下着での写真撮影を終えた大喜は、ワンピースとストッキングを身に着けてから、メークを始めた。
DVDを観なくても、手順はわかる。
下地にファンデンショーンを塗ってから、パウダーとチークで肌を整え、アイメークに取り掛かった。
アイラインを引く手が震えて三度ほどやり直した。
眉はパウダーをのせ、ナチュラルに仕上げ、生まれて初めてのつけ睫毛で目の縁を飾った。
「…俺、…可愛い…ヤバイ…」
鏡に映った自分の顔があまりにキュートなので、瞼が重くても我慢できた。
口紅は付けず、桜色のグロスで唇を潤す。
「…男が、キスしたくなる唇だ…」
ウィックを着けてから、また写真撮影だ。
デジタルカメラと携帯に収めた画像は、佐々木が戻って来たら一緒に鑑賞するつもりだ。
佐々木はどんな反応を示すのだろう? 想像すると楽しかった。
「本来の目的忘れるところだった」
女装を楽しんでる場合ではなかった。
女の格好をしているのは、あくまでも時枝に会うため。
女子会で人気の小洒落た居酒屋の個室を予約してから、大喜は時枝がルーシーとして働いているバー『リリー』に向かった。
準備中、と書かれた札がリリーのドアに掛かっていた。
「…ごめんください」
鍵が掛かっていなかったので、大喜は中に入った。
「ごめんなさい、まだ準備中なの」
ママの声だ。
声のするカウンターへと大喜は進む。
「あら、可愛い子。お客じゃないようね。面接希望かしら?」
大喜の姿を認識したママが、値踏みするように大喜の顔をジロジロと見る。
「いえ、そうではなくて…」
「声。その姿にその声はいただけないわ。高い声を意識してみて。喉の奥を絞るようにすると出るから」
声を変えるのは恥ずかしかった。
「…あの、ルーシーを」
「違う違う。そのトーンじゃないの。姿に合う声で言ってくれないと、折角の可愛い姿が台無しよ」
このママをクリアしないと、時枝に辿り着きそうもないと、大喜が腹を括った。
「あのう、ルーシーを呼んで頂けますか」
大喜は裏声で頑張ったが…
「ううん、もう少し自然な感じで」
すぐには及第点はもらえず、
「ルーシーをお願いします」
「甘えた感じが欲しいわ」
「あのぅ、ルーシーに会いたいんですぅ~」
「合格かしら。ところであなたお名前は? ルーシーとはどういったご関係?」
声が合格したところで、ママの壁は簡単にはクリアとはならなかった。
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