秘書の嫁入り 夢(10)

「はいはい、いい年した大人が泣かない。気持ち良かったでしょ? あとはユウイチと遊んでて下さい。ユウイチ、おいで」

時枝から身体を離した黒瀬がベッドの下で待たされていたユウイチを呼ぶ。
時枝の身体を仰向けにすると、時枝の上にユウイチを載せた。
時枝からは悲鳴は上がらない。
潤と時枝の放出したもので濡れた時枝の腹をユウイチがペロペロと舐めだした。

「…時枝さん、大丈夫?」
「大丈夫じゃない? もう、ユウイチとお友達のようだけど」

黒瀬にいいように扱われ、疲弊した身体はユウイチを拒む気力を時枝に与えなかった。
悲鳴をあげるような恐怖心も湧き上がって来ない。
ユウイチに舐められるよりも、惚れた男の弟と身体を繋いだことの方が問題のような気もするが、今はそれを考える気力もなかった。
ただ、頭にあるのは、何故、勇一じゃないんだ、ということだけ。
勇一の側を自ら離れたのは、昨日の朝だ。
依存は止めようという決意で、止める勇一を払い出てきたのに、勇一の顔が見たかった。

「時枝さん、犬は克服できたのかな?」
「大型犬は分からないけど、ユウイチは恐くないみたい。時枝はユウイチに任せて、潤、こちらへ」

黒瀬はまだイッてなかった。
時枝をイかせはしたが、自分が時枝の中で果てることはなかった。
装着していたゴムを外すと、潤を呼ぶ。
潤は時枝を跨ぎ、黒瀬の元に行く。

「…黒瀬、それ…」

仰向けになった黒瀬の中心が雄々しく勃っているのを見ると、潤の顔がフワ~っと嬉しさで桃色に染まった。

「時枝さんの中で、イってないんだ……」
「私の愛は潤だけに注ぎたいからね。潤、おいで」

潤が黒瀬の上に跨ると、躊躇なく腰を降ろす。

「一人で挿入してごらん」

黒瀬の先端で潤の蕾をつつきながら、開いていく。
毎晩交わす愛の行為で、指を使わず飲み込むことを潤の身体は習得していた。

「ぁあっ、やっぱり直に感じるのが、一番だよ…黒瀬…好き…」

もはや時枝の存在は、二人には関係なかった。
やるべきことはやったと、二人の世界に没入していく。

「…お前は…ソコまで…舐めるのか…? ユウイチ…あぁあ…もう、勝手にしなさい……」

 

 

「あんた…オッサンに一体何を…」

佐々木が自宅の玄関の土間で、大粒の涙を流しながら同居している大森大喜に土下座をしている。
その横には、勇一が立っていた。
帰ったぞという佐々木ではなく勇一の声で、大喜が朝食の準備をしていた台所から玄関へと顔を出すと、佐々木が下を向いたまま立っていた。
大喜が「オッサン?」と声を掛けると、いきなり土間へ座り込み、土下座を始めたのだ。

「…すまねぇ…、お前に合せる顔がないっ! この通りだっ! …ぐっ、組長が…、」
「少しは、佐々木だって、楽しんだろ? なんたって、ルミは名器の持ち主だからな。後はよろしく」
「…よろしくって、こらっ、待てっ! ルミってどういう事だっ!」

出ていこうとした勇一の上着の裾を大喜が掴んだ。

「離せ、ガキ。ちゃんと連れて帰ってやったんだから、問題ないだろうが。塒に隠れるっていうのを、俺がガキの元まで、送り届けてやったんだ。じゃあな」

大喜の腕を振り払い、勇一は具体的な説明をせずに出ていった。

「ああ、もう、泣くなよ。後でゆっくり話は聞かせてもらうけど、取り敢えず顔洗って、朝飯にしようぜ。な? 立てよ、服が汚れるぞ」
「…ダイダイ、俺を殴れ。…蹴ってもいいぞ」
「組長から、石鹸の匂いがしたから、だいたいの予想はついてるよ。朝帰りだしな。俺に申し訳ないと思うなら、朝飯だ。折角オッサンの為に作ったんだ。温かいうちに食おうぜ、」

まだ十代の大喜の方がよっぽど大人である。
四十過ぎの佐々木は、大喜に促され情けない顔のまま、食卓へついた。