その男、激震!(117)

「…最初の仕事が…ボンとの顔合わせとは…木村、お前、ヘマするなよ。お前のヘマは俺の失態ってことになるんだ。いいか、俺には可愛い大喜がいるんだ。普通にこの先を生きたって俺の方が先に逝く。だから俺の寿命を縮めるようなことだけは、してくれるなよ」

普通に生きるって…ヤクザがそれをいいますか? と思ったことは別にして、ヘマをするなら俺じゃなくて若頭の方だと木村は反論したかった。
が…

「はい、それは重々承知です! 緊張してヘマしないよう気をつけます」

と、佐々木が欲しいであろう回答をした。

「緊張とか、言うな。緊張してくるだろうが!」

木村は佐々木にバンと背中を叩かれた。

「…すみません! …でも、大丈夫でしょうか…。ヘマはしないようにしますが…場所が場所だけに……どうして、ココなんですか? 若頭、嫌だって言えなかったんですか? 絶対、武史様の機嫌悪いですよ」

佐々木と木村が今立っているのは、黒瀬と潤の住むマンションの一階、二人の部屋に通じる直通エレベーター前だ。
時枝と一緒に打ち合わせがてらルームサービスで食事をとり、時枝がルーシーに再度変身するのを待って、一緒にホテルを出た。
そこから時枝は勤め先lilyの上に借りている部屋に戻り、佐々木と木村は黒瀬と潤の住むマンションへ向かった。

「仕方ないだろ。連絡を時枝さんが入れたとき、お二人とも既に帰りの車の中だったんだ」
「――絶対、俺達邪魔者扱いですよ。潤さまとの大切な時間に割り込みやがってと思っているにちがいありません」
「そうですね、それは間違いないと思いますよ」

突然背後から割り込んできた声に、二人が「え?」と振り返る。