その男、激震!(68)

 

「若頭、本当に申し訳ございません。大森の言ったことは本当です」

白崎のかわりに木村が口を挟む。

「木村、今日二回目の邪魔か?」
「申し訳ございません。組長命令でして…その白崎にお二人の仲の良いところを見学させろと…嫌ですよね…はい、それはもう、」
「いや、構わん。今後、大喜と間違いがあったら困るからな。俺と大喜の関係を、自分に割り込む隙がないことを見せつけてやる」

佐々木の中で、大喜が白崎に出来心というのは消えていたが、その逆の可能性は消滅していなかった。

「――オッサン、もう話はいいだろ。俺を愛してくれよぉ」
「木村、床の上を片付けておけ。それから、食事の用意もしておけ。俺達は今から忙しいんでな。頃合いをみて、白崎のアホも連れて帰れ。二人には後でゆっくり話を聞かせてもらうからそのつもりで」

怒っている。
完全に怒っている。
佐々木の背中から出るヤクザ独特の殺気。
木村は自分と白崎に向けられた佐々木の怒りのオーラを感じていた。
白崎の見学を許しはしたが、佐々木は大喜の裸体を誰にも見せたくないのだ。
公衆浴場だって嫌なのを知っている。
だから、事務所の連中はボコボコに殴られたんだ。
邪魔したからではなく、裸を見たのが一番の理由に違いない。

―――つまりそれは……

ゆっくり話を、というのが『話』ではないってことだ。
ボッコボコにされるに違いない。
『組長、恨みます!』
木村は腹の中で勇一に恨み節を唱えながら、

「はい、承知しました」

と佐々木に返事をした。

「待たせたな」

大喜の誘いが功を奏じ、脱ロマンティックモードを果たした佐々木は、今度は欲望に支配された獣へと変貌を遂げた。