その男、激震!(124)

「諸々はあと。そのままステイ」
「すてい?」

聞き直した佐々木に木村が横から

「ここにいろ、動くな、という意味だと思います」

と耳打ちした。
その姿も、見方を変えると親密な二人の行動に見える。
黒瀬がエレベーター内のカメラの位置を確認した。
使えるネタが一つ増えた。
これらのネタに大喜をどう巻き込むか、それを黒瀬は考えていた。

「…あの、ボ…、」
「ボ?」

まさかボンと続けないよね、と黒瀬が佐々木に鋭利な視線を向ける。

「ボ、ボ、ボンジュール、武史様」
「誤魔化すなら、Bonsoir(ボンソワール)ぐらい言えないの? 時間帯考えたら? ヤクザでも教養が必要な御時世だよ」
「ボンソワール! これをどうぞ!」

これは、佐々木ではなく木村だ。
手土産のを袋を黒瀬に差し出した。
木村は、佐々木が何故フランス語を持ち出したのか、理解していなかった。
だが黒瀬が佐々木に嫌味を言ったことはわかったので、佐々木を助けるようと前に出た。

「それもじゃないの?」

木村から手土産の袋二つを受取ながら、佐々木の手に握られている袋を黒瀬が見た。

「あ、こちらはユウイチへ」
「呼び捨てってことは、デキの悪い兄さんじゃなくて、イイ仕事をする賢いユウイチへか。ふ~ん、珍しく気が利くね」
「…それで、…あのアッシ等は今日はここで、話をさせてもらうと…いうことでしょうか…?」

動くなということは、エレベーターから出るなということだ。
部屋に上げてはもらえなくても構わないが、今のままだと黒瀬まで立たせたままだ。
黒瀬には椅子か何か腰掛けるものがあった方がと、上下関係の世界で生きる佐々木の気がまわる。

「う~ん、微妙」

と黒瀬が首を傾げた。

「微妙?」

それはどういう意味だと佐々木と木村が顔を見合わせた。

「黒瀬、避けて!」

突然、轟く潤の声。
何事だと佐々木と木村が正面を向いたのと、黒瀬がエレベーター前から横に飛び退いたのが同時だった。

 

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