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「イロイロ反省したんじゃないの? ふふ、休憩時間に突然やってきて、潤の可愛い姿を全部見てたからね。邪魔もしようとしてたし」
「…そのぅ、通りです」
黒瀬からやられたという訳にもいかず、
「自責の念で、自分でやりました」
と佐々木は言った。
「それで、潤は、ゴリラとクマとどっちに興味がある?」
「ゴホン、社長、仕事中ですので、そのような事にはお答え出来ません。佐々木さん、お茶をどうぞ」
黒瀬が、佐々木を睨む。
潤にお茶を出させるとは、いい度胸しているね、と黒瀬が思っているのが佐々木には手に取るように分かった。
「アッシの為に、あ、ありがとうございますっ」
さっきまでの佐々木はどこに行ったのやら。
すっかり萎縮していた。
「佐々木さん、一大事と大騒ぎしていましたが、もう、その話は?」
「はい、させて頂きましたっ」
「社長、私が伺っても問題ない内容でしたら、教えて頂けませんか? 佐々木さんが騒いでいらしたので、少し気になります」
「ふふ、駆け落ちしたんだって」
「ぁあ、なるほど。それで焦っていたのですね」
潤が妙に納得した表情を見せる。
佐々木の慌てぶりからして、駆け落ちしたのが、実家に戻った大喜であることは予測ができた。
「なるほどって、潤さまはご存じだったんですか?」
「何を?」
質問に質問で潤が佐々木に返した。
「ダイダイと組長の駆け落ちですっ!」
「組長? どこの組? 女の子かと思ったら、違うんだ……意外ですね」
「女の子? 潤さま、それは、一体どういう意味ですかっ! ダイダイにガールフレンドが? 組長だけじゃ、ない…」
佐々木の顔が真っ青になっていく。
「ガールフレンドはいても問題ないじゃない。日本語の意味なら。ふふ、英語の意味なら、小猿もヤルね」
「…そんなぁ…」
女の子との駆け落ちなど、一切考えてなかった。
大喜に会いたがっていた勇一のことしか、佐々木の頭には思い浮かばなかった。
「話が反れたけど、組長って、兄さんのことらしいよ」
「まさかっ。そんなことあるはずないでしょ。佐々木さん、大丈夫ですか?」
女の子なら佐々木に焼き餅を焼かせる為にそれもありかなと思ったが…。
相手が勇一となると、潤の中では有り得ない可能性だった。
「…ダイダイが、……アッシの目を盗んで…女の子と…。いや、祝福してやるべきか…」
佐々木が湯飲みを覗き込んだまま、ブツブツ言い始めた。
「…でも、…組長の可能性も…、いや、組長の方がっ、」
佐々木の中で一巡して、結局勇一に戻ったらしい。
「どうして、組長さんなんですか?」
「…それは…、…二人とも、行方不明なんです」
「行方不明?」
その言葉で、あながち佐々木の被害妄想ではないかもしれないと潤は思った。
「詳しくお聞かせ下さい」
「…先程もお話しましたが…」
ちょっと待って、と黒瀬が遮った。
立ったままの潤が、不憫になったのだ。
黒瀬の思考的には、ゴリラが座っているのに、どうして潤が立ちっぱなしなんだ、ということだろう。
黒瀬が隣に座るように勧めたが、勤務時間中ですので、と潤が断った。
仕方ないと黒瀬が潤の腰に腕を回し、強引に自分の横に座らせた。
潤が座ると、黒瀬が続けろ、と佐々木に無言で命じた。