草は」
「お前が嫌がろうが、泣き喚こうが、お前は俺のモノだ。他の誰かに付けられた傷なんか、関係あるか。お前だって、さっき言ったじゃねえか。他の誰かと何しようが、意味がなかったって。俺がお前に遠慮する理由がないってことに、気付いただけだ。更に痛みを感じるなら、共有すればいいだけのことだろ?」
「人を、モノ扱いしやがってっ! 勝手なこと言うな」

時枝が、勇一を睨み付ける。
しかし、迫力に欠けた睨みだった。
水分タップリの池の中に沈んだ眼球で睨み付けられた勇一が、堪えきれず笑みを洩らした。
バカにしたのではなく、愛おしいのだ。

「可愛いヤツ。勝手なこと? 言うに決まってる。俺は勝手にしていいぐらいには、勝貴に愛されている。違うか?」
「違……わない」

時枝の目は既に洪水状態だった。

「ワン公に変なことさせたり、武史達と何やらしていたらしいな? そんな浮気行為するぐらいだから、覚悟は出来てるよな、勝貴ちゃん?」

勇一が時枝の腕を一本ずつ頭上に上げさせる。
片手で時枝の手首を二本一緒に縫止めた。

「分っていると思うが、俺のココが勃っているのは前立腺弄られたからじゃあないぜ。その分はもう一回出したからな」

目の縁を赤くし、頬を濡らす時枝の顔を勇一が獣の目で見下ろした。

「……本気…なのか?」

時枝の身体が小刻みに震えだした。
黒瀬には一度挿入されたが、勇一とはもう長い間身体を繋いでない。
イヤ、つい先程、繋いだことは繋いだが、受け入れてはいない。