その男、激震!(133)

「ゲッ、 ヒッ! 死ぬ~~~~~ッ」
「ガタガタうるせ~よ」

速度オーバーだけでなく、でたらめなドライビングテクニックを披露する大喜に、勇一が悲鳴を上げる。
いつパトカーに追跡されてもおかしくない。

「信号赤―――ッ!!!」

勇一の叫びで、大喜が急ブレーキを踏む。
タイヤから摩擦による煙があがり、車は停止した。

「このくそガキ! 俺を殺す気か!」
「バレた?」
「下手したら、エアバッグが飛び出していたぞ。今の衝撃でむちうち症になったら医療費請求するからな。もちろん、慰謝料もだ!」
「なに細かいこと言ってるの。俺のテクは凄かっただろ? スピンさせずに停まったんだぜ。たいしたものだ」
「気付いてないだろ。途中、オービスが光ったぞ。後日、スピード違犯で出頭だ。間違いなく赤切符だろうな」
「えええ! 罰金はあんた持ちだからな。俺はイイ仕事をしただろ?」
「いい仕事?」
「ちゃんと振り切ったぜ。後ろ確認してみろ」

勇一が、後ろを振り返る。
大喜の車を付けていた軽自動車は消えていた。

「そりゃ、そうだろう。軽相手にここまで無茶な走りする必要はなかっただろ。イイ仕事っていうのは、最低限の動力で結果を出すことだ。お前のは下手な仕事だ」
「はあ?」
「安心しろ。俺は寛大な男だ。罰金は払ってやる」
「あたり前のことを自慢げに言うな。腹立つ!」
「ほら、青だ。行け!」
「言われなくても、分かってるって。あ~~~、一々腹立つ! でも、ま、許してやるわ。桐生のトップが「死ぬ~~~~~ッ」って脅える姿、超笑えたから」

動き出した車の中で、大喜がゲラゲラと思いだし笑いを始めた。

「上から目線なのも、大概にしとけよ。あとで後悔するのは、お前だ」
「……いや、今、後悔した…」

車の速度が急に落ちる。

「どうした?」
「燃費悪いんだ。このタイプって…ま、車も腹が減るってことで、アハハ……」
「―――おい、ガス欠か?」

 

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