ルーシーに首ったけ④(その男激震番外編)

「ヤァだ、お二人とも。冗談ですよ。そんな女じゃないです」
「ルーシー、悪い冗談はやめてよ。俺の気持ち知ってるくせに」
「ごめんなさい」

美人の微笑というのは、かなりの破壊力がある。
想いを寄せている人間には特に。
中島は一瞬で顔を緩めた。

デレ~ッとしやがって!

「俺は腰の軽い女性、大歓迎だけど」
「俺はヤダ~」
「意見が違う二人だから、仲がよろしいのかしら?」
「そうじゃない?」

まだ横にいたママが俺達より先に答えた。
そこからママの友情論が始まり、何故かママの恋愛話を聞かされるはめになり、ルーシーから何も聞き出せないまま中島が酔い潰れた。

「中ちゃん、今日は楽しそうだったわね。いつもはルーシーと少しおしゃべりしてその後は静かに呑んでるだけだけど」

他の客は帰り、ルーシーもあがり、店内には潰れた中島と俺とママの三人だけになった。

「トノちゃんに、頼みがあるんだけど」
「頼み?」
「トノちゃん、中ちゃんに惚れてるんでしょ」
「ええ、まあ」
「否定しないのね。男らしいわ。そういう子、好きよ」

ママに好かれてもな~。

「ちょっとルーシー、訳ありでね。幾ら中ちゃんが良い子でもルーシーとは無理なのよ」
「それはルーシーが男性だからですか?」
「やだ、気付いてた? でもそこじゃないわよ。同性同士なんて、今時普通でしょ」

普通なんだ…

「実は特定の相手がいるとか?」
「ま、ね」
「訳ありっていうぐらいだから、怖い人?」
「そう、とっても怖い人。しかも超ヤキモチ妬き。一応うちで預かってるけど、うちでもカウンターの中しか出てもらってないの。分るでしょ? 酔うとお触りしちゃう方もいるから、カウンターだけ」
「ルーシーの気が変わることがなければ、中島がルーシーを好きでも問題ないんじゃ。一方的な片想いってヤツだし」
「でも、可哀想じゃない。中ちゃん、ルーシーに会うためにうちで幾ら落としていってると思う? ほぼ毎日来てるんだから。売り上げとしては大歓迎だけど。報われない恋に大枚使うなら、もっと実りのある恋に使って欲しいわ。中ちゃん、健気でいい子なんだもの」

それでね、と言って紙袋をママが俺に差し出した。

「ヤッちゃいなさい」
「ママ?」
「今夜、中ちゃんを犯すこと」
「はあ? 俺達の関係をぶち壊す気?」
「気に入らないね。そのいい子ぶった発言。同僚を邪(よこしま)な目でみてる時点で関係もへったくれもないんだよ。中ちゃんだって気付いてるさ。ルーシーに焦がれるのは手に入らないからだって。あんたさ、本能に忠実なタイプだろ。中ちゃんだってあんたが好きだよ。本人気付いてなさそうだけど。あたしはあんた達が店に入った瞬間に分ったね。だいたい、男が男に抱きつくかよ。普通の同僚や友達で抱きつくとかキショいだろう。幾ら親しくても子どもじゃあるまいし。ハグの文化圏じゃないんだよ」

ただのオッサン化してきたママの迫力に俺は口を挟めない。

「今日がチャンスだ。酔い潰れてるんだ。既成事実をつくっちまいな。朝目覚めたら、合意だったと言えばいいさ。なかったことにしようと中ちゃんは言い出すだろうけど、確実に意識するね。しばらく尻の穴に違和感残るだろうから、その間は嫌でも意識する。ルーシーどころじゃないさ。そのうち、自分の気持ちに気付くだろうよ」
「尻の穴って、もう少し言い方があるだろ」
「尻は尻だ。アナルだ。肛門だ。そこに男ならこの棒をぶっさしな。子作りするだけの棒じゃないだろ」

ママの大きな手が俺の股間を掴んだ。

「!」
「立派なモノ持ってるじゃないか。こりゃ、罪作りな一物だ。大丈夫、この中にクリームも入ってるし、軟膏も入ってるから。クリームは特別仕様だ。楽しんで」
「…この店は、いつもこんな風に客をけしかけるのか?」
「バカね~。そんなわけないじゃない。お気に入りの子に幸せになって欲しいだけよ」
咽(む)せるぐらい強く背中を叩かれた。

☆★☆★

『もしもし、ママか』
「あら、何事?」
『例の件は片付いたか?』
「ええ。もうご心配には及びません」
『心配はしてないが、物騒なことになっても困るからな』
「これで6人目ですよ。ルーシーは本当に罪作りさんですね」
『仕方ない。女装したあいつは女以上に女だ』
「一途な子は一歩間違えるとストーカーになってしまうから。そうなると命が危ないでしょ」
『ルーシーなら対処できる』
「違うでしょ。危ないのはルーシーを追いかける側でしょ。下手すると私の命だって」
『俺は世話になってるママの命(タマ)とるほど鬼畜じゃないぞ』
「弟さんは違うでしょ。面倒ごとを避けるためにうちに預けたんでしょうから」
『あ、まあ…アイツなら可能性は否定できないな』
「どちらにしても、預かった以上は、責任をもって対処させていただきます」
『面倒掛けるな。あとで寄ってもいいか?』
「もう営業は終わりましたよ」
『だからだよ』
「分りました。鍵は掛けておきますよ」
『よろしく』

プリペイド式携帯を切った桐生組組長桐生勇一の尻に衝撃が走る。

ダイダイです。次は月曜日に更新するらしいです。クソ組長、声だけの登場とかウける~~~。 ランクに参加中です。下のランクバナー(1)(2)で応援〔ポチ〕頂ければ幸いです。

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