その男、激震!(155)

所長からの話を簡単にまとめると、母親がその写真の男の素性で知っていたことは、日本人である、という一点だ。
記憶がないと語った男は、名前も覚えておらず、韓国語は日常会話がやっとだったらしい。
ある日、男が突然姿を消した。
母親は男の記憶が戻り、自分の居場所に帰ったのかもしれない、待っている家族がいるのかもしれないと、男を捜さなかった。
それは彼女の愛の形だった。
その数日後、男の子どもを身ごもっていることがわかった。
男への思慕と芽生えた母性本能が彼女に出産を決意させた。
無事に生まれ、母と子どもは父親不在の家庭でもなんとか暮らしていた。
母親が病に冒されるまでは。
体調不良で病院を訪れたとき、彼女の身体には幾つもの悪性腫瘍が巣くっていた。
余命三ヶ月の宣告を受け、彼女は慌てた。
子どもを一人残すわけにはいかないと、家財道具を全て金に替え、日本人という手掛かり一つで、日本にいるかどうかも定かでない男を捜しにきた。

「母の子を想う気持ちは、この写真に似た男がこの東京にいるという事実を引き寄せたのですよ。凄いと思いません?」
「…どうやって?」
「こういう仕事をしているので、怖いお仕事の方々の顔は把握しています。桐生の組長さんのお顔も存じ上げていたわけでして。この人を探して欲しいと写真を見せられたとき、真っ先に組長さんのお顔が浮かびました」

「…なるほど。それで組長を付け回し、立ち寄りそうなところを調べて、髪の毛の一本でも採取したかったと?」
「私としては、組長さん自ら親子鑑定を受ける気になって欲しいというのが本音です。実子ならこの子を引き取ることを前提で」
「…桐生に、組に、この話を持ち帰ると、組長の実子でなかたっとしても引き取ると言いだしかねない人が……」

この話を耳にして、放っておける人間が桐生にいるだろうか?
組で引き取るのは無理だとしても、無関心ではいられないはずだ。
佐々木も…時枝も、そして当の勇一も。
下手すると黒瀬や潤まで出てきそうだ。

「ご協力願えますか?」
「…今日のところは一旦、俺に預からせて下さい」
「よろしくお願いします」

事務所に入るときは、まさかこんな話になるとは思ってもいなかった。
大喜は自分の肩に男の子の今後が掛かっている気がした。
いつになく真剣な面持ちで大喜は東亜探偵事務所を出た。

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