ヤクザ者Sの純情!21

部屋は暗かったが段々と目が慣れてきて、佐々木の寝顔がハッキリと分かる。
歯軋りもイビキもない。
傷さえなければ、本当にいい顔をしている。
無防備な寝顔にヤクザの凜とした形相はないし、穏やかなものだ。
ふと、悪戯心が大喜に芽生えた。
キスするぐらい、いいよな。
顔を突き出せば、佐々木の唇に届きそうだった。
が…、あと数ミリ届かない。
前にずれるぐらい簡単だろうと、ロープで縛られた身体を動かそうとした。
予想に反して動けない。
一度後に身体を傾ければ、その反動で前に行けると思ったが、後ろにも前にも身体が動かない。

「う~っ、くそッ…せめてキスだっ!」

身体が無理なら、首があと数ミリ伸びればいいんだ、と自分の首をこれ以上伸びないという限界まで伸ばした。
あと、一ミリぐらいだ。
すれすれで、触れられない。
舌を伸ばしてみた。
唇は無理だが、舌は余裕で届いた。
少しだけなら、佐々木の中に割って入ることも出来そうだ。
可能なことからやってやると、なんの躊躇もせず、大喜は舌を佐々木の口へ侵入させた。
目を覚ますだろうかと上目使いで、佐々木の瞼を確認しながら舌を動かす。
最初、上下の歯列が壁になってそれ以上中には進めなかった。
歯列を舌でなぞり遊んでいると、寝ていても少しは感覚があるのか、佐々木の口元から力が抜けていった。
隙間が出来たので、その間に舌先を入れ佐々木の舌に触れた。
絡めるには距離が遠すぎて、チョンチョンと佐々木の舌をつつくことしか出来ない。

「…ん~…」

大喜の悪戯が佐々木の夢に影響したのか、佐々木の腕が伸び、大喜のグルグル巻の身体を引き寄せた。
もちろん、大喜の唇は佐々木の唇に問題なく重なった。
すると佐々木は眠ったままで大喜を逆に食うようなキスを始めた。
都合良く、大喜の舌は自分の口内だ。
違う誰かと勘違いしてのキスなのか、大喜の腰に響くような濃厚なキスを始めた。
SMは大喜の取り越し苦労だったのだが、経験は大喜が思っていたより豊富らしい。
動きが違うのだ。
口腔内の弱いところを確実に責めてくる。
しかも、焦らす。
女の子相手のキスでは自分が主導権を握っていたのに、佐々木は大喜に主導権を決して握らせない。
寝ぼけてのキスがこれだ。
本気を出せば、凄いテクニックを披露するのではと、起きている佐々木とのディープキスに興味が沸いてきた。
しかし、楽しんでばかりもいられなかった。
あまりに官能的なキスをされ、若い大喜の一部が、素直に反応を始めていた。
だが形状を変えようとするのを、ロープの縛りが邪魔をする。
痛い…。
ピチピチのジーンズを穿いているより、痛い。
パジャマの生地も薄い肌掛けも、意味がない。
まるでロープでソコを直接縛られているように感じる。
拷問だ。
痛みに耐えきれず、佐々木から唇を離した。

「はぁ~…いてぇ~よ~…」

解放して抜いてしまいたいが、無理だ。
これ以上大きくなると、耐えられないと治まるのを待つことにした。
寝ぼけた佐々木は、まだまだキスを貪りたかったようだ。
佐々木の手が大喜の後頭部に伸び、後ろから大喜の頭を押す。

「ヤバイって…あぅ…」

最初に仕掛けたのは大喜の方だったが、今は佐々木の口から逃げようと必死だ。
頭を押さえつけられているので、どうにもならない。
また官能的なキスが始まった。
口内を貪られるのと比例し、解放を望む大喜の中心が藻掻き苦しみ出す。

「…ふっ…ふっ…」

鼻の穴から荒い息が漏れ、目から涙が溢れた。
押せえつける手から逃れる為、頭を反らそうと首に力を入れてみた。
頬を流れる涙が、繋がった口をつたり、佐々木の顔も濡らす。
それが気持ち悪かったのか、佐々木が薄目を開けた。
ドアップの大喜に驚いたのか、佐々木の目がギョッと大きく見開かれた。
自分が何をしているのか気づき、「ぎぇええっ!」と大声を上げ、ロール巻きの大喜を突き飛ばした。

「ヒィッ!」

ベッドの上、自分では動けない円柱のような大喜。
力をポンと受ければ、当然その結果は、床が大喜を待っていた。

「…ひでぇ…」

落ちた床からベッドの方を見上げると、佐々木が大喜を覗き込んでいた。

「大丈夫かっ」

声と一緒に、佐々木がリモコンで照明をつけた。
佐々木が慌てふためいた顔でベッドから降りてきた。