その男、激震!(162)

「だけど…俺、酷い話を聞かせてる…」
「いいから。頭を上げて。勇一が知らないというのは、子どもの存在をということですか? それともその母親との関係を身に覚えがないと無責任なことを言っているということですか?」

あくまでも時枝は冷静だ。

「母親との関係は…まだ本人に確認していない…。でも、これ…子どもの父親だという男の写真です」

興信所の所長から借りた写真をハンドバッグから取りだし、時枝の前に置く。

「…なるほど。写真を見る限りでは勇一です」
「…橋爪のときというか、いつから橋爪を名乗っているのか分かんないけど、桐生勇一であることを忘れていた時期の話だから…可能性は高いと思うし、そうだとしたら、その母親の世話になっていたことは覚えていると思う…ただ、その妊娠したとか出産したとか…その母親が今病気とか…知らないし、日本にいることすら知らない」

「外国の方なんですね」
「韓国の方です。俺が知っている範囲で、経緯をお話します」

そこから大喜は、母親と写真の男の出会いから今に至るまでを知っている範囲で時枝に説明した。

「分かりました。勇一に、鑑定を受けさせましょう。結果がどうであれ、桐生でその子の面倒をみるようにしましょう。鑑定も大事ですが、急ぎ、母親の命があるうちに、勇一を会いに行かせましょう。会いたいはずです。仮に写真の男が勇一でないとしても、勇一を『その彼』として会わせてあげたい。安心して旅立たせてあげたい」

「…時枝さんっ…」

「ダイダイ、どうして、あなたが泣くんですか?」
「だってッ! 時枝さんの気持ちになったら…!」

「これが、勇一の浮気の結果だったら、私はどん底に落ちていたと思います。でも違う。自分が誰だかわからない異邦人の勇一を愛してくれた女性がいた。しかも一人で勇一の子どもまで産んで、育ててくれた。女性が一人で子どもを産み育てる。どんなに大変だったでしょう。病気が発覚してから、どんなに心細かったでしょう。今も子どもの今後が心配で不安で堪らないはずです。早急に彼女の不安を取り除いてあげたい。愛した男に逢わせてあげたい…」

「っく、うっ、時枝さん!」

大喜は感極まって、時枝に駆け寄り抱きついた。

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