その男、激震!(150)

「…あっさりしてなくて、すみませんでしたね……こってりですよ…こってり女らしい性格ですよ…いいですよ、女々しくて…どうせ、俺はこのままこの虎に喰われて…短い人生を終えるんだ…この虎に性別は関係ないんだどうせ、餌だし。俺だって焼き肉喰うとき、この牛は雌かなとか雄かなとか気にしね~し。美味いか不味いかだけだ……きっと、俺は美味そうなんだ…だから、あの虎はさっきから俺ばかり見てるんだ……」
「木村、うるさい。しばらく寝てろ」

虎もゴリラも檻の中だ。
ナーバスになっている木村には悪いが、そこまで大騒ぎするようなことじゃないと、佐々木は達観していた。
過去にゴリラの檻で一晩過ごした経験を持つ佐々木には、檻の中の獣より横で泣き喚く木村の方が疲れる存在だった。

「…眠れるわけないでしょ。寝たら、最後です」
「わかった、じゃ、最後にしろ」

佐々木が木村の溝うちに拳を沈めた。

「わ、かっ、…―――」

木村が汚い横に転がり、動かなくなった。

「エレベーターで縛られ転がされたときよりも快適じゃね~か。服も来てるし、着替えも用意してもらったし、なにより、身体が自由に動かせる。気掛かりなのはダイダイだ…心配してるだろうな…すまね~、土産はパンダの縫いぐるみにしよう…」

大学生にパンダの縫いぐるみはどうかと思うが、佐々木は真剣に考えていた。

「ルーシー、起きてる?」

間借りしている部屋の大家、リリィのママが時枝の部屋のドアをノックする。

「…は~い、…おはようございます」

時枝が寝惚け眼を手の甲で擦りながら、ドアを開けた。

「あら、イイ男が出てきた」

ルーシーに化ける前の時枝は、リリィのママの好みの顔だった。

「…ありがとう、ございます…」
「クロセの社長さんから朝、電話があったわよ。昼にまた掛けると仰有っていたからそろそろ掛かってくるかも」
「…もう、昼ですか…?」
「一時前よ。私、買い物に出るから呼び出し音が聞こえる場所にいたほうがいいと思う」
「…はい、そうします」

朝から何の用事だったのだろう? 白崎の件とは予想がつくが。
顔を洗い、服を着替え、メークをし、ウィッグを被る。
慣れた手つきであっという間に時枝がルーシーになる。

「よし、完璧」

まだ店の時間じゃないので、服だけは女性もののスウェットの上下とカジュアルだ。
黒瀬からの電話を待っているよりこちらから掛けた方が早い。
時枝は店に降りていき、受話器を取った。

 

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