その男、激震!(48)

「・・・」

このアホ、肯定しやがったぞ。
勇一は呆れかえって直ぐに言葉が出なかった。
それからガックリと肩を落とし、「白崎~~~」と脱力した声で、新入りの名を呼んだ。

「はい!」

白崎は、自分の過ちに気付いてなかった。

「よ~く、分かった。お前が組長の俺をどう思っているのか、心に留めておく」
「ありがとうございます!」

白崎が深々と頭を下げて礼を述べた。
どこのどいつが、このアホを組に入れたんだ? 
こいつより、入れたアホを絞めてやる。 
勇一は、これ以上、白崎と無駄話するつもりはなかった。

「とにかく、鍵だ」

白崎が鍵を取りだした。その鍵を勇一が取り上げた。

「この鍵は、俺が預かっておく」

ドアの鍵を解錠した勇一は、鍵を白崎に返さなかった。
何か言いたそうにしていた白崎の言葉を勇一が眼光で封じ込めた。

「白崎、入口にゴミがあったぞ…、え? 組長! お早うございます」

勇一、白崎に続き、事務所に現れたのはM字にはげ上がった渡部だった。
彼の頭部を見る度に、勇一は自分が不在だった期間の長さを思い知らされる。
気苦労で時枝が渡部のように禿げなくて良かったとしみじみ思う。

「…いや、姿形に関係なく、俺は勝貴を愛してる」
「組長?」

今日は思うだけで留まらなかったようだ。一部が口から漏れていた。
渡部が勇一を見て首を傾げている。
まさか、前半は声に出してないよな? 
ハゲにハゲって、白崎より俺の方が最悪じゃね~かよ…
勇一は慌てて「なんでもない」と誤魔化した。

「そうだ、コレ」

勇一が渡部に事務所の鍵を投げた。
放物線を描いて飛んだ鍵を渡部が見事にキャッチした。

「白崎に持たせるのは止めておけ」
「鍵を白崎に預けたのは、若頭ですが…私が預かってもいいんでしょうか?」
「ああ。白崎にはまだ早い。こんなオモチャを持ち歩くようなガキだぞ」

今度は白崎から取り上げた水鉄砲を渡部に向かって投げた。