その男、激震!(65)

 

「突然スマン。…その、組長命令で…」

闖入者その一が、大喜を見ずに頭を下げた。

それから床にあった薄掛けを拾い、裸の大喜に渡した。

「木村さん、どういうことだよっ、……組で何かあったのか? ……そういえば、午前中にも集団が来てたよな…いや、あれは夢か?」

木村が本日二回目の出現であることを大喜は知らなかった。
最初の木村の出現時、大喜はちょうど昇天していた。

「夢じゃない。組で何かあったのかと問われれば…あったというか、なかったというか…」
「ハッキリしろよ」
「あのう、大喜さん、…裸での昼寝が趣味なんですか?」

木村を睨み付ける大喜に、的外れなことを闖入者のもう片方、――白崎が言った。

「…えっと、白崎さん? 俺とタメだよね、あんた。この寝室の有様みて、俺がマッパで昼寝してたとマジ思ってるの?」
「違うんですか?」
「匂うだろ、この部屋。床にもベッドの上にも汚れたティッシュが散らかっていて、この俺の肌には点々とした鬱血痕が散っている」

佐々木に付けられた痣を大喜は愛おしそうに一つ一つ指で追う。

「…あのう、ダニなら駆除した方がいいですよ。ココ、ダニいるんですね…本宅にはダニがいるのか。木村さん、早く戻りましょう。ダニに喰われる前に、帰りましょう!」

白崎が木村の腕を掴み、早く此処を出ようとせがむ。

「白崎、いい加減にしろ! 本宅を掃除してくれている本宅付の衆や家政婦のおばちゃん達に対して失礼だろ!」

木村が切れ気味に言った。
そして、大喜は完全に切れていた。

「白崎! てめぇ、オッサンの愛情たっぷりキスマークをダニだとぉおおおおっ!」

大喜がベッドから白崎に向かって飛び掛かる。
腰に掛けていた薄掛けがフワッと宙を舞い、それを木村がキャッチした。
そしてタイミングよくと言うか、悪くと言うか…場面を更にややこしくさせる人物が現れた。

「ダイダイ、お待たせ」

トレーを持って戻って来た佐々木だった。