その男、激震!(144)

「秘密ってほどじゃないけど、ちょっとね。これ以上はまだ学生の身分の小猿には言えない」
「…香港…緑龍…その辺だろ…」

黒瀬が話せないことと言えば、そこしかないだろうと、大喜が探りを入れた。

「危ない子だ。グリーンを軽々しく口にしないようにね。知っていても知らないフリをしている方が、長生きできるよ?」

ドンピシャだったらしい。

「了解。なんとなく全体が見えてきた。一つ確認させてくれ。密入国ってことなら、俺はオッサンと連絡をとろうとすべきじゃないってことだよね? 俺が飛行機で先回りして、オッサンを香港で出迎えるのも邪魔だよね?」
「一つじゃなかったの? 二つ訊いているけど。香港で小猿に何かあれば、ゴリラは身動きが取れなくなるよ。これが答え」

大喜が香港の緑龍について詳しく知らなくても、向こうは大喜を知っている。
大喜に限らず黒瀬周辺の人間は翠によって調査済みだ。
佐々木と木村の香港入りで、間違いなく翠が何らかの動きを見せるだろう。

「わかった…。俺は大人しく日本で待つ。だから、黒瀬さん…」

大喜の声が湿る。

「絶対にオッサンを無事に帰国させてくれっ、頼むっ、香港に勝手にやったんだから…ちゃんと俺の前に戻してくれっ……やっと、オッサンと元に戻れたんだよぉおおっ、やっとっ…俺から取り上げないで……」
「ゴリラの気持ち悪い泣き癖が感染してるらしい…」

黒瀬が内線で潤を呼び出した。

『はい、市ノ瀬です』
「小猿がいろいろ洩らしているから、よろしく頼むね」
『洩らす? はい、かしこまりました』

何故それが会社に常備されているのか、些かどころか、多いに疑問ではあるが……潤はテープ式の紙おむつを手に仮眠室に現れた。

 

 

 

「組長、わかりました!」

桐生組第一事務所。
勇一が黒瀬から佐々木と木村について連絡を受けた直後に、組員が息を切らして戻って来た。
仕事をしたぞ、という満足感が顔に出ている。

「どっちだ。白崎か? 軽か?」

白崎の行方のはずはない、と思いながらも一応その名も勇一は口にした。

「軽自動車です。興信所の所有です」
「興信所?」
「はい。興信所の社用車です」

チッ、と勇一が舌打ちをする。
――勝貴に違いね~。
浮気調査を頼みやがったな…。
そうじゃね~かと思ってたんだ。

「それが、そこの興信所、なんか怪しんです。外国人ばかり出入りしてて」
「行ってみたのか?」
「はい!」
「外国人が出入りしてるイコール怪しいってことにはならね~だろ?」
「外国人だけじゃなく、出入りしている日本人も怪しいんです。変な格好でした。ミニスカートを穿いた髭面の男とか、オールバッグに黒いサングラスのセーラー服とか…」
「それは、興信所じゃね~よ。きっとコスプレの店だ」
「違います! これ、見て下さい!」

組員が勇一にデジカメを取りだし、画像を見せた。

時枝です。佐々木さんと木村さんが今どうなっているのか心配です…今日も応援ありがとうございますm(__)m
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