その男、激情!63

「潤ッ!」

黒瀬が叫んだ。

「…俺は大丈夫だ」

頭を左右に振りながら、潤がゆっくりと起き上がった。

「橋爪さん、あなた、そんなに死にたいのなら、私があの世に送ってあげますよ。その前に、時枝に責任を取ってもらわないと」

潤が殴られ、ハッと我に返った時枝に黒瀬が凍るような視線を向けた。

「…責任って…、社長ッ、」
「時枝が言い出したことだ。それに協力した潤が被害にあったのだから、当然じゃない? それに、この殺し屋は、時枝を気持ち悪いっていうんだから、とことん、その気持ち悪さを見せつけてやればいい。潤、大丈夫?」
「大丈夫だって、心配症だな」
「良かった…」

心底ホッとした表情を黒瀬が見せる。

「しばらく、コレは没収。お仕事の時、返却してあげますよ」

そして、橋爪の手から拳銃を奪うとその拳銃を潤に投げた。

「潤、逃げないように見張ってて」

誰が逃げるか、と橋爪が呟く。

「了解。…黒瀬、今から時枝さんを」
「別に浮気じゃないからね、潤」
「…そんなこと、今更言わなくても、俺、分ってるし。少なくとも、黒瀬は時枝さんを気持ち悪いとは思ってないし…このバカ野郎が時枝さんを抱くより黒瀬の方がマシだよ」
「…勝手なことをっ、…嫌だっ、…それは嫌だっ、」

時枝が、涙を流している。
酷い言葉を浴びせられても、時枝にとって勇一は、ただ一人の愛しい男だった。

「時枝が懇願しても無駄。この人にその気はないし、その気のない男は大事な所が眠ったままだろうから、時枝の望みは無理。桐生の組長なら、泣いてないで責任ぐらい取れるよね? ふふ、橋爪さん、私が時枝を犯すほうが、自分が私から犯されるよりはマシでしょう?」
「当然だろ。馬鹿げているが、ヤるならサッサとやれ。早く俺に仕事をさせろっ!」

目の前の男を殺すだけに、どれだけ待たせるんだ。
股を濡らした死にぞこないがどうなろうと知った事じゃないっ。
どうして、俺が男を掘ったり、掘られたりしないとならない。
やるなら、自分達だけで勝手に盛り上がればいいだろ!

「ふふ、時枝残念だけど」

黒瀬が毛布を剥ぐと、開いてた股を更に広げ、橋爪にその場所をよく見えるようにしてから指で触れた。

「触るなっ!」

時枝が叫ぶ。

「あれ? 乾いてきたようだ。潤、何かある?」

潤が黒瀬に先程使用したローションを渡した。
渡しながら、潤は黒瀬に『愛してる、黒瀬』と、呟いた。
潤なりの憎まれ役黒瀬へのエールだった。

「イヤだっ、…話が違うっ! 俺は勇一と!」

時枝が上半身を揺らし、抗議する。
まともに動けず抵抗すらできない身体は、あっけなく黒瀬の支配下に置かれた。
黒瀬がローションを自分の指に垂らし、濡れた指を遠慮なく差し込んだ。

「いやだぁああっ!」
「なに、駄々捏ねてるの。さっき潤にだって触られているはずだろ? ふふ、まだ柔らかい。潤、良い仕事したね。私も頑張らないといけないかな?」

黒瀬がベッドにあがった。
ファスナーを降ろすと、橋爪に銃を突きつけている潤を見た。

「潤、愛しているよ」

潤が送ったエールに時間差で応えるように黒瀬が語りかける。

「黒瀬、犯して…俺も…時枝さんも」

橋爪は、潤の発した言葉の意味が直ぐには分らなかった。
が、黒瀬の視線と手の動きで理解した。
セックスしてやがる、こいつら。
足下に横たわる時枝を犯す為に、黒瀬は潤と視線でセックスをしているのだ。
距離も直の体温もこの二人には関係ないのだ。
変態もここまでくれば一流だな、と橋爪は呆れ果てていた。