その男、激震!(146)

「ダメか?」
「脱いで、どうするおつもりですか」
「一日、フルチンで過ごす。洋服じゃね~から問題ないだろ」
「…はい」

問題ないのか?
あるんじゃないのか?
少なくとも組長の股間を視界にいれたいとは思わない。

「俺だけじゃつまんね~から、今日、内勤のやつは全員下を脱げ! ズボンも下着も脱げ。タマがキュッとなって、気合いが入るぞ!」

勇一は良いことを思い付いたと満足げだ。

「裸の付き合いでしたら、サウナでも銭湯でもご一緒しますんで、ご勘弁を~。どうぞ組長だけ、フルチンでお過ごし下さい」
「硬いこというなって」
「形が悪い人間もいるんですよ。包茎だっているかもしれね~。中には若頭みたいに真珠やら何やらでグロテスクな息子のヤツも…そういうのが視界に入ってきたら気になって仕事になりませんから」
「あ~あ、ヤクザが小さくまとまってるんじゃね~ぞ。しょうもないこと、気にするな! 形も個性だろうが。脱げ!」

ダメだ。
このまま行くと、フルチンから免れない。
すまね~、俺のせいだ。俺が組長をお止めしたばかりに…。
とその組員が、他の組員を見渡した。
他の者達は「大丈夫だ、逃げるぞ」と入口のドアの方を見た。
あ、そういうことかと理解した。

「わかりました。内勤のやつってことでしたので…」

この言葉が合図となって、事務所内にいた組員全員が上着を取る。

「白崎の情報を集めに行ってきます!」

一斉に事務所からドドドッと出て行った。

「―――…なんだありゃ? 蜘蛛の子か? 誰もいね~ってことは、俺に一人で電話番をしろってことじゃね~か? ふざけやがってッ」

勇一が脱ぎかけていたパンツを脱ぎ、ドアに向かって投げつけた。

 

 

「ねえ、これ、何? わっ、きったね~」

午前十一時を回った頃、株式会社クロセの仮眠室にいた大喜が、勇一の呼び出しで桐生の第一事務所に顔を出した。
ドアを開けた途端、足元に布切れが落ちていたので拾い上げたら、男物の下着だった。
すぐに手を離す。

「なんつうものが、入口に落ちてるんだ」
「お邪魔します、の挨拶もナシか。来た早々、うるさいガキだ」
「そのうるさいガキに仕事を頼もうとしているのは、ソッチだろ。来てやったんだから、文句言うな」
「金に釣られてきたくせに」
「あたり前だろ。ただ働きはごめんだ。それで何をすればいいんだ? さっさと仕事に掛かりたい…って、さっきの汚物はあんたのか?」
「汚物?」
「きったね~パンツ」
「訂正しろ。勇一様の極上シルクおパンツ様だ」
「あんたが穿いてたのなら、汚物で十分だ。変なモノが、隙間から見えてるんだけど」

相変わらず、勇一は足を机に投げ出していた。
しかも広げて、だ。
足の間から肉塊が見える。

「立派なモノ、だ」
「あんた、事務所で何やってるんだ? ルーシーおかずにオナニーでもしてんの?」
「あほか、するときは妄想が膨らむような場所でする」
「…するんだ…。それってルーシー相手なら浮気じゃね? 墓の下の時枝さんをおかずならわかるけど、ルーシーで抜くってひで~よな。機会があったら、ルーシーにも伝えとくわ」

残念ながら、大喜にその機会はそうそうない。

時枝です。勇一…誰彼構わず、俺の許可なくソコを見せるな…。いつも応援クリックありがとうございます。嬉しいです。きっとフルチン勇一も嬉しいはず…
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