「はは、ぐちゃぐちゃだ」
涙だけじゃなく鼻水まで垂らしていた。
「うるさい!」
水分をまき散らしながら、時枝がそっぽを向く。
「照れるなって」
勇一が上半身に残っていたシャツを脱ぐ。
「こっちむけよ」
素直に向くような時枝ではないことは、想定内だ。
顔を反らしたままの時枝の頬に、勇一が丸めたシャツを当てる。
「拭いてやるからさ」
「…やるって、なんだ。拭かせて下さい勝貴さま、だ…」
可愛くないことを言いながら、横目でチラッと勇一の反応を見る時枝の可愛い仕草に、勇一の心臓が思春期のガキのようにとび跳ねる。
――――俺の尻を襲おうとしていた男と同一人物か?
「…どうした……?」
反応が遅い勇一に、時枝が不安げに問う。
「拭かせて頂きます、勝貴さま」
コクンと時枝が頷き、背けていた顔を勇一に向けた。
「か、」
可愛い、と口から出そうになった。
「――勝貴…」
慌てて名前に変えた。
言ったら怒るに決まっている。
だが、言いたい!
勝貴、お前、相当、可愛いぞ!
可愛い、可愛いと心の中で連呼しながら時枝の顔から水分を拭き取った。
もちろん、ゴシゴシではなく、幼子の顔を拭くように優しく丁寧に。
「綺麗になった」
「…ああ」
時枝は目を伏せ、勇一を見ようとはしない。
「……しない…のか…」
下を向いたまま、鼻声の時枝が呟く。
「勝貴?」
勇一の胸に視線を反らしたままの時枝が顔を寄せる。
「…続き、…しないのか… あれで終わり……なの…か…」
乙女の恥じらい全開で、勇一に確認を入れる時枝。
激しいキスで勇一を挑発していた時とは別人だ。
「反則だ。狡いぞ、勝貴」
ムスッとした勇一の声。
「……分かった…」
時枝が震えた声で呟くと、勇一の胸から顔を離した。
「分かってね~だろッ!」
乱暴に言うと、勇一が時枝を強く引き寄せた。
「そんな可愛い姿見せて、俺にどうしろって言うんだ? 俺様の百パーセントの恋心が二百に膨張しちまったじゃないか。性欲は千を超えちまったから、俺に人間の理性は期待するなよ」
「……期待なんかするか…どアホ…このバカ勇一……」
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