その男、激震!(66)

 

「――何だぁあ?」

白崎の上に馬乗りになった裸の大喜。
その横につっ立っている木村。
それが佐々木の目に飛び込んだ光景だった。
呆然とした佐々木の手からトレーが離れる。
当然、トレーは床に落下し、載っていた握り飯の皿と緑茶の入った湯飲みがひっくり返った。
大喜は白崎を締め上げようとしただけだ。
だが佐々木の脳味噌は違う判断を下したようだ。

「離れろぉおおっ!」

室内に轟く佐々木の声。
その声に驚いた大喜が、慌てて白崎から飛び降りた。

「…オッサン?」

佐々木の怒りの形相を見て、大喜は佐々木が何か大変な誤解をしていると直感した。

「――ナニやってたんだ…ダイダイ…」
「何って、まだ、何も…」
「マッパで白崎に跨がって、ナニをしようとしてたんだっ! …いつからだ」
「はあ? いつって何だよ。さっき来たんだろ、こいつ等」
「――いつから白崎とデキてたんだッ!」
「落ち着けよ、オッサン。誤解だ!」
「誤解もヘッタクレもあるかっ。白崎を押し倒していたじゃね~かっ! 俺と愛し合ったばかりだと言うのに、どういう了見だッ」
「違う、って言ってるだろッ! 俺が信じられないのか、このくそゴリラッ!」

大喜の言葉で佐々木の顔色が変わった。
怒りで真っ赤になっていた顔が一気に青くなった。
マズイ、と大喜は思った。

「――俺のせいなのか? …正直に言ってくれ。俺が放って置いたから…その間に…出来心か?」

泣いている。
佐々木の思考がロマンティックモードに突入したらしい。
このままいくと悲劇のヒロインのようなことを口走りかねない。
それはマズイ。
なぜならここには桐生の構成員がいるのだ。
木村はいいとしても、白崎にそんな佐々木の姿は見せられない。