その男、激震!(153)

「保育園はこの建物内にあるんですか?」
「はい。この上の階です」
「…あの、もしかして、外国人のお子さんを多く預かっています?」
「うちは多いですね。――では、本題に入りましょうか? 今日はどういったご相談で」
「相談って、無料ですか?」

さすが大喜だ。
無駄な金を払う気はないらしい。

「無料です。調査が必要になれば、その時点で見積もりを出させていただきます」
「なるほど。助かります。相談というか、お訊ねしたいことがありまして」
「はい、何でも訊いてください」

やっと本題だ。
大喜が出されたお茶で喉を潤してから、続けた。

「昨夜、不審な自動車に追(つ)けられたんです」
「それは気になりますね」
「ずっと追けてくるので、振り切って逃げました」
「心当たりは?」
「ないので、直接本人に訊いた方が早いかなと思い、ここを訪ねた訳です」
「…うちで、その不審な車を探して欲しいという依頼でしょうか?」
「いえ、違います。その車、お宅の車です。だから、俺を追け回したその理由を伺いに来ました。このナンバー、こちらの車ですよね?」

大喜が、車のナンバーが二つ書かれたメモをテーブルに置いた。

「こっちは俺の車です」

所長の顔に焦りはなかった。

「失礼」

所長はメモを手に取り、ナンバーを確認した。
「確かに、これはうちの社用車のナンバーだ」

少しお待ちを、と所長が席を立つ。
奥に一旦引っ込んだ所長が、ファイルを持って戻ってきた。

「本来、調査対象にお話はできないのですが…あなたは対象外ですし、こちらの調査にあなたの協力をお願いしたいので……」

所長がファイルから一枚の写真を取りだした。

「…男の子?」

二歳ぐらいの男児が砂場で遊んでいる姿が写っている。

「この子の父親を探しています。母親は韓国人で、現在、この子はうちの園児でもあります」

父親探し。それが尾行の理由?
ちょ、ちょっと待て!
俺、いつ、浮気した???
女とどうこうって、オッサンと付き合うようになってから一度もないぞ!
俺じゃない。俺じゃないぞ…だとすると…
いや、それは…幾ら何でも…

大喜は平静を装いながらも、内心ではかなり動揺していた。

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