その男、激震!(123)

エレベーターに乗り込む際、佐々木と腕を組んだままの木村がエレベーター乗降口の溝に躓きよろけた。
手土産を庇ったため、木村の体重が、全て佐々木に掛かった。
咄嗟のことで木村を支えきれない佐々木が、床に尻餅を付く。
当然腕を組んでいる木村も一緒に床に沈んだのだが…エレベーター内に設置されているカメラの角度が悪かった。
カメラ越しの二人は、佐々木の顔の上に木村の後頭部という、佐々木を木村が押し倒してキスをしているように見えた。
結局庇った手土産も床に放り出されていたが、それは見事に水平に着地したので潰れることはなかった。
ペチャンコに潰れたのは潤の中にあった佐々木の恋愛に対する真摯な姿だった。

「…黒瀬、二人が着いたら、エレベーターの中から出さないで。ちょっと考えがある」

潤が足早に奥に駆けていった。

「ふふ、何か楽しいことが怒りそうな予感。怒った潤が素敵なのは経験済みだしね。時枝も楽しい贈り物してくれるじゃない。墓の下に入ると一皮剥けるのかもね。それともルーシーになったからかな?」

別に時枝が木村に吹き込んだわけでもなければ、木村とて、周囲を誤解の渦に巻き込んでいるつもりはなかった。
ただ一生懸命に動いた結果だった。
しかも、まだ本人はその誤解にすら気付いていない。
チンと音がし、エレベーターが止まる。
ドアが開くと既に体勢を整えた佐々木と木村が立っていた。
もう腕は組んでいない。
立ち上がるときに、解いたのだろう。
そして、手土産も床ではなく何事もなかったかのように二人の手に分担してあった。

「大変お待たせして、申し訳ありません」

まさか黒瀬直々の出迎えがあると思っていなかった佐々木と木村。
一瞬ハッとなり、深々と頭を下げた。

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