その男、激震!(125)

「ひぇッ!」

――――佐々木。

「ゲッ!」
――――木村。

塊となって前から襲ってもの――水の攻撃に、佐々木と木村が反応したときには、既に全身ずぶ濡れだった。

「…あのぅ、……一体、何が…どうなって…いるのでしょうか……」

髪から顔に垂れてくる水を手で払いながら、恐る恐る佐々木が、空のバケツを持って自分達の前方に立つ潤に問いかけた。

「俺にじゃなくて、自分の胸に手を当てて、聞いたらどうです?」

バカ正直に、佐々木が自分の胸に手を当てた。遅れてきたこと以外、佐々木には思い当たる節がなかった。

「若頭、俺達、遅れすぎたのかもしれません」
「…ああ」

木村もそれ以外に思い付かなかったらしい。
自分の行動が、ことの発端とはこれっぽっちも思っていなかった。

「そうですか。お二人は、悪いことをしているつもりがないと。ふ~ん、そうなんだ」

潤が期待していた回答、浮気への反省の弁が一切でない。
それに潤のこめかみがピクッと撓る。
在りし日の時枝のこめかみを彷彿させる撓り具合に、黒瀬が横で苦笑いをしていた。
が、ご承知のように、時枝は今も存在している。
正確には株式会社クロセに在籍していたときの、であるが。
二人はエレベーターの中で濡れた服を脱ぎ素っ裸になるように潤に命じられ、脱ぐとバスタオルを渡された。
身体を拭くと、今度は買い置きの潤の下着を渡された。
それは佐々木が履き慣れないローライズボクサータイプだった。
ピタッと貼り付く布がなんと窮屈で、大事な部分が締めつけられる感じに、二つの珠が縮みあがる気がした。

「…俺達、帰れませんよ……」

下着姿になった二人がようやく黒瀬宅の中へ通される。
歩きながら木村が小声で嘆く。
そう嘆くには理由があった。
二人がエレベーターの中で脱いだ衣類は、ゴミ袋の中だ。
財布や携帯や佐々木が隠し持っていた短刀は、ゴミ袋に入れられなかったものの、潤が全て取り上げた。
下着一枚ではさすがに帰れない。

「…大丈夫だ。なんとかなる…俺に任せとけ」

と木村のつぶやきに答えた佐々木の声に、覇気はなかった。

 

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にほんブログ村ランク登録中…応援は上のバナーを。いい加減、俺を登場させてくれ! 佐々木のヤロウ、俺から主役の座を取り上げるつもりか? ゴリラの浮気など、どうてもいい!by勇一