その男、激震!(110)

「―――それで武史が俺を東京に呼び戻したわけか。なるほどな、は~」

勇一から白崎がいなくなった前後の話を聞いた時枝が一人納得している。
その納得に、勇一が吠える。

「なるほど、じゃないだろ。 勝貴、いつこっちに戻ったんだ? リリーでいつから働いていたんだ? いつからルーシーなんだ? お前、女になりたかったのか? 実は気持ちは女なんです、ってことなのか? ずっと俺に隠していたのか? 化粧も上手だし…ずっと隠れて女装していたのか? それとも、俺がいない間にソッチ方面に目覚めたとか…まさか、手術して身体を女に変えたいとか…大丈夫だ勝貴! 女の身体になっても俺はお前を愛する自信がある! そもそも俺は女が大好きだ―――ッ、ぐふっ」

さすがにもうないだろうと思っていた五度目の拳が、勇一の頬に飛ぶ。
顎ではなかっただけマシだが、痛いことには変わりない。

「お前の嫁の座についても、女になりたいわけじゃない! このドアホが! 女装してるのは、死んだことなっている俺が素の姿だと色々とマズイだろうが! そうじゃなくとも、桐生は死んだはずの組長が戻って来たんだ。俺まで『生きてました』じゃ、桐生の信用はガタ落ちだ。整形するよりは女装の方がマシだろ」
「…嫁の座についても…って…う、僕ちゃん、感激。勝貴、さっきは誰が嫁だって怒っていたが、やっぱ、アレは照れ隠しだったんだ。可愛い…」

時枝は振り上げそうになった拳をグッと我慢して、笑顔を作る。
そして、

「勇一、愛してるぞ」

と、口元が引き攣りそうになるのをなんとか耐え、告げた。
このままでは本題が進まない。
進めるには自分が大人になるしかないと十分大人の年齢の時枝は悟った。

「勝貴~~~俺も愛してる」
「白崎の件も俺と力を合わせて対処しよう。二人で協力し合う。それが夫婦ってものだろ。な、勇一」
「勝貴~~~~っ、俺、嬉しくて泣きそう…」
「泣く前に俺の上半身を起こしてくれ。横になったままじゃ話しづらい」

ようやく今後の白崎探しについての話が始まる。

「まず俺達はそれぞれ別方面から動こう。俺はマダム翠側から探る。桐生は立場上、緑龍方面に直接的な探りは難しいだろうから、別の第三者が関わっている場合を想定して動け。首謀者が判明したところで一つになればいい」
「勝貴、一人で動く気か? それは危険だ。あの方が命じたことなら、邪魔者は消されるぞ」
「その点は考えた。武史にも動いてもらう。あと、兵隊を貸してくれ。俺の為に動いてくれる参謀が欲しい。もちろん、俺の生存を知っている者に限られるが…」
「ハッキリ言えよ。佐々木が欲しいんだろ。プラス木村でどうだ?」
「その二人なら武史とも大丈夫か」

この場に佐々木と木村が居合わせていたら、二人揃って「大丈夫ではありません!」と反論していただろう。

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