その男、激震!(145)

窓ガラスに大きくペイントされた東亜探偵事務所の文字。
探偵業届出証明番号までご丁寧に表示されている。

「ふん、探偵屋か。コスプレ店も経営してるんだろ。一業種じゃやっていけない世の中だ。うちもコスプレを充実させよう」
「…組長、そういう話では…」
「軽の件は俺が預かる。白崎とは繋がらないだろう。それよりも、皆に伝えておくことがある」

組員が一斉に勇一に注意を向ける。

「佐々木と木村は、しばらく不在だ。いつ戻るか俺にもわからん」
「…それは、一体?」
「武史だ。武史が二人を香港に飛ばした」
「…そんなぁ~…あの、若頭と木村は…何をしでかしたんでしょう…」

組長代理だったときの黒瀬を知っている者達が(新入り以外、ほぼ全員)、顔を青くする。

「俺が知るか。心配するな、二人ともまだ生きてるから」

だよな? と自分の言葉なのに半信半疑の勇一だった。

「…もしものときは…」

と、一人が口にした。

「不吉なこと言うなッ!」
「そうだよ、元組長代理でも、そう簡単に二人をどうこうするはずないっ」
「どうこうしたから、香港なんだろっ!」
「ああみえて、本当は優しい人なんだっ」
「優しいのは有能な人間にのみだ! 仕事のできない人間に容赦ない…」
「若頭が仕事できない人間ってなったら、俺たちどうなるんだよ…」
「全員、飛ばされる……消される……」

飛び交う怒号と落胆の声に、勇一もしばらく傍観していたが、こりゃキリがないと

「いい加減にしろっ!」

と、割って入った。

「武史はもう組の人間じゃね~んだから、お前らをどうこうできね~よ。佐々木と木村は私用だと言っただろ。組の仕事とはかんけ~ね~よ。武史とプライベートで付き合いあるやついるか?」

一斉に首を振る。

「だろ? だったら仕事ができるできないの判断は俺だ。武史じゃね~よ。お前ら、自分が思っているより優秀だ。白崎の件では時間掛かってるが…、ま、それ以外は及第点だから安心しろ。もし、武史がてめ~らにちょっかい出したら、俺が身体を張って守ってやる」

じゃあ、どうして、若頭と木村は守ってやんなかったんですか、と、誰もが一瞬思ったが、それを口にした者はいなかった。

「ん? どうした?」
「…組長、…ありがとうございます。若頭と木村の分も俺たち頑張ります」

結局、そこにいる勇一以外の全員が、佐々木と木村はもう桐生に、いや、日本に生きて戻って来ることはないだろうと思っていた。

――さて、興信所の件はどうするかな~。
勝貴だと思うが…違う場合も考えね~とな~。

机に投げ出した脚の隙間から、外気が勇一の股間に届く。
直ではない。パンツ越しだ。
着流しなので行儀が悪ければ、涼しい風を感じることができる。
以前はふんどしを着用していたこともあり、その時はもっと通気性が良かった。
――あいつにあたらせよう。
こっちは人手がたりね~しな。
う~、タマがしゃんとすれば、頭が冴えるな~。
いっそ、ノーパンがいいかも~。

「組長!」
「なんだ?」
「ここで、脱ぐのは…」

足を机に投げ出したまま腰を椅子から浮かせ、器用に下着を脱ぎだした勇一に、驚いた組員が止めに入る。

時枝です。勇一…下着を脱いでいる場合か!…いつも応援クリックありがとうございます。嬉しいです。きっと放浪中の勇一も嬉しいはず…
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