「それは不可能。香港に着くのに三日は掛かるし、到着日に紅茶を買えたとして帰路に三日、最短で六日は掛かる」
「三日って…それは…もしや…」
その日数に佐々木はピンと来た。
アジアとの取引で使う日数だ。
「船ですか」
「船? 飛行機がいいです!」
木村が主張した。
「無理。飛行機だとパスポートがいるじゃない。船でも普通はいるけど。二人は持ってるの」
「家にあります」
「アッシも何年か前に…取得したので」
「今ないなら諦めて」
「どうしてですか! 飛行機の方が早いです」
木村は黒瀬相手に頑張ってみた。だが、それは無駄だったとこの後思い知る。
「そりゃ、早いけど、空港や機内で『誰かA』に見られて桐生の人間二人が香港に飛んだと『誰かB』に告げ口が入る。おつかいがしにくくなるよ? ふふ、無事におつかい済ませたくない?」
黒瀬が何が言いたいのか、誰かA,Bが誰を指すのか佐々木と木村には全くわからなかったが、とにかく飛行機で行かせたくないことはわかった。
「パスポート持たずに船でって、密航じゃないですか! 嫌です…入国もするから密入国じゃないですか…もし中国当局に見つかったらどうするんですか」
「どうもしないけど? 船の出航時間は決まってる今すぐに出発」
若頭~~~、なんとかして下さい~と、木村が佐々木に頼むが無駄だった。
佐々木はこれが黒瀬によるただの嫌がらせではないことは、空港の話が出た辺りから察していた。
嫌がらせだったとしても、黒瀬は無駄なことはしない男だ。
この「おつかい」には重要な意味が含まれているはずだ。
木村の頼みを無視し、
「わかりました」
と、佐々木は自分が密航に納得したことを黒瀬に伝えた。
「下に迎えが来てるはず」
いつの間に、と思った。
だが黒瀬が尋常じゃない量の裏人脈やルートを持っていることは佐々木も知っている。
電話一本で密航・密入国に関する手配は済むのだろう。
佐々木が納得したことで木村の災難が更に続くはめになったのだ。
「若頭のせいだ。あのとき『わかりました』って言ったから…変なワゴンに乗せられて、こんな船底に押し込まれて…」
木村の泣き言がやむ気配はなかった。
「最近、お前、女々しくなってね~か? 口調もなんか昔と違うぞ。性格も変わったか? 家庭が上手くいってないから自棄になってるのか?」
「…こんなときに、俺の家の話はしたくありませんっ! それに女々しくってどういう意味ですか!?」
「ほら、そうやってムキになって聞きなおすところだよ。もっと前はあっさり男らしい性格だっただろ。それは…俺に…」
惚れたからか? と繋げるのは憚られ、佐々木が口を噤んだ。
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