その男、激震!(167)

★文庫の帯プレ第二弾…制作中。。。ちょっと遅れていますが、お待ち下さいネ。★

 

時枝がベッドの端に腰を降ろす。
は~っと息をゆっくり吐き出してから、

「勇一、お前、劣化していたときの記憶はあるな?」

と切り出す。

「劣化って、つまりそれは…」
「橋爪のときの記憶だ。それ以前も含めて、桐生勇一じゃない期間の記憶だ」
「…全部かどうかは自信がないが…ある」
「それなら、話は早い。姿勢を正してちゃんと訊けよ」

橋爪の名が出て来た段階で、ろくでもない話であることは勇一にも推測がつく。

「ああ」
「返事は、ハイ、だ」
「はい!」
「喜べ、勇一」
「え?」

悪い話じゃないのか?

「お前はパパだ。お父さんだ」
「…えーっと、今からお飯事(ままごと)遊びを始めるのか?」

劣化版時代の話だと構えていた勇一から緊張感が抜ける。

「そんな年か。気持ち悪いこと言うな」
「だって、俺がパパだって」
「ごっこじゃない。実話だ。現実だ。お前にはガキがいる」
「…えっと、勝貴? 大丈夫?」

苦労させすぎて、妄想と現実の区別が付かなくなったのかもしれないと、勇一は心配になった。

「俺は大丈夫だ。これを見ろ」

時枝が大喜から借りた写真をベッドの上に置いた。
その写真を勇一が手に取った。

「――これは」

知っている過去の自分が写っていた。
どういう状況で誰が撮った写真か、見た瞬間に思い出せた。

「お前だな?」
「ああ」
「この写真の男が父親だという子どもがいる。母親が余命僅かで、この父親を探している。この男は母親の妊娠を知らずに去ったらしい。この母親に心当たりあるよな、勇一」 
「ある」
「じゃあ、その女性がどんな性格かも分かっているよな? 嘘を付くような人間か?」
「違う。そんな女じゃない。余命僅かって…病気なのか?」
「ああ。残された時間は殆どないらしい。彼女は――」

大喜から訊いた話を時枝はできるだけ取りこぼさないように勇一に話した。

「よーく、分かった」
「勇一、親子鑑定は必要か?」
「必要ない。俺の子で間違いないだろ。勝貴、あの…」
「何だ? ハッキリ言え」
「俺は、お前に…謝罪できない……謝罪したら、ガキも彼女も不義になっちまう。すまないっ」

勇一が突然床に座り、頭を下げた。
その頭を時枝が蹴る。

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