「いい加減、機嫌なおしてくれよ~~~」
勇一がしかめっ面で横たわる時枝の身体を拭いている。
「・・・」
朝っぱらから勇一に盛られ、二度寝した覚えなどない時枝が目を覚ました時には既に昼近くになっていた。
意識だけじゃなく神経まで目覚めたらしく、どうやって身体を動かせばいいんだと嘆きたくなるほどの痛みがあらぬ場所を中心に広がっていた。
「無視はやめて、か~つきちゃん」
朝は照れ隠しのバッドムードであったが、今の時枝は本当に機嫌が悪かった。
「ふん」
「鼻息だけっていうのもやめて~~~。はい、中もキレイキレイにしないとね~」
時枝の股を広げようとした勇一を
「触るなッ!」
蹴飛ばそうとした時枝から
「うっ、ギャーァッ」
悲鳴があがる。
「やっと声が聞けた。よかった、よかった」
「――よくないっ! 誰のせいでこんなっ、――くそ、イテェッ…目が覚めたのが不思議なぐらいだっ! お前は俺を殺す気だったのか!」
と叫ぶだけ叫んだ時枝が、
「…言い過ぎた」
今度はシュンとなる。
『俺を殺す気』は言うべきではなかった。
勇一に嫌なことを思い出させる発言だったと時枝が沈む。
「なんで勝貴が反省してるんだ? バカだな」
勇一が横たわる時枝の横に座り、頭をヨシヨシと撫でた。
「…勇一のくせに、ガキ扱いするな」
ボソッと時枝が言う。
「オイオイ、俺はガキとは寝ないぞ。勝貴は大人だろ? ここ、東京だし。条例あるし、ガキだったら寝ないって」
「条例がなかったらガキと寝るのか、このドアホ! だいたいお前は、女でもオネエでも男でもっていう性癖だろ! それに加えロリもか? ショタもか? ドアホのド変態ッ」
「…ちょ、ちょっと…そういうことじゃなくて…ただ俺は勝貴をガキ扱いしてないって言いたかっただけで…ま、いっか。勝貴に元気が戻ったし」
「誰が元気だって? 人を動けなくなるまで掘りやがって! どうするんだ! 白崎の件で急を要するってときに、お前も俺も動けないって有り得ないだろうが!」
そう、時枝は忘れてなかった。
自分がルーシーになってまで勇一とこの東京で会おうとした目的を。
一方の勇一は、
「白崎?」
その単語を聞いても直ぐにピンとこないぐらい脳の隅っこに白崎探しのことを追いやっていた。