その男、激震!(103)

「勝貴、落ち着け! 大丈夫だ。二度と勝貴の前から消えない。身体の検査もした。異常はない……全部記憶もある…全部ある」

消えてしまった方が楽な殺し屋時代の記憶もある。

「ごめん…そんなつもりじゃなかった。ごめん」

嫌な思いをさせたと、時枝が項垂れた。

「いいさ。それより、顔を拭いた方がいいんじゃね?」

あ、そうだったと勇一の上の時枝が手をベッドサイドに伸ばす。
時枝の上半身が不安定になったところで、体位が逆転する。
勇一が時枝の腰を掴み、自分の横に転がすとその上に乗った。
時枝の両手をねじり上げ、

「今度こそ、俺の番だ。一体誰と浮気してたんだ? 一人か? 複数か? 答えろや、勝貴」

鼻にティッシュを詰めた間抜け面の勇一が、これぞ極道というど迫力で時枝を問い詰める。

「…手を離せッ、…な、勇一、一旦、深呼吸…興奮すると、鼻血が酷くなるぞ」

白なら時枝のことだ。
バカなこと言うなッ、と逆にどつき返されそうなものだが、どうも様子がおかしい。
黒だ、と勇一は判断した。

「正直に言え。風俗ってわけじゃね~よな」
「お前とは違う」
「ほう、プロ相手じゃなかったってわけか。そりゃそうだわ。風俗嬢は前だもんな。どこのどいつがお前のケツん中、鍛えたんだ?」
「…ルーシーのことは棚にあげて…適当なこと言うなっ」
「適当? さっき俺、言ったよな。全部記憶があるって。それこそ、お前のケツの中がどう動いていたかも、全部、覚えているんだよ。はけ、勝貴」

自分がいない間に、時枝が誰とも寝てないとは勇一だって思っていない。
だが、それを体感させられると面白くない。

「……何もない…大人のオモチャで遊んでいただけだ……」

時枝が勇一から視線を外して答えた。

「ふ~ん、勝貴がオモチャね~。そんな話を俺が信じると思っているのか。ま、俺が悪いんだろうよ。お前の前から勝手に消えた。お前にもお前の身体にも寂しい想いをさせた俺の責任だ」
「そんな風に言うのは狡い…お前は何一つ悪くない…そんな風に言うなっ」
「一々、泣くな」
「泣いてない!」
「じゃあ、泣けよ。もっとイイ声で啼かしてやる。お仕置きタイムといこうじゃないか。な、勝貴」

自分のいない間に時枝の身体を通り過ぎた男達への嫉妬で、勇一の中の獣が再び行動に出た。

「…勇一ッ、やめろ、…お前、まだ鼻血がっ、…やっ、うわっ、バカ――ッ」

勇一の容赦ない攻めまくりのセックスに、最後には時枝から「もう、…許して…」という言葉が出た。
勇一は宣言通り、時枝を後悔させることに成功した。