その男、激震!(136)

「くそ、無駄足だったか…」
「電話一本で確認できたんじゃね~の! これでオッサンの居所が掴めなかったら、俺の愛車の犠牲はなんだったんだ!」

ようやく捕まえタクシーで、勇一と大喜は勇一がルーシーを連れ込んだホテルに向かった。
が、既にチェックアウトしていた。
時間帯を考えても当然の結果だ。

「大声出すなボケ。他の客の迷惑だ。ほら、スタッフの可愛いね~ちゃんが、こっち睨んでるぞ」
「…下品な言い方止めろ。綺麗なお姉様、といえ」

大喜がホテルスタッフに「お騒がせしました」と頭を下げる。

「出て行った時間帯が分かっただけでも無駄じゃない。ここにいないなら、あそこだ。問題ない。お前の車は成仏しているから安心しろ」
「縁起でもね~こと言うな」

ホテルからまたタクシー移動だ。

「リリーっていうバー知ってるか? 近くてわりぃが、そこに行ってくれ」
「呑みに行くなら、一人で行けよ。オッサンはどうなるんだ」

大喜が勇一に食って掛かる。

「…お客さん、出発しても…」

運転手が、発車していいものかと伺いをたてる。

「ああ、行ってくれ。ワルィな、うるさくして」

ボカッと勇一が大喜の頭を殴る。

「静かにしろ。佐々木がいるかもしれねぇ場所だ。黙ってろ。そこの女と今日ヤツはホテルで会ってたんだ」
「ホテルでオッサンが女と会う? ありえね~だろッ! あんた、とき…」

時枝のオヤジが、と言おうとして口を噤んだ。
偶然乗り合わせたタクシーの運転手がどこかに通じているとは思えないが、用心に越したことはない。

「木村も一緒だ」
「3Pやってたとか、言うつもりか!」

大喜の頭の中では4Pだった。
女と時枝と木村と佐々木…有り得ない。

「それがわかん~ね~から、俺も慌てているんだろうが。佐々木一人の為に俺が探しに出ると思ってんのか? あいつら、ルーシーに何かしでかしてたら、ただじゃおかね~」
「…悪い冗談は止めろ。あんた、本宅でもルーシーって言ってたよな。誰だ、それ。あんたの愛人か? だから…」

愛人の存在を知った時枝のオヤジが福岡から乗り込んで…修羅場を止めようとオッサンと木村さんがホテルに出向く。
それならあり得る。うん、そうだ。そうに決まっている。
大喜の中でストーリーが完成した。

「だから、なんだ」

突然口を閉ざした大喜に、勇一が続きを促した。

「何でもない」

タクシーが目的地に到着するまで、その後二人は無言だった。

時枝です。しばらく管理人代行します。黒い糸の応援団長は辞めません!…という私の話はおいておいて…
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勇一へのお仕置き…思案中。

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