その男、激震!(99)

「金輪際、浮気心なんて起こしません! ハニートラップにも引っ掛かりません! だから、勝貴、それ以上は止めてくれ!」
「うまそうな身体を前にそれは無理だ。お前も男なら分かるだろ」

指を抜いた時枝が、正常位になろうと体勢を変えた。
マズイ、マズイッ!
先端を押し付けられ、数年前の悪夢が勇一の脳裏に蘇る。
容赦なく時枝に掘られた時の尻の感触を思い出し、

「無理だ!!! 愛があっても無理だぁああっ」

時枝を下から突き飛ばした。

「スマン、許せ!」

腹筋を使って素早く上半身を起こした勇一が、ベッドから落ちそうになっている時枝の身体を引き寄せる。

「コノヤローッ…う」

時枝が振り上げた拳が振り下ろされる前に、勇一が自分の唇を時枝のそれに下ろす。
抵抗する時枝の後頭部を押さえ、強引に時枝の口内に舌を侵入させる。
歯列に勇一の舌を感じた時枝からフ~と力が抜ける。
僅かに開いた隙間に勇一の舌が突進すると、待っていたんだといわんばかりに時枝の舌が抱きつくように絡む。
グズグズしやがって、と勇一を急かすように動く舌。
本気で俺がお前を襲うと思っていたのか? 
お前がルーシーに気を取られて俺をさっさと押し倒さないからだ、と叱られているようにも感じる。
勇一、お前が欲しいんだ。
分かっているだろ?
もっと、俺を欲しがれ、このドアホ。
時枝の挑発を感じながら、勇一も時枝に挑む。
もう我慢しないぜ。
する必要は無い。
抱く資格が自分にあるのか、など考えない。
考えたら答えはノーだ。
考える必要もない程、出てくる答えは明白だ。
だがその答えは誰も幸せにしない。
そうだよな、勝貴? 
この罪深い俺と一緒に堕ちてくれ。
お互いを貪る。
自分の方がより強く求めているんだと勝負を挑むような激しいキスだ。
興奮で甘く感じる唾液に何かが交じった。

「…!」

――涙? 勝貴が泣いている…?
確認しようと、重なった唇を解いた。