その男、激震!(100)

「はは、ぐちゃぐちゃだ」

涙だけじゃなく鼻水まで垂らしていた。

「うるさい!」

水分をまき散らしながら、時枝がそっぽを向く。

「照れるなって」

勇一が上半身に残っていたシャツを脱ぐ。

「こっちむけよ」

素直に向くような時枝ではないことは、想定内だ。
顔を反らしたままの時枝の頬に、勇一が丸めたシャツを当てる。

「拭いてやるからさ」
「…やるって、なんだ。拭かせて下さい勝貴さま、だ…」

可愛くないことを言いながら、横目でチラッと勇一の反応を見る時枝の可愛い仕草に、勇一の心臓が思春期のガキのようにとび跳ねる。
――――俺の尻を襲おうとしていた男と同一人物か?

「…どうした……?」

反応が遅い勇一に、時枝が不安げに問う。

「拭かせて頂きます、勝貴さま」

コクンと時枝が頷き、背けていた顔を勇一に向けた。

「か、」

可愛い、と口から出そうになった。

「――勝貴…」

慌てて名前に変えた。
言ったら怒るに決まっている。
だが、言いたい!
勝貴、お前、相当、可愛いぞ!
可愛い、可愛いと心の中で連呼しながら時枝の顔から水分を拭き取った。
もちろん、ゴシゴシではなく、幼子の顔を拭くように優しく丁寧に。

「綺麗になった」
「…ああ」

時枝は目を伏せ、勇一を見ようとはしない。

「……しない…のか…」

下を向いたまま、鼻声の時枝が呟く。

「勝貴?」

勇一の胸に視線を反らしたままの時枝が顔を寄せる。

「…続き、…しないのか… あれで終わり……なの…か…」

乙女の恥じらい全開で、勇一に確認を入れる時枝。
激しいキスで勇一を挑発していた時とは別人だ。

「反則だ。狡いぞ、勝貴」

ムスッとした勇一の声。

「……分かった…」

時枝が震えた声で呟くと、勇一の胸から顔を離した。

「分かってね~だろッ!」

乱暴に言うと、勇一が時枝を強く引き寄せた。

「そんな可愛い姿見せて、俺にどうしろって言うんだ? 俺様の百パーセントの恋心が二百に膨張しちまったじゃないか。性欲は千を超えちまったから、俺に人間の理性は期待するなよ」
「……期待なんかするか…どアホ…このバカ勇一……」

俺のために応援ありがとうな↓↓↓ ←勇一の為じゃないと思うぞ?(時枝)
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
ランク参加中なんだ! 上の二つのバナーのクリックしてもらえると嬉しい!by勇一