その男、激震!(6)

「朝飯は一人でいい。変な気遣いは無用だ。下がれ」

勇一が朝食の用意された部屋に入ると、佐々木と大喜が待ち受けていた。
どうしてだか、二人の膳も用意されている。
まさか、一緒に食う気ではなかろうと、尋ねたら、そのまさかだった。
佐々木がお一人では寂しいでしょうから、とほざいた。
寂しいも何も、今までだって一人で食っている。
そりゃ、時々、身内を呼び出すことはあるが…

「気遣い? 誰がするかよ」

頂きます、と大喜が箸をとる。

「こらっ! 組長に失礼だろ」

佐々木が大喜の右手の甲をはたく。
大喜の手から箸が落ちた。

「失礼なのは、このバカ組長とオッサンだろ」

大喜が転げた箸を拾いながら、反抗的に言った。

「バカ組長!? ダイダイなんてことをっ! 組長、申し訳ございませんっ!」

佐々木が、慌てて頭を下げる。
自分だけではなく、大喜の頭も手で押さえ付け強引に下げさせた。

「何すんだよっ!」
「構わん」

大喜と勇一の声が重なった。

「――組長、ちゃんと言い聞かせますので」
「俺は、構わんと言ったんだ。手を離してやれ」

佐々木が手を大喜の頭から離す前に、大喜が佐々木の手を自分の頭から払った。

「聞かせてもらおうか。俺が失礼とはどういう意味だ?」
「言葉通りだろ。あんたの態度が失礼だっていう意味」
「だから、どう失礼だって聞いてるんだ」
「さすが、バカ組長。いいか、良く聞け!」

大喜が持っていた箸で勇一を指した。

「あんた、この部屋に入ってから、一度もオッサンと目を合わせてない。オッサンもだ。まともな挨拶もできないし、今だってあんた、俺に目を合わせてない。俺は真っ直ぐあんたを見て話してるっていうのにな」

大喜は勇一を指している箸を上下に振って自分を見るようにアピールした。

「――それは、……朝から、むさ苦しい顔と憎たらしい顔を拝みたくないだけだ」
「なんだ、ソレ。ガキみたいな言い訳しやがって、ムカツク」

質問には答えたぞ、と大喜は勇一を指していた箸を降ろし、朝食をかっこみ始めた。