「それと俺が追けられたのと、どんな関係が?」
ここでトドメが来るのか?
どうしよう、身に覚えがないが、泥酔したときに記憶がないまま父親になっていたら…
「こちらをご覧下さい」
取り出されたもう一枚の写真。
「…これって…」
大喜がよく知っている男に酷似していた。
だが、髪型や印象がまるで違う。
日焼けした顔と身体に薄汚れた白のタンクトップ。
手に持っているのは魚を捕る槍だ。
「この子の父親です」
「…マジ?」
セーフ! 自分ではなかったことに、取り敢えずの安堵を大喜は覚えた。
取り敢えず、なのは、その父親だという写真が…
「赤の他人にしては、似すぎだと思いませんか?」
「…はい…、ソックリだと思います」
「そうでしょ! 身近にいるあなたが思うなら、可能性が高くなってきました」
所長のテンションが高くなる。
「いや、でも、ちょっと待って下さい!」
一方、大喜は平静ではいられなくなっていた。
「どうぞ、お茶のおかわりを」
大喜の湯飲みに所長がお茶を注ぎ足す。
グイッと熱いお茶を大喜が一気に飲み干した。
「桐生組の組長、桐生勇一とこの写真の男が同一人物で、この男の子の父親、とそちらはおっしゃりたいんですね。つまり、俺を追(つ)けていたのではなく、桐生勇一を追(お)っていたと」
「はい」
あのアホなのか?
この写真は本当にそうなのか?
「まだこの写真に写っている人物と桐生勇一さんが同一人物だという確固たる証拠はありません。是非、この男の子ために、ご協力いただけないでしょうか?」
「俺は桐生の敷地内で生活しています。桐生勇一のことは知ってます。もし、本当にあいつの子なら、あいつが今まで放っておくとは思えないのですが」
「知らないと思います。本当に桐生の組長さんが父親だったとしても、本人はご存じないはずです。別れたあとに身ごもったことを知ったと母親は言ってます」
「なるほど。それなら可能性は否定できません。一つお聞かせ願いたいのですが、今、父親を探す理由はなんでしょうか? 養育費、金ですか?」
普通ならそれでも可能性はない。
だが男の子の年齢からして、その母親と付き合っていたときは「桐生勇一」ではなかったはずだ。
空白の三年間。
その間なら可能性はある。
「…養育費、ではなく、養育そのものです。育ててくれる大人がもうすぐ必要になるのです。母親の余命が…時間が残されたないのです」
大喜には重い話だった。
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(1)& (2)
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