「さ~ね。組には二人揃って行ってるし、必要な会話はしてるようだけど」
「必要な会話しかしてないんだ。ふふ、いいこと思い付いた」
黒瀬の口角が上がるのを見て、大喜はかなり嫌な予感がした。
「…悪いことの間違いじゃないのか?」
言われる前に牽制した。
「ダイダイ、黒瀬は『いいこと』って言ったんだよ。内定企業の社長の言うことが信用出来ないなら、内定取り消しだから」
「いやだな、潤さん。信用しているに決っているじゃん。あ~、知りたい。黒瀬さん、いいことって何?」
脅しのような潤の黒瀬擁護の発言に、大喜は簡単に屈服した。
「明日からゴリラと小猿は本宅で朝食を食べる。兄さんと一緒に三人で。ふふ、団欒」
「はあ? オッサンと俺とバカ組長で朝飯って、黒瀬さん、あんたね~」
やはり、黒瀬の考える『いいこと』は、ろくなことじゃね~、と大喜は実感した。
「黒瀬、凄いっ! さすがだ。そうだよ、そうすれば一石二丁だ」
潤には、この提案が文字通り『いいこと』に思えるらしい。
「一石二丁ってなんだよ」
「組長さん、一人で食べるのが嫌で俺達を呼び付けるんだから、佐々木さんとダイダイが一緒に食べてやれば、その必要もないってことだろ。それに組長さんと佐々木さんの関係も修復できるかもしれないし」
朝飯一緒に食うだけで、修復できるような溝じゃないだろ。
何が、一石二丁だよ。
――それに…、
「あのさ~、忘れていると思うけど、あのバカ組長、オッサンよりむしろ俺が苦手なんだよ。俺と一緒だと、飯なんか喉に通らないって。だいだい、オッサンが、俺とバカ組長の同席を許すはずないじゃん」