その男、激震!(151)

『はい、株式会社クロセ、代表取締役社長の携帯です』

黒瀬の携帯に出たのは潤だった。

「ゴホン。小言は言いたく有りませんが、あなたが出るということは、今、不埒な行為の最中ですか?」
『違います! 社長が…気を利かせて私に出させたんです。…その、声が訊きたいだろ、と。昨日、ちゃんとお話できなかったので』
「そうでした。昨日は本当に最中でしたね。仕事は順調ですか?」
『はい。前任者にはまだまだ追いつけませんが、そのうち追い越したいと思ってます。正直な気持ちを言えば、一緒に仕事をしたいと思っています。その日が来ると信じています』
「そうですね、あの新人がどう成長したのか、仕事面で確認したいと前任者もきっと思っているはずですよ」
『ありがとうございます』

受話器の向こうで潤が頭を下げているのが時枝にもわかる。
職場の先輩として接する機会は、時枝がクロセを退職してから数えるほどしかなかった。
それ以外の顔で接することは多かったが。
職場で電話を受けたので、潤も秘書として時枝と話をしたかったのだろう。

『社長と替わります』

桐生違い、クロセは時枝がいなくても上手くまわっている。
新入社員の頃は駄目な社会人だった潤も、一人前に社長秘書の業務をこなしているようだ。
嬉しい反面、少し寂しい気がする。

『ときどき本当に前任者を抹殺したくなるのはこういう時かも。潤は本当にどこかの女装男が好きみたい』
「社長、用件はなんでしょうか?」
『ルーシーは冷たいね。どこかの組長さんにはサービスしたんじゃないの? 身体を使った濃厚なサービスだったって、もっぱらの評判だけど』
「してほしいんですか?」
『吐きそうなこと言わないでくれる?』
「用件をさっさとおっしゃって下さい」
『ゴリラと蚤は香港にやったから。男相手に盛るのはいいと思うけど、それ以外は二人が戻ってくるまでルーシーはステイね』
「…目眩が。確認ですが、蚤って木村ですよね…。勝手に二人を動かして…早急すぎませんか?」
『失踪してから日数経つよ。死体で出てきたらそれこそ兄さんが困ると思うけど』
「あの二人であの方に対応できると思いますか?」
『蚤は知らないけど、ゴリラはできるんじゃない? 普通の人間には無理かもしれないけど、ゴリラだから』
「…そうですね、佐々木さんなら何かしでかしてくれそうな…気がします。やはり偏頭痛が…。ダイダイが心配してましたけど、連絡は?」
『直接本人に。兄さんより頭の回転が速そうだから、問題ない。問題児の兄さんにも連絡済』
「そうですか…さすが社長。根回しも完璧です」
『ルーシーの女装が完璧だって噂だけど。兄さん、気付かずに手を出したそうじゃない。ふふ、今度リリィに寄らせてもらうから』
「結構です」

強制終了。
時枝は受話器を本体に戻し、部屋に戻った。

*前任者:時枝のことです。

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