その男、激情!54

「ふふ、乳首が感じ過ぎて、我慢できないんですか? こらえ性がないですね。ユウイチ、一番好きな場所にお行き」

乳首からユウイチが顔を離す。
強く吸われたので、橋爪の左右両方の乳首は乳輪部分から赤く腫れていた。
ユウイチを喜ばせたいのか、潤がもう一度橋爪の局部にサイドからユウイチスペシャルを吹きかけた。
シュッと舞い上がった霧状の大好物に、ユウイチがキャンと歓喜の鳴声をあげ、短い尾を懸命に振りながら、橋爪の局部に鼻先を付けた。

「知ってる匂いだろ?」

潤の問い掛けに、利口な犬は「キャ、キャン」とはしゃいでみせた。

「ユウイチだって、兄さんだと分るのに、本人が情けない殺し屋気取りだから、ふふ、笑える」
「黒瀬、そこは普通、笑えない、だろ」
「どうして? 愉快じゃない。兄さんの記憶を司る海馬は、ユウイチの嗅覚以下だってことじゃない? ふふ、ユウイチより脳機能が下?」
「ううん、そう言われてみれば、そうかも。犬だって三日餌をもらった恩は忘れないって言うけど…組長さん、あんなに時枝さんの世話になっていて…忘れるなんて…」
「ふふ、まあ、人のことは言えないけど」

黒瀬の目が翳(かげ)るのを潤は察知した。

「黒瀬は薬物のせいだから、違うだろ? それに忘れていても、俺をペットとして気に入ってくれたじゃないかよ。でも、組長さん、殺そうとしたんだぜ。犬以下だよ」

しばし、黒瀬と潤は、橋爪の状態を無視し会話を続けた。

「犬以下だろうが最低だろうが、何だっていいっ! んぁあっ、バカ犬ッ、そんな場所に舌使うなっ、」

ユウイチが、双珠を左右交互に舐めていた。
舌の動きで揺れる珠が楽しいらしく、掬い上げるように舐めては、舌を離していた。

「時枝から仕込まれているから、最高でしょ?」
「最低だっ! あの眼鏡の神経質そうな男にこんな趣味があったとはなッ」

バシッと橋爪の頬が鳴る。

「何しやがるッ!」

潤が橋爪の顔を引っぱたいたのだ。

「潤? うふふ、」

これには、黒瀬も驚いた顔をした。
しかしその表情は、かなり嬉しそうだ。

「時枝さんが、必死で克服した事を最低とか言うなっ!あんたがしっかりしてないから、あんな残酷な目に遭わせたんだろっ! 犬と仲良くなるってことが、時枝さんにとってどんなに辛い事だったかっ。あんた全然覚えてないくせに、時枝さんを侮辱するなっ。この最低男っ」

今度は反対側の頬に、潤の手が飛んだ。
潤の啖呵に、黒瀬は満足げな表情を浮かべ、橋爪の双珠を舐めていたユウイチが橋爪を見上げ、潤を支持するように小さな牙を剥いて見せた。
一つ、橋爪が分かったことは、時枝は犬に対して一種のトラウマを抱えているということだ。
『好きなはずない。あんな残酷な目に遭わされて……覚えてないなら、いい』と潤が先程も言っていた事からすると、間違いない。
…だが、それと俺とは関係ない。
どうして、何もかも俺のせいにされなきゃならない。
…この犬が夢に出て来たことに、意味があるっていうのか? 
…バカな、俺はあいつも、こいつらも知らないんだっ!

「ふふ、兄さん、潤を怒らせない方がいいですよ。ユウイチは潤が好きですからね。噛まれますよ、ソコ」

夢の中で噛みつかれた時の激痛を思い出し、橋爪の身体が震えた。

「ユウイチ、牙はいいから、組長さんの先端をどうぞ。溝に、大好物が溜まっているよ」

潤が、ユウイチの頭を撫でながらユウイチの舌をもっとも敏感な場所に誘導した。

「う、わぁ、 …覚えてろよ、クソ犬にクソガキに、ド変態っ、あう、…このヤロゥウッ!」