その男、激震!(127)

「なにその話。詳しくきかせて」

ほら、食い付いたじゃないか、と佐々木が木村を睨む。

「大した話じゃありません」

佐々木に勇一を庇うつもりはなかった。
他の人間がわからなくても勇一だけは気付くべきだと佐々木は思っていた。
過去の色々で、佐々木は勇一に対して少し厳しい。少し? いや、かなり厳しいのだ。
だが佐々木は、軽く流そうとした。
早く本題に入りたかったのだ。

「大したかどうかを判断するのは佐々木じゃないと思うけど」
「…はい、仰有るとおりです」
「木村、知っている範囲で話して」

佐々木には訊かないから、邪魔するなという空気が黒瀬から漂ってくる。

「時枝さん『あのアホは女装した俺を俺と気付かずこのホテルに連れ込んでコトに及ぼうとしたんだ。思い出すだけで腸が煮えくり替える。あの浮気者!』ってお怒りでした」

木村が時枝の声色を真似て言った。
それがかなり似ていたので、黒瀬にしては珍しくゲラゲラ笑った。

「ああ、面白い。今の、潤にも訊かせてあげたかった」
「大丈夫、俺にも聞こえたから」

遠くから潤の声がする。
佐々木と木村の為というより黒瀬の為に用意したコーヒーを運んできた。
一応カップは三客。
客の二人より、黒瀬のカップの方が高級だったところに、潤に二人に対する怒りが表れていた。

「トップがそんな風だから、桐生の風紀が乱れているんだ。情けない。組長さん最悪。俺だったら、黒瀬がどんな姿になっても絶対にわかる」

潤の弁に、佐々木が『同感です』と頷いていた。

「ありがとう潤。私もわかるよ。潤が女装したら、きっと綺麗だろうね。今度してみる?」
「…黒瀬が…してほしいなら…」

恥ずかしそうに俯きながら言う潤は、数秒前とはまるで別人だ。

「ふふ、楽しみ。下着も女性用だからね」
「……わかった…」

女性用の下着を身に付けた自分を黒瀬が脱がす。
黒瀬のことだ。きっと卑猥な言葉を沢山並べるだろう。

「…俺、…行くね…」

想像しただけで潤の身体が熱くなる。
気分は既にベッドの中と同じだった。
運んできたコーヒーをトレーからテーブルに置くことも忘れて、潤はUターンした。

「ね、潤は最高だろ? きっと今頃、身体を火照らせてベッドの中に潜り込んでいると思うよ。早く行ってあげないと、一人遊びを始めそう。だから、さっさと帰ってくれる?」

言葉尻が強かった。
つまり、本気で帰れと黒瀬は言っているのだと二人は悟った。

「…あの、まだ本題に入っていませんが…」

佐々木が勇気を振り絞り切り出した。

 

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