その男、激震!(140)

「ダイダイ、もしかしなくても、待ち伏せ?」 

朝、出社しようと自宅マンションから出てきた潤の前に、目の下に隈を作った大喜が現れた。

「…黒瀬さんは?」
「所用で先に」
「秘書の同行なしで?」
「そういうこともあるんだ。それで、ダイダイの用件はなに?」

時間がないとアピールする為に、潤が腕時計を見る。

「引き取りに来た」
「佐々木さんと木村さん?」
「ああ。何かしでかしたんだと思うけど、もういいだろ。一晩経ったんだ。返してくれ。木村さんはともかく、オッサンは俺んだ」
「桐生の組のものでもあるよ」
「でも、俺のだ。オッサンは黒瀬さんや潤さんのオモチャじゃない」
「オモチャって酷いな。俺はダイダイの味方なのに。何かあったら俺に相談して」

潤の言う何かとは、誤解に基づく二人の恋愛についてを指している。
今後三角関係に発展するかもしれないから、そのときは相談に乗るという意味だった。

「何かあったら、って今がその何かじゃん。オッサンを返してくれ。お宅にいるんだろ?」
「それがね…」

潤が口籠もる。

「いないとか、言うなよ!」

大喜が声を荒げた。

「黒瀬がどこかに使いにやった。行き先は俺も知らない。俺が起きたときはいなかったし、黒瀬に訊いたら『はじめてのおつかい』に出したって」
「ええ! なんだよ、それ! 黒瀬さんもいないんだろ? 黒瀬さんに連絡とってくれよ! いや、オッサンに連絡する! 昨日は通じなかったけど、今日は通じるよね」
「…無理だと思う。二人の携帯、俺が預かったままだから」
「はあ?」
「帰宅するときに返却しようと思ってたんだ。だけど、俺が起床する前に出て行ったから、渡せなかった」

大喜が項垂れる。
同時に、アスファルトにポタ、ポタと雨染みができる。

「ダイダイ?」

ちがう、雨じゃない。
涙だ。
大喜の涙だった。

「…ッく、 …ッく、…ひっく…俺、昨日から…車だって……ここだって訊いて…ひっく、…っく オッサンッ」
「大丈夫? …じゃなさそうだ。ここじゃ、目立つから」

潤は大喜をクロセの社長室連れていくことにした。
社長室の奥には人目に触れずに出入りできる仮眠室がある。
そこなら自分の仕事をしつつ大喜の世話も焼けそうだと潤は判断した。

時枝です。「はじめてのおつかい」って…? 今日も応援ありがとうございますm(__)m
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