「さあな。大物か小物かは自分では分からんが」
「大物だと推測して、勇一さんぐらいの年齢なら…当ててもいいかしら」
なるほど。
すでに素性はばれているらしい。
「ああ。他に客もいね~し、かまわね~ぞ」
「桐生組、現組長、桐生勇一さん」
「知ってたんだろ? だから客がいね~んだ。俺が電話した時から俺が何者か知っていた」
「ええ。クロセの社長から連絡ありましたし」
「それなら話は早い。俺はココを訪ねるよう言われて来たんだ。何がある?」
「さあ。社長から頼まれたのは桐生の組長が来たら、うちの女の子を一晩貸してやってくれ、ってことだけ」
「はあ? 女の子って、ママみたいな?」
武史は性別男の女を俺に宛がう気か?
白崎の件とは関係ね~のかよ!
「ええそうよ。うちはそういうサービスを提供しているわけじゃないんだけど。今回は特別。クロセの社長の頼みじゃ断れないもの。ルーシー、ちょっと来てちょうだい」
一体どんな『女』が登場するやら。
「は~い」
奥から出てきたのは…
「…美人だ」
思わず口から溢れた。
それ程いい『女』だった。
タッパはあるし性別が男であることは一目でわかるが、スッとした顔の輪郭に鼻筋は通り、そして化粧が上手い。
化粧のテクによる美しさを『美人』と称するのは論外かもしれないが、だが、ママを含め女装する道を選んだ男の化粧は女を強調しすぎてわざとらしいのが多い。
『彼女』は違う。
つけ睫毛の長さといい、チークの色といい、桐生系列のキャバ嬢よりも上品な仕上がりだ。
何よりも勇一の男の部分に訴える官能的な大人の雰囲気がある。
「ありがとうございます」
礼を言う彼女の目は誘うように勇一を見つめた。