その男、激震!(45)

「やってるって、なんだっ! 誰が心配してくれって頼んだっ!」

立ち上がろうとした大喜の上に佐々木が馬乗りになる。

「お前だ、ダイダイッ! 心配ばかりかけやがってっ!」

そして、大喜の右頬をバシッと平手で叩いた。
――げ、佐々木がガキに手を挙げたぜ…
更に二人の関係が拗れるんじゃないかと、勇一の目が佐々木と大喜に釘付けになる。

「…オッサンが…俺を…」

大喜が叩かれた頬に手を当て呆然としている。

「お前が勝手ばかりして、誰彼構わずホイホイ付いていくからこうなるんだっ! 橋爪なんかに付いて行きやがってっ、このバカたれが! 心配して欲しくて馬鹿ばかりやってるんだろうっ!」

今度は左の頬に佐々木の手が飛んだ。
これには、勇一が慌てた。

「佐々木、てめぇ、素人相手に暴力は止めろ」

勇一が佐々木の腕を捻り上げた。

「違うっ! 暴力じゃない! あんた、引っ込んでろ」

腕をとられ顔を顰めた佐々木ではなく、殴られた大喜が勇一に抗議する。

「組長、申し訳ないですが、邪魔しないで下さい。…組長に、その権利はないんです…あんたが…元凶なんですから…」

ガキはともかく、佐々木から『あんた』呼ばれわれする日が来ようとは…
ふふ、と勇一が自嘲しながら、佐々木の腕から手を離した。
勇一は怒ってなかった。むしろ嬉しかった。
やっと腹の中を見せた佐々木に、安堵を覚えた。まだ、佐々木とやっていけると。

「好きにしろ」

言い捨てると、勇一は二人の元を離れ、中断していた朝食の続きを始めた。

「…心配しちゃ、悪いのか? …だったら、心配するようなこと、するな。ボンのところには行くな。……どれだけ、お前のこと、…惚れているのか…いい加減分かれ…」
「分かってるよ。クソ、分かってる。人殴っておいて、自分が泣くなよ…。オッサンの方が、痛そうじゃないかよ…全く、しまんね~な…」

ガキの野郎、マゾか? 声、嬉しそうじゃねぇかよ…
箸を動かしながら、聞き耳は立てていた。

「…情けないが、お前の言ったことは当たってる…気も遣ってたし、思い出すのも嫌だった…だが、それがなんだ。俺だけがお前を自由に扱っていいんだっ、違うか? 抱きたいときに抱いていいのは俺だけだ。性欲があるのは、俺も同じだっ」
「うわっ、幾らなんでも、オッサン!」

大喜の声に勇一が二人の方に顔を向けると、佐々木が大喜の上着を剥いでいた。

「テメェら、ヤるなら、自宅に戻れっ」
「無理です。そこまで我慢できません」

禁欲が長かったので、トチ狂ったらしい。
野生のゴリラかと思うほど、荒々しく佐々木が大喜を剥きに掛かっている。

「ったくしょうがね~、せめて、俺の寝室に移動しやがれ」
「恩に着ます」

佐々木が丸裸に剥いた大喜を肩に担ぎ、座敷から消えた。