その男、激震!(2)

「また呼び出されたんだ~。今週三回目?」 

離れに向かう途中で、黒瀬と潤は本宅敷地内に建っている桐生組若頭である佐々木の家に寄った。 
二人の顔を見るなり、朝の挨拶より前にダイダイこと大森大喜の口から溢れた第一声がこれだ。

「躾のなってない小猿の出迎え? ゴリラはどこ?」
「ちょっ、黒瀬さん、」 

大喜が案内するまでもなく、勝手に黒瀬は佐々木家の中にずかずかと入って行く。

「ダイダイ、お早う。お邪魔するね」 

とその後を潤がついて行く。

「潤、今日はここで朝食にしようか? 離れもいいけど、折角私達の朝食を用意してくれてるようだし」 

勝手に台所に入ってきて食卓に着く黒瀬。 
台の上に並んでいるのは、大喜が佐々木と自分の為に作った朝食だった。

「嘘だろ…まさか、あんた達、俺とオッサンの」 

朝食を食うつもりか、と続けた大喜の声は「頂きます」 という潤の声にかき消された。

「ダイダイ、腕あげたね~。凄くいい匂い。これ、鰆?」 

黒瀬と潤の辞書には、遠慮という言葉は載ってないのだろう。

「…オッサンに食べさせようと思って、張り切って作ったのに…」 

折角作った朝食が、黒瀬と潤の腹の中に収まっていくのを見ながら、あ~あと大喜が潤の横に座った。
当然、大喜の前には何も並んでいない。 

「愛情がこもっている分美味しいよ。誰かの顔を思い浮かべて作った料理って、ラブというエッセンスが一滴加わっているからね。佐々木さんは幸せ者だ」
「…オッサンの口に入らないんだから、愛情もラブも関係ない…」
「そのゴリラは?」 

大喜を見もせず、黒瀬が訊いた。

「バカ組長の朝食が終わるまでは戻ってこね~よ」
「バカ組長って…まぁ、その通りだけど。佐々木さんの姿見なかったね。台所にいたのかな?」
「隣の部屋で待機してたんじゃないの。オッサン、時枝さんが組長の頃は朝食の時に打ち合わせもしてたようだけど」
「ふふ、相変わらずギクシャクしてるんだ、あの二人」 

今度は大喜を見て、黒瀬は意地の悪い笑みを浮かべた。