どうして、こういうことになるんだ?
俺が悪いのか?
そりゃ、悪の根源は俺だ。
だが、これじゃあ、二人の仲を拗らせただけじゃね~かよ…
佐々木のヤツ、思考が乙女だからな。乙女ゴリラめ。
くそっ、勝貴に何て言やぁいいんだ。
やっぱ、こういうのは俺じゃなくて武史だろ。ダメだ。
自分の償いを押しつけるなと言われたじゃね~か。全く、武史のくせに正論吐きやがって…
武史か…あいつは俺と違って支離滅裂の行動も、終わってみれば結果を出すよな。
それに比べ、俺は最悪の結果しか生まない。
ダメだ。このままじゃ、ダメだ。
「ちょっと、ブツブツ煩いんだけど! 静かにしてくれる」
勇一の寝室を占領した大喜が、非常用の寝袋に入り、寝室隣の和室で転がっている勇一に文句を言う。
どうして、こうなっているかと言うと、佐々木と別居を宣言した大喜が選んだ別居先が、勇一の寝室だったからだ。
本宅内に部屋は沢山あるのに、畳はイヤだとか、ベッドがないと寝れないとか、羽毛布団がいいとか、シングルじゃシュウちゃんが落ちるから嫌だとか言いだして、「部屋がたくさんあるんだから、他の部屋使えよ」と、勇一の部屋を陣取った。
我が儘言うなと言いたいところだが、機嫌を損ねて本宅からも出て行かれたら、佐々木との距離が物理的にも生じてしまうと、認めてやった。
追いかけて来た佐々木は、もちろん、ダメだ~、と大騒ぎしたが、大喜が寝室のドア越しに「寝室には鍵があるから、他の部屋より安全だ。不審な行動は時枝さんにチクるし」と、佐々木を無理矢理納得させた。
ドア越しで顔を見せなかったことが、佐々木にはショックだった。
閉め出されたのが、勇一だけでなく自分もだということが分かると、渋々自宅に戻っていった。
離れに行けば、旅館並みに寝具等揃っているのに、勇一が隣の部屋で転がっているのは、大喜がどこかに行かないよう監視の為だ。
本宅内での別居なら可愛いものだが、勝手に行方不明になられたら、それこそ佐々木の恨みを買うだろう。
「悪かったな。佐々木のイビキよりは、俺の独り言など可愛いものだろ」
「比べる方が間違い。お・や・す・み」
と、嫌みたらしく言うと、それ以上大喜から何か言ってくることはなかった。
寝たのか、考え事をしているのか、それとも泣いているのか。
このままではダメだ。それは分かっている。
だが、今は下手に動かない方がいいだろうな。
佐々木の考え次第で、決着つくかもしれない。
…なんて、結局、俺は逃げようとしているのか?
はあ…佐々木だからな…乙女ゴリラ…ゴリラの性欲に期待したいが……
ぁあああ、うぜぇっ、考えても仕方ね~、寝る!
勇一の長い一日が終わった。