その男、激震!(87)

 

残ったのは勇一と木村だけだ。

「…若頭も行ってしまいましたね…」
「我が弟の影響力をこうも見せつけられるとはな」

ガクッと勇一が項垂れる。

「俺は組長が好きですから」

そんな勇一の正面に木村が立つ。

「……木村?」

これって、告白か?

「今、ここに組長が居てくれることが嬉しいです! 惚れています!」

木村の勢いに、勇一が後退りする。
――こいつ、いつからそんな目で俺を?

「お、落ち着け! ……気持ちは嬉しいが、聞かなかったことにしてやる。ここにいなくても俺は勝貴を愛してるんだ。俺への想いは仕事で果たせ」
「…え? どうしてここで時枝組長が…? 俺が組長を好きだということと組長が時枝組長を愛していることは別問題です!」
「…お前、そんなに俺のことが…。いや、待て。勘違いだ。お前は何かとんでもない勘違いをしている。だいたい、木村はそんなキャラじゃないはずだ」
「…もちろん、時枝組長も好きでした…今も尊敬していますっ! でも俺の中の一番は桐生勇一組長ですからっ」

こいつ、どうした?

「わ、分かったからっ! とっとと白崎探しに行きやがれッ」

勇一が木村を突き飛ばした。
後ろに転がった木村は立ち上がると「行って参ります!」と事務所を出た。

「…今のは、なんだったんだ?」

俺のスーツ姿が格好良すぎるのか?
それとも佐々木達の情事を覗いたからか?
それか潤になにか吹き込まれたのか?
なんにせよ、俺も罪な男ってことだ。
最後には自分を持ち上げ、この件はひとまず頭の端に追いやった。