その男、激震!(131)

『これって、デジャブ?』

ハンドルを握る大喜の横で着流し姿の勇一がふんぞり返っている。
同じように、勇一を助手席に乗せたことがあった。
最近というには前だが、昔と言うにはまだ時間が経過していない。
失踪した期間の記憶がぶっ飛んでいた勇一を大喜が桐生の墓に連れ出した。
勇一が『橋爪』になり、その橋爪に美人局を強いられ、結果、失敗し、大喜は変態男に犯された。

「口から漏れてるぞ」
「口から漏らしてるんだ」
「てめぇの言葉は小便か。きったね~ガキだ」
「あんた、自分はお綺麗な存在のつもりとか? 図々しいぜ」
「悪かったな。嫌なコト思い出させちまった」

今の勇一は、橋爪だったときの記憶もある。
自分がしでかした過ちの数々を忘れる気も忘れたフリをするつもりも毛頭ない。

「……ごめん、デジャブとか言って。ちょっと思い出しただけだ。つい、漏れた」
「俺とガキが二人きりで同乗していると知ったら、佐々木のヤロウがブチ切れそうだな」
「…心配かけるオッサンが悪い。行き先は、本当にホテルでいいのか? そこにオッサンと木村さんと……時枝のオヤジがいるのか?」
「ガキ、どうして勝貴がこっちにいるって知ってるんだ?」

マジ声で訊いてきた勇一に、ハンドルを握ったままの大喜が横目で睨む。

「あんた、ボケるのはまだ早いぞ。自分で何度も名前を出したんだろうが。勝貴に限って、とか、勝貴に手を出したらぶっ殺すとか言ってたじゃん」
「いいか、勝貴は墓の下だ。それを忘れるな。あいつの安全のためにも」
「よく言うぜ。一番忘れているの、あんただろ。本宅で何度も時枝のオヤジの名前を口にして。襖や障子で仕切られているだけの家で、勝貴、勝貴、って言ってるんじゃね~ぞ。本宅に住んでる奴らも、実際のところは知らされてないんだろ? 盗聴器だってあるかもしんね~だろ。一応俺が、週一でチェックしてるけどよ」
「・・・」

勇一が、何を言い掛けた口をしたまま、大喜を見る。

「なんだよ。気持ち悪いな。言いたいことがあるなら、ハッキリ言えよ。口開いてるぞ」
「……ガキ、お前、  …武史がお前を気に入っている理由がわかった気がする…」
「はあ? なに言ってんの?」
「…案外、利口なんだな」
「はあああああ? 案外だと!?」

 

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私は知ってましたよ。ダイダイが利口だって。だから社長がクロセに採用しようとしてるんです。それに比べ、勇一…お前はもう少し賢くなった方がいい。by時枝